第67話 俺、ワールドで戦争を起こす
俺とアマテラスはどうすればワールドに戦争が起こるのかを考えていた。
今でも戦争はぽつぽつと起こっていた。
その結果なのかは分からないが少しずつワールドには目立つ国が出始めていた。
活発に争いが起こってる地域は概ねワールドの三か所に集中している。
一か所は三つの大陸の接合付近。人間が生まれた地のすぐ北で、そこにはいくつもの国が興っていた。
次は少し東に進んだ、大陸の南に突き出た三角形地帯。
最後はさらに東に進んだ大陸の端で、そこでも大きな国がいくつか興っている。
俺はこの二つの地域で戦争をさせれば一気に強い国が作れると考えた。
問題はそのためにどんなイベ書が必要か、という事だ。
「アマテラス、なんか良さそうなイベ書あるか?」
「うーん、全然判んないかな。通常のワールドでも国同士の戦争って起っちゃう事はあっても起こす必要はないから。」
「だよなぁ、せっかくいいアイデアなのに。」
「でも戦争は結構王様のプライドとか野心とか欲で起こってるみたいだから、なんかそこらへんに関係あるイベ書を使ってみるといいのかなぁ。」
そう言うとアマテラスは一つのリストを俺の端末に送って来た。
C『野望への挑戦』:ユニットの野望を実現する事に人生を賭ける。
C『気高い志』:志に忠実に生きる。
C『無謀な挑戦』:ユニットが無謀な挑戦をする。
C『夢への努力』:夢に向かって努力をしはじめる。
C『復讐の暴走』:復讐心が燃え上がり暴走する。
C『欲望への従属』:欲望に従って行動を始める。
UC『繁栄への競争心』:隣接する街同士で競い合う。
R『代償を伴う発展』:指定地域が急速に発展する。発展による災いに見舞われる。
SR『淘汰による選別』:一時的に世界を強者による淘汰が始まる。
おお、確かにここらへんのイベ書を上手く使えば争いの火種になるかも。
しかしこれ勇者育てるって感じじゃないイベ書が結構あるんだな?
「なぁ、アマテラス、この『欲望への従属』とか結構えぐくない?」
「え~、ちょっと待ってね。」
そう言うとアマテラスは手元で色々と調べ始める。
「うん、まぁそう言った事を原動力にしてのし上がる人もいるみたい。性格を見て使い分ける、みたいな?」
「なる、ほど?てかそんなのどうやって使い分けんだよ!?」
「それは任せて!私がチェックして探してくるから!」
正直俺は信用してない。が、時代の更新スピードについて行けないし任せるしかないな。
まぁそれ系はCが多いしケチる必要は無いな。
俺は早速手元のイベ書を見て持ってるやつを探してみた。
あった!『野望への挑戦』、これはなかなかそれっぽい響きだから効果が高そうな気がするぜ!
「アマテラス、早速だがこの『野望への挑戦』を使ってみたいんだが、どこかの国で野心的な王様とかいるか?」
「はいは~い、それだったらこの人とかどうかな?」
それは一代で国を作り上げた一人の国王で、既に近隣の多くの国を併呑して大国を作り上げていた。
「おお、いいぞ!一代で成り上がった王様なら野望もかなりのもんだろうな!」
俺はイベ書をアマテラスに渡すと、早速『野望への挑戦』が実行された。
モニターに光を放つ一人の男が映し出される。
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ローメンの王ローメンスは戦上手な上に人を使うのが上手かった。そのため、彼は戦に勝ち続ける事で仲間を増やし、領土を増やし、一代にして強国を作り上げた。
そして、つい最近に強敵サビノスを併合したところである。
そもそもの戦いの切っ掛けはローメン国は建国間もなく、男ばかりの国であったことからローメンスが命じて近隣の国から女性を略奪したからなのだが、勝てば官軍である。
しかも戦に負けたサビノスの王がローメンスに説得されローメンの共同王として迎え入れられ、領土もろとも彼の国の一員となったのであった。
長い闘いがようやく終わり、元老院は胸をなでおろしていたがローメンスはそうではなかった。いや、そうではなかったというよりは更に強国となった事でより大きな野望を抱く様になったのだ。
正直言えば彼もこの戦争が終わったらひと段落だと考えていた。そもそもがただ自分の剣国した国を発展させたいために頑張っただけで他国の領土はそのおまけだったのである。
しかし彼は考えた。自分を試したいと。いったい自分の実力でどれほどまで国を大きくできるのか、世界はどこまで大きいのか知りたいと。
そしてそれを元老院の数人に話をした。彼らは反対した。今は落ち着いて国の基盤を固める時だと。ローメンスもそれは解っていた。しかし、彼は既に50を超えていた。残された時間はあと僅かだ。彼は強引に計画を進める事を決めていた。
そしてある豪雨の晩。
ローメンスは元老院の手の者に暗殺された。
その死体は建設中の神殿に掘られた穴に埋められ、後日大理石がその上に置かれた。
突然いなくなった王に国民は動揺したが、元老院は彼が神になったと発表し、政治的安定性をどうにか維持した。ローメンはそれから数百年続く大国となった。
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俺はイベ書の結末を見て気が抜けていた。
「なあ、アマテラス。王様なのになんかサックリ暗殺されたんだけど?」
「・・・過剰な野心は身を亡ぼす。全ての生きるものへの教訓だよ!」
いや、この王様お前が選んだんだけど?
そんなキリっとした顔で教訓垂れられても知らんがな!
俺の最初の目論見はあっという間に崩れ去った。
いや、だが負けねぇ!絶対に戦争を起こしてやるんだ!
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