第60話 俺、勇者を生み出してたんだが
と言うわけで俺は放課後に喫茶『創造してごらんなさい』に来ていた。
え?学校?隠されたステルス能力で全てをスルーしました。
カランコロン
相変わらず気持ちの良い鐘の音を聞きながら中に入るとマスターが待ってましたとばかりに俺の肩に腕を回して来た。
「常之ちゃん、ちょっとこっち!」
「え?え?ちょっ、なに!?」
俺の困惑した疑問を無視してマスターはグイグイと俺を引っ張る様にカウンターの裏にあるマスターの
「なんですかもう!呼べばちゃんと来ますから!」
改めて俺が抗議すると、マスターはモニターを指さす。
「それどころじゃないのよ!ちょっとこれ見て欲しいのよ!!」
そこにはマスターのパーティーと思しきメンバーが街を歩いていた。
何やらかなり豪華な装備を身に着けた20前後の黒髪黒目の男。その背中にはゴツイバスタードソードが背負われていた。顔に何か所が傷があり、ちょっと強面だ。
同じく黒髪黒目で左右の腰にシミターを吊り下げた男。堀が深い顔立ちだが、なかなかのイケメンだ。年は17、8だろうか。
そしてその周りには三人の美女。一人は魔導士ローブを身に着けたお姉さん系美人。もう一人は多分魔法剣士でツインテールの狐目の美少女。最後が神官衣を纏った巨乳眼鏡のホンワカ美人だ。
ゲームの中とは言えテンプレみたいなパーティーに殺意を覚えながら改めてマスターに質問する。
「こいつらが一体どうしたってんです?イケメン自慢ですか?」
「んもう!鈍いわね!シモン、この子達のステータス見せてあげて。」
「承知しました、我が主。」
え?こいつ口悪いと思ってたら主人にはちゃんとした口調なのね。
とか思いつつ映し出されたステータスを確認する。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
名前:ンパダ
職業:勇者
レベル:38
推定パワー:5,551,713
生命力:23,200
マナ:12113
攻撃力:8,923
防御力:5230
魔力:4823
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ちょっ、なんすかこの名前・・・いや、なんすかこのステータス!!」
俺はダサい名前に白目をむきかけたがそのステータスに白目どころか眩暈を感じていいた。それはランク100級いや30級のユニットだった。
マスターは強い。ランク1万台と言えば頂点の0.002%だ。
それは一般の草大会では出禁喰らう位のランクなのだ。
しかしそれでも推定パワーは50万前後だ。
そこから更に上を目指すにはそれこそ大量のイベ書を効率よくつぎ込み、あまたの運を味方に付ける必要があるのだ。一体どれだけの確率でこんなハイスペックなユニットが出来上がったのか。
俺がもう一人映し出されているステータスを見る。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
名前:ナトゥ
職業:勇者
レベル:38
推定パワー:4,467,548
生命力:19,878
マナ:10323
攻撃力:8,223
防御力:4498
魔力:5121
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
こちらも負けず劣らずハイスペックだ。
一体何をしたんだマスターは?
いや、これ勇者が二人なのになんで同じパーティーに居るの?
俺がマスターを見る目は明らかに驚愕に満ちてただろう。
こちらの視線にマスターも気が付いた。
「でしょ?」
いや、でしょ?じゃないよ!
全く意味が分からないんだが?
「マスター、ステータス自慢ですか?」
「んもう、違うわよ!失礼しちゃうわね。」
どうやらこっちが分かってない事が分かった様だ。
「この子達、常之ちゃんからもらったユニットなのよ!」
「は!?」
なぜか小声なマスターに俺は大声で聞き返した。
この化け物ステータスの勇者達が俺の送ったユニットだってのか!?
マスターは皺の寄った眉間に手を当ててから「ちょっといらっしゃい!」と言って俺を控室まで引っ張っていった。
「マ、マスター、店は?店!今日まだ木花さん来てないでしょ?」
「いいわよ、どうせ常連さんだけだし、シモンちゃんが見ててくれるしね!」
マジかよ、エージェントって
控室でお互いに向かい合って座ると改めてマスターが説明を始めてくれた。
「正直私もね、全く期待してなかったわけ。だから漁村の近くの浜辺に置いといたのよ。―――」
送り出す時、マスターは全くステータスもいじらずに共通語だけ喋れる様にして漁村に置いてみたらしい。漁村なら奴隷にされる可能性も低いし常に人手を必要としているからちょうどよかったと考えたわけだ。
まぁ俺を助けるためにやったトレードだし、どこかで生きられる程度でいいと思ったのでかなり適当な扱いだったと。
で、シモンもシモンで一切彼らと話をする事無く気絶したまま送り出したらしい。
適当すぎだろ!仕事しろエージェント。
まぁ、それはそれで分かったけど、なんでマスターはこんなスゴユニットが手に入ったてのに困った雰囲気醸し出してるんだ?
仕方無いので俺は、はあ、とか、はあ?とか言いながらマスターの話を聞くのだった。
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