第64話 俺、検証チームを組む2
控室に入って来た木花さんは俺たちを追い立てた。
「ほらほら、私着替えますから!あとシモンはコーヒー出せないんですからね!お客さん待ってますよ!」
なに!?あのシモンが接客してるってのか?
エージェントが接客する喫茶店とか何気にいいんじゃないのか?
俺はそんな事を考えながら部屋を出る。
そこには確かに新しいお客さんが何人か座って待っていた。
マスターはシモンから既に受けている注文を聞きながらコーヒーを入れ始める。
「じゃ、常之ちゃんこれ3番さんに。」
「はい。」
俺がコーヒーを持っていくとお客さんは「え?ああ、君か、ありがとう。」と一瞬困惑した様な顔をした後お礼を言った。
その人は良く来てくれる常連さんでマスターとも結構よく話をしている人だ。
おれはそんな人の反応に少し違和感を持ちながらマスターが次に出したコーヒーとサンドイッチのセットを別のテーブルに持っていく。
というかなんかお客さんの視線がちょっと不思議そうなのが気になるんだが?
とか思っていると木花さんが控室から着替えて出て来た。
「あれ~?国立さん、今日バイトだったんですか?」
ん?どゆこと?と思った瞬間俺は事態を理解した。
俺、まだ着替えてないじゃん!?
入ってすぐにマスターに呼ばれて奥に引っ込んだだけで着替えてないのをすっかり忘れていたのだ。
そりゃ私服の人がコーヒーとか持って来たら驚くよな?
俺がマスターを見ると、マスターは素知らぬ顔でパスタをフライパンで混ぜていた。
あの顔、絶対気づいてた!!
「あら?常之ちゃん着替えてないじゃな~い。」
って白々しいんだよ!
お客さんも何人か笑っててめっちゃ恥ずかしいんだけど!
俺は再度控室に戻って着替えてから店に出る。
店では既にマスターがお客さんと話し始め、木花さんがカウンターに入っていた。
これから少し忙しくなる時間なのでカウンター近くで席の空き状況を確認していると木花さんが話しかけていた。
「国立さん、私も
「え?遂に!?」
「ここに居るとみなさん楽しそうに話しするじゃないですか?だから我慢できず買っちゃいました。」
それはそうだ、何せここは所謂創造神の集う喫茶店だしな。
「おお、神の領域にようこそ。」
俺は
因みにリアルで聞いたことはない。
俺的には結構グッとくる言葉だ、木花さんも嬉しそうだしきっとそうに違いない。
いや~、後輩が
俺のワールドが特殊すぎて先輩面して蘊蓄垂れられないのが悲しいけど。
「それで結局ミドルクラスにしたんですよ。マスターもそれで差が出る事は殆どないって言ってたんで。」
ミドルクラスはかなり無難な選択だ。
因みにハイパフォーマンスとか言うアンダークラスだと大きなイベントの処理の時にちょっと効果の効きが悪いとかいう話だ。
「俺みたいにマナ入れ忘れてないならミドルクラスでも全然問題ないよ。」
俺は唯一言えるアドバイスを伝える。
「そこは国立さんの話を聞いて気を付けました!マナ濃度高い方が魔法が派手らしいからガッツリ上げて93%まで行きましたよ!」
っぐ、羨ましい。というかちょっと分けて欲しい。
因みにデュエルではマナ濃度が高ければいいというモノでもない。
今の主流、というか上位に来ているワールドは75%前後が多い。
これはマナ濃度の高すぎるワールドのユニットが相手ワールドで戦闘をするときに自分の思い通りに魔法を行使できない事態が発生するかららしい。
逆に低すぎると密度の高い世界の魔法は少し地味というか堅実なマナの使い方が主流になるため、強力な魔法があまり発展しないらしく、強いユニットを育てにくいんだとかなんとか。
そういうわけで今強いと言われているのはマナ濃度75%前後という事になっている。
なので木花さんは15%くらい俺にマナを融通する余裕があるわけだ。
まぁそんな手段はないんだがな!
木花さんと色々と話をしていると増田も店にやってきた。
「いらっしゃい。というかかなり頻繁に通ってるな。」
「いや、今日はマスターに呼び出された。」
と言うのでマスターを見ると、どうやら増田に気付いた様でこちらに近づいてくる。
「
「お邪魔します。というかなんか色々と検証したいって何ですか?」
どうやらさっきの流れでそのまま呼ばれていたらしい。
そう言えば増田の手には
呼ばれたらすぐ来るとか既に俺と増田の関係を超えてるな。
ちょっと寂しいぞ、増田。
「今ちょっとピークタイムだから、カウンターでコーヒーでも飲んで待っててくれる?」
「分かりました。」
木花さんも慣れた感じで増田にコーヒーを出しながら自分も
増田と木花さんは楽しそうに序盤の事を話している。
俺の入れない話題だ。
なんか増田が遠くなってゆく!
それから少ししてお店に空きが出始めるとマスターが洗い物をしながら増田と話をしている木花さんに声をかける。
「咲夜ちゃん、ちょっとお店頼むわね。私この二人と話があるから。」
「え~、マスター私も入れてくださいよ~。」
木花さんは
「お願いよ~。後でちゃ~んと教えてあげるから♡」
「ブー!」
とか言いながら木花さんは洗い物を再開した。
そして俺は増田とマスターについて改めて控室に入って行くのだった。
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