第74話 俺、天野さんに再チャレンジする
朝になり、俺は朝食を済ませると学校に向かっていた。
今日は決心の日だ。
俺の手には
いや、実際には小さいカバンに入れてるだけだが。
このイベ書を天野さんとトレードして、関係の再構築とイベ書入手の一石二鳥を狙うのだ!我ながら完璧な作戦だ。ちょっと勇気が足りてなくて実行できてなかったが、イベ書の必要性が俺を後押しした。
教室に入るといつも通り増田に声をかける。
「おう国立、俺のあげたユニットは元気でやってるか?」
「ああ、まぁ病気にはならずに生きたぞ。」
「え?もう終わったのか?」
増田が驚くのも無理はない。普通ワールドが安定していると、ワールド内時間をこっちの時間にできるだけ近づけるからだ。
ただ、時間進行を全く同じにしてしまうと世界の事象が理解しにくくなるというか、注目するイベントのつながりが見えにくくなるため一日でワールド時間1週間位進めるのが妥当らしい。
まぁ俺のワールドは何をすればどうなるのか全く解らないのでネットで見ただけの話なのだが。
「そう言えば俺の送ったユニットはどうなんだ?」
「ああ、それはマスターもいる時に話をするわ。」
「おいおい、そりゃちょっと勿体つけ過ぎじゃないか?」
俺が不満を言うと増田が肩をすくめる。
「うん、ちょっとまずはダリーネさんの判断を聞きたいんだ。」
なにやら神妙な増田の顔を見て俺は追求したい気持ちを押さえて放課後を待つことにした。
それから休み時間。
俺は天野さんを探して教室を出た。
いた!俺の予想通り天野さんは別の教室に移動中だった。
隣には渦目さんも一緒だ。
「あ、天野さん!」
俺が震え声で声をかけると天野さんもこちらに気付いた様だ。
なんかアマテラスの名前由来がバレてからかなりぎこちない雰囲気になってしまった。今こそやり直す時だ!
『マスコットとの出会い』のトレードを切っ掛けにまた話のできる関係に戻るんだ!
そのためにはちょっと時間を取ってもらって話をしてもらわないとだ。
移動中だからあまり時間はとれないと思うけど。
「付き合ってください!!」
俺は少し頭を下げた状態で返事を待った。
「え?え?え?えぇ~?」
何やら天野さんの戸惑った声が聞こえる。
これはもう一押し必要だ。
「少し、少しでいいんで!」
俺が時間はとらせませんと伝えると、「ぶは!」という声が聞こえた。
何かと思って俺が顔を上げると見て判る位顔を赤くした天野さんとお腹を抱える渦目さんが目に映った。
「あ、あの~。」
俺が返事はいかにと声をかけると、天野さんは顔を覆って「ごめんなさい!」と言って走り去ってしまった。
「あはははははははははは!!!」
そこにもう我慢できないという風な渦目さんの笑い声が響いた。
「え?なんで?なんで!?」
俺の頭の中は真っ白になっていた。
「場所とセリフは選ぼうな!」
渦目さんは呆然と天野さんを見送っている俺の肩をバンバンと叩いてから天野さんを追いかけて行った。
まさかこんなに嫌われていたとは・・・。
俺はその場に立ち尽くして去っていく二人を見ていた。
この後、俺は歴史を調べてみようと思っていたのだが、全く気力がわかずに適当にいつもの授業を受けるとバイトに行く予定をキャンセルして家に帰った。
自由なバイト参加が許されてるのありがたい。
「あ、国之さま、おかえり~。」
アマテラスがいつも通り出迎えてくれた。
俺は黙って右手を挙げてそれに応えた。
「あれ~?なんか元気ないね?朝はなんか気合入ってたのに。」
っぐ、まさかアマテラスから見ても分かる程だったとは。
俺は再度傷がえぐられた様な気持ちになってより暗い気持ちになった。
「実は今日―」
「あ、それより見てよ!!今大陸の東が凄いんだよ!!」
俺が理由を話そうとするとそれを遮られてアマテラスは今日の報告を始めた。
お、お前、もう少しご主人様に気を使ってもよくないか?
俺がそんな事を考えている中、お構いなしにアマテラスは少し興奮気味に話を進めた。
「これ見て!これ!!」
そこに映し出されたのは一人の男だった。
アマテラスのクリップ動画はその男の戦場での戦いだった。
「おお、おおお!!!」
あまりの奮戦ぶりに俺は自然と声が出てくる。
そこには1万の敵に50騎程で突撃を繰り返す姿や敵に囲まれても物ともせずに大立ち振る舞いで去っていく姿が映っていた。
「一体こいつは?」
「うん、なんかすごく強いユニットが出始めたんだよ!」
つ、遂に俺のワールドでも激強ユニット登場か!
「ス、ステータスを見せてくれ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
名前:呂希
職業:戦士
レベル:83
推定パワー:25,212
生命力:1,200
マナ:0
攻撃力:1,225(万天画戟)
防御力:868(金属帷子)
魔力:8
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
いや、思った程強くなかったわ。
映像だとかなりのもんだったが数字で見ると全くそんな事なかったわ。
でも今のランクならコイツで行けるか?
俺は腕を組んで考える。
「あとね、キャッスル戦はもっと期待できるかもしれないよ!」
アマテラスがそう言うと戦争中の場面が映る。
そこには未だかつてない規模の軍隊を使って戦争している映像が映し出されていた。
どうやら俺は遂に自分の望むワールドに近づいて来た様だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます