第63話 俺、検証チームを組む

俺は喫茶『創造してごらんなさい』でマスターから『問題』について聞いていた。


「一体何が問題なんですか?強いユニットが手に入ってデュエルで全勝できるなら凄くいい事に思えるんですが?」

「確かにね。デュエルだけ見れば勝ち放題だけど、そこから先を見据えた時に続かないのよ。」


首をかしげる俺にマスターは更に説明をしてくれた。

「まずもらったユニットで今ワールドが停滞してるのよ。私のワールドで生まれる魔王とかが彼らにはザコ過ぎて総なめされちゃうのよねぇ。」


まぁ要約するとこんな感じだった。

マスターのワールドで生み出せる魔王のレベルではあの二人には相手にならないため、速攻で倒されてしまうらしい。なのでワールドの国が彼らに頼ってしまって後続が育たない問題が出てきているらしいのだ。


そうなるとデュエルで勝ち上がって行っても天井はあるわけで、例えば3000番台まで行けたとしてその上をどうやって狙っていけばいいのか、という話になる。


もちろん二人が更に成長してトップオブトップを狙える様になる可能性があるなら時間をほぼ進めないで長い事一位の座を維持できるかもしれない。

しかし、実情はワールドの敵が弱すぎて最早彼らが育たないのだ。


それに最初は一位でも将来は他の創造神が彼らを超えて伸びる可能性だってあるのだ。なので結局、世代交代が大切でそのためには彼らレベルのユニットが育つワールドにしていかないといけないのだ。


という事で今ランクを上げ切ってしまうと、その後負け続けるか一旦デュエルを止めるかの選択肢しか無くなるのでまずはデュエルに出さないでどうやってワールドを育てるかを考えてるという事らしい。


「最初はね~、彼らがどんどん育つから楽しすぎてあらゆる厄災を投げつけてたのよ。でも遂に成長しなくなるし、結果ワールドは弱体化するしで、ホントまいっちゃうわ~。」


な、なるほど~。俺なんて嬉しすぎてガンガンデュエルしちゃうけどやっぱ上行く人は違うなぁ。


よく考えたら俺のドラゴンパーティーもそれだったって事だよな。実際、今デュエルできてないし。いや、最初から今の状態だったとしても結局デュエルできてないからそれはそれで結果オーライなのか?


「で、マスターは俺に相談して一体どうするんです?俺、全く解決策が解らないんですけど?」

「うん、常之ちゃんに解決策は求めてないのよ。」


地味にショーック!

そりゃ事実としてはそうなんだけどな!

いや、俺もそういう質問の仕方してるしな!

でももう少しオブラートに包んで欲しいわ。


「んもう。何よ、落ち込んでぇ。カワイイわねぇ♡」

マスターが俺の心境を読んだ様に俺の顎を持ち上げる。


「・・・って変な触り方しないでください!」

俺はパシリとマスターの手を払いのけて、睨みつける。

「冗談よ、冗談♡」

冗談が怖いんだよ!!


一瞬ドキッとしたけど、変な意表を突かれたからだよな?

吊り橋効果的な勘違いとかしないよな?

いやいや、変な事を疑うな!俺だ、俺をしっかりと保つんだ。

俺は俺だ!俺は俺だ!俺は俺なんだぁらあああ!


「んで、どうするんです?」

俺はどうにか自分を落ち着かせると不機嫌さを全面に出して話を戻す。


「うん、ちょっといくつか検証したい事があって、それで常之ちゃんにちょっとお願いしたいのよ~。」


ここで俺は承諾しない。

多分これはチャンスだ。

俺の勘がそう告げている。


「まずは内容を聞きましょうか。」

俺はちょっと偉そうにドカリと椅子に深く座りなおして腕を組んだ。

「あら、ちゃっかりしてるわね。そんな所もス・テ・キ♡」


なんかやけにグイグイ来るな。

これがマスターの交渉術って事なのか・・・?


「常之ちゃんにはまた何人かユニットを送ってもらいたいのよね。あ、もちろんタダとは言わないわ。ちゃ~んと報酬も用意するから。」


「クックック、来たぞ。待ち望んだチャンス。」

しかもあちらから転がり込んできたチャンス!

これでイベ書不足問題を解消できるぜ!!


「常之ちゃ~ん、声漏れてるわよ~。」

あきれた顔でマスターが指摘した。


ぐは!気づかなかった。

いやどこまでしゃべった俺!?

「マ、マスターの無理ない範囲でお願いします。」

俺は頭を45度に下げた。


結局俺は交渉の席に着くことができなかった。

だが、マスターはこっちの事情も聞いてくれてイベ書をできるだけ融通してくれる事になった。


それから俺は思い出した様に増田ともトレードしてもらった事を伝えた。

「おれ、そう言えば増田ともユニトトレードしたんですよね。」

「あら、そうなの?焙琉あぶるちゃんの方はどうなってるのかしら。」

「どうなんでしょ?というかそっちも強キャラとかあり得なくないですか?」


俺は自分の願いを口にした。

だってそうだろ?俺のワールドでそんな成長見せるやついないんだぜ?

マスターにあげたユニットはたまたまそういう才能があったに違いない。


「あら、焙琉あぶるちゃんの方は別にチェックしてなかったから分からないみたいね。」

って確認早!友人の俺よりもコミュニケーション取ってるんですけど?

いや、俺コミュ障だから自ら連絡すること殆どないんだけど。


「ちょっとママと国立さん!お店誰もいないんですけど!!」

そこへ木花さんが入ってきて俺たちの話は中断した。

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