第66話 俺、ワールドを鍛えるアイデアを考える

俺はマスターからいくらかのイベ書をもらって家に帰っていた。

早速のイベ書の補充はかなり嬉しいのだが、しかしそれ以上に俺の頭の中はマスターのしてくれた話がグルグルしていた。


あの話には俺のワールドへのヒントになる事が色々と入っていた気がするのだ。

そう、俺はわけも解らずワールドを育てようとしていた。

いや、今までは文明すらなかったんだからそれはそれで仕方なかった。


だが今は人が生まれ、文明が生まれた。

それで次にする事が何かあると思うのだ。


俺が部屋に入るとアマテラスが挨拶をくれる。

「あ、国之さまお帰り~。」

「おう、アマテラスただいま。」


アマテラスはちょっと沈んだ声で俺にワールドの報告をしてくれた。

「今日はね、エンメカちゃんの造った国が滅ぼされちゃったんですよ。」

「え?マジで?」


「うん、なんか以前マスターからもらったユニットがいたじゃないですか?」

「へ?ああ。」


「彼らの持ってた剣がですね、一本だけ伝説の武器として伝わってたんですけど、それを近いレベルにまで再現した人が出て来たんですよ。」

「おお!それは凄いな。俺のワールドの金属ってなんか脆いんだよな。」


「更にその国がですね、騎馬を使う様になってですね、凄い強さで周りを攻め始めたんですよね。それでエンメカちゃんの国もやられちゃって。」

「そうだったのか・・・ん?でもそうなるとあの国より強い国が出て来たって事か!それは嬉しいぞ!」


それを聞いてアマテラスも顔を上げる。

「あ、そうだね!つい応援してたとこが負けちゃったから忘れてた。」


おいおい、頼むぜアマテラス。

と思った所で俺は思いついた。


「アマテラス!戦争だよ!戦争!!」


俺が更に言い募るとアマテラスも少し考える様にして口を開いた。

「国之さま・・・センソーですか?」

「そう、戦争なんだよ!」

「あ!ああ!戦争ですね!」


アマテラスは突然明るい顔になって俺のセリフを繰り返す。

俺は伝わったのが嬉しくて拳を握りしめて繰り返した。


「おう、戦争だ!」

「戦争かあ、戦争ね!」

アマテラスも負けじと両手の拳を脇に絞めて繰り返す。


俺は少し違和感を覚えて冷静になる。

「で、どうすればいい?」

「は?」

アマテラスは斜め上を見ながらかわいい仕草で首をかしげる。


だよねー、俺分かってたわ。途中から分かってたわ。

「アマテラス、解らない時は聞こうな?」

「やだな~、国之さま。戦争くらい知ってるよ?」

バカにしないでとばかりに人差し指を振るアマテラスに俺は少し頭を抱えた。


「いや、戦争を知ってるかどうかじゃなくて俺の意図は伝わったのか?」

「意図?戦争がどうかしたんですか?」

分かってはいたけどこう現実を突きつけられるとちょっと唖然とするよね。


俺は気を取り直して説明を始めた。

「うん、アマテラス、俺はこのワールドを強くしたい。」

「そうだね!頑張ろう!」


「そこでだ、俺はこのワールドに試練を与えようと思う。」

「ほうほう。」


「その試練が戦争という事だ、解ったか?」

「つまり試練が戦争ってことだね。すっごく解ったよ!」

俺はアマテラスの顔を見る。

アマテラスはすっごく解った風な顔だ。


信じよう、アマテラスは俺のエージェントだ。

俺が信じないでどうする!?


「で、どうすればいいと思う?なんかいい手段はないか?」

「うーん、つまりワールドで戦争を・・・探す?」

あっ、惜しい!・・・のか?


「いや、戦争探しても既に起こってるだろ?」

「うん。」

「・・・。」

「・・・。」


しばしの沈黙。


「だから、戦争を探すってのは起こっちゃった戦争を見つけるって事だよな?」

「うんうん。」

「つまり俺が試練与えるまでもなく戦争になってるじゃん?」

「うん?」


「俺はワールドで戦争を起こして欲しいんだよ。」

「でも国之さま、戦争はもう起こってますよ?」

「いや、もっとだ。そうすることでより強い国が生まれると思うんだよ。」

「そう・・・かな?」


アマテラスはあまりピンと来てない様だ。

俺はアマテラスに更に詳しく思いついた事を話した。


通常は魔獣を狩りまくる事で魔獣と冒険者が育ち、国が強くなってくが、俺のワールドには倒すべき魔獣はいない。

なのでそれに代わる何かが必要という事だ。それが戦争だ。


戦争が起これば強い国が生き残る。その強い国を倒す国がでてきたらワールドはより強くなってるという事だ。それを繰り返していけば、継続的に強い国が生まれ続けるループが完成する!


「うーん、ちょっと言ってる事はあまり解らなかったけど、要は戦争すると強くなるんだね!」

「そうだ!戦争を生き残る事できっと俺のワールドでも勇者みたいのが誕生するに違いない!という事で、なんか戦争を起こす手段はないか?」

「戦争を、起こす・・・国之さま、戦争ってどうやって起こるんですか?」


俺の質問にアマテラスは根本的な疑問を俺に返した。

あれ?そう言われると戦争ってどうやって起こるんだ?


俺が何かを起こそうと思ったらイベ書しかないわけだけど、イベ書で戦争を起こすみたいのは無かった気がする。って、結局考えるの俺なのか・・・。

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