第68話 俺、試行錯誤する

それから俺はいくつかのイベ書を使ってみた。


持っていたのはC『欲望への従属』『無謀な挑戦』だ。


先ずは『無謀な挑戦』を使ってみる事にした。

アマテラスが探し出したのは一人の貴族だった。


「この人は結構王様と仲が悪いんだけど大貴族だし結構広い領地を持ってるからどうかな?しかも良く伝説の戦争の話とかしてるし。」

「なるほど、戦争好きか。こいつが欲望に従ったら王に反乱を起こして戦乱の時代到来だな!よし、やるんだアマテラス!」


アマテラスが『欲望への従属』使うと、その大貴族は隠居して吟遊詩人になった。

貴族の義務感で政治に参加していたが欲望に従う事にしたらしい。


彼の作った英雄譚はあまりの出来に大人気となり、それから何千年も残る名作となった。


「夢を諦めない。いつだってそれが成功の秘訣だよね!」

「ああ、そうだな。」

感動しているアマテラスに俺は無感情で返事をした。


「っく!次だ次!!」

「アイサ~!」


次にアマテラスが選んだのは大陸の東の国の王子だった。

彼は世の厳しさに絶望し世の中をどうにかしたいと考えて苦悩していた。


「なるほど、世直し王子の反乱劇って事だな!いけ、アマテラス!」


アマテラスがその王子に『無謀な挑戦』を使うと、その王子は悟りを開いた。

どうやら彼に争いは向かなかった様だ。


彼の開いた宗教は多くの人々に大人気となり、それから何千年も続く宗教となった。


「世界の困難を打ち破る方法は一つじゃないってことだね!」

「ああ、そうだな。」

感動しているアマテラスに俺は無感情で返事をした。


「っく!次だ次!!」

「国之さま、もうリストのイベ書は無いよ?」


そうだった。

俺はガックリとうな垂れてモニターを見た。

世界には結構な数の戦争が起こっていた。だが俺の思った様には戦争は起こせないらしい。いったいこのワールドはどうすれば俺の思い通りになるんだ?


そこにマスターからの連絡が入った。

「常之ちゃん、早速トレードお願いしたいんだけど。」

「あ、マスター。ちょうど煮詰まってたところだったので助かります。」


「あら、なんかあったの?」

そこで俺は今までやっていた事を話した。


「なるほどね、確かに魔物の居ない世界の場合、戦争がレベル上げのポイントの可能性はあるわね。」

「ですよね!?」

「でも完全にユニットの思考が分かるわけじゃないし、やっぱ環境を整えるのが確実な気はするわね~。」

「環境を整える?」


「例えばライバルになる国を育てるとか、弱小国が強国に育ち始めるとか、近い所に国ができるとか、そんなのよ。」

なるほど、脅威になる国が出てきたら戦うだろうと、そういうことか。


「それって結局どうすればいいんですかね?」

「まぁ大きな国を狙うんじゃなくて、小さな国を育てるって事かしらね。」

「うーん、なんか時間かかりそうな気もしますが、急がば回れって事なんですかね?」

「そうそう。私のワールドの国だって脅威が近くに無いと動かないから。魔王が隣国になっただけって考えればそんな感じだと思うのよね。」

「判りました。次はその方針でやってみます。」


一先ず俺が納得した返事をすると、マスターは本題に入った。


「頑張ってね。あとトレードなんだけど何人送れるかしら?」

「アマテラス、何人行けそう?」

「え?言われれば結構いけるよ~。」

「じゃ、3人でお願いしようかしら。」


そうして俺は例によって適当に選ばれた3人の死ぬ寸前だった子供のユニットをマスターに送り、代わりに3人のおっさんユニットが送られて来た。


「ちょっと素行は悪いけどかなり腕のいい剣士だからよろしくね!」

「え?素行が悪いとか迷惑野郎ですか?俺に邪魔者押し付けてます?」

「ほら、そっちって修羅の国じゃない?多少肝っ玉の太い漢の方が生き残りやすいと思って。思いやりよ、お・も・い・や・り♡」


うーむ、なんか丸め込まれた感じするけど、確かに前回は瞬殺だったしな。

それに戦争起こそうってのに争いの一つや二つ大した問題じゃないな。


「じゃ、常之ちゃんありがとね!また結果が出たら報告するわ♡」

「はい、報告楽しみにしてます。」


マスターとの会話を終えるとアマテラスが早速儀式を始めようとしていた。

しかし、俺はそれをちょっと止めた。

「アマテラス、なんか素行悪いらしいし、今回は言葉だけ喋れる様にしてそのまま送っちゃっていいよ。」


「え?それでもいいんですか?」

「あ、うん。なんかマスターも増田も気絶したまま送ってたらしいし。」

アマテラスはちょっと微妙な顔をして頷いた。


「国之さま、技能変更とかもそのまま?」

「そうだな、一応ちょっとだけいじっておくか。」


俺は彼らの技能の内魔法に関する物を全て剣技の技能に書き換えて送り出す事にした。


「おし、じゃ、修羅の国ローメンにでも送っておいてくれ。」

「了解だよ!」


こうしてマスターから送られた3人のユニットはかなり適当にローメンへと送られたのであった。

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