第59話 キャッスル戦の決着
ウルムの王ルガメは敵の姿を見て目を見開いた。
敵はなんと馬に跨っていたのだ。彼はそんな事は全く考えた事がなかった。
馬は食用であり遠方での行商で荷運びに使っている者がいる程度の生き物だった。
食べ物にまたがり、戦ができるなど誰が考えようか。
しかもその馬も人間も銀でできた服を身に着け、帽子をかぶっていた。手に持つ武器も銀色に光り輝き、鋭さを感じさせるのだ。
ルガメの兵士達も敵の出で立ちに動揺していた。
「恐れるな!我々は神敵を滅すべくここへ遣わされたのだ。神が勝てぬ者を送ろうか!?我らは神軍!弓を射かけよ!槍を構えよ!」
ルガメの号令は兵士を鼓舞し、奮い立った兵士は天高く声を上げた。
「我らは神軍!弓を射かけよ!槍を構えよ!」
「我らは神軍!弓を射かけよ!槍を構えよ!」
「我らは神軍!弓を射かけよ!槍を構えよ!」
ルガメは全軍に指示を出し、縦隊進軍を止めて左右に展開させる。
中央は厚く、左右には弓兵を多く配置する。
敵の突撃を広く受ける作戦だ。
弓兵は弓をつがえ、狙いを定める。
槍兵は馬の接近に備えて槍を強く握りしめた。
しかし、馬がこちらの射程に入る前に、ヤツ等の遠方から矢が大量に飛んでくるのが見えた。それは大空を舞い、天から降り注ぐ様に彼らに襲い掛かった。
「盾構えー!!」
盾を持つ者が上に盾を構えて矢に備える。
木の盾に矢が突き刺さる音が戦場に響く。
「なんだあの飛距離は!?」
ルガメはあれほど飛ぶ矢を見たことがなかった。
それも当然で彼らの弓は木から削りだした丸木弓であったが、敵の使うそれは複合弓であり、強度も引ける力も段違いであった。
そしてその先端は例の金属であり木の盾を貫く事すらあるのだ。
数名の兵士が射抜かれて負傷した。運の悪い者は頭を貫かれ絶命した。
しかし驚愕におののく時間は無かった。
敵は既にかなり近くまで接近していた。
「弓放てー!!」
ルガメの兵士も果敢に敵に向けて矢を放つ。
それは放物線を描いて敵の騎馬隊に過たず突き進んだ。
しかし、敵は鈍く輝く盾で彼らの矢を受けた。そして一本たりともその盾に刺さる事はなかった。敵の矢は二波、三波と飛んできてこちらの兵士を徐々に削っていく。
運よく数頭の馬が倒れる姿が見られたが、上の兵士は馬を捨てて立ち上がり、後方へと引いていった。
ルガメはそれを見て号令を掛ける。
「皆の者、下の馬を狙うのだ!!」
「下の馬を狙えー!!」
「下の馬を狙えー!!」
彼の号令は復唱され、全軍に伝播される。
接触まであと数十秒という所で敵はまるで自分達を避けるかの様に左右に分かれる。
どうやら薄い両翼を狙って攻撃をしかけてくる気だ。
しかし、それが判ってもルガメは何もすることができなかった。
何せ敵のスピードは未だかつてなく速い。彼らは全く追いつけなかった。
最前線の兵士たちが敵に突撃しようと追いすがり、走りだす。
全体が左右に誘導される様に動き、中央の密度が下がる。
そして左右に分かれた敵の背後から更に突撃してくる別の部隊が見えた。
「留まれ!敵を追うな!!」
ルガメが叫ぶ。
しかし最早戦場は大混乱に陥っており、その声は届かなかった。
整然と軍を操る敵の手で次々と集団から離れた味方を屠っていった。
彼らの槍は簡単に柄から折られ、槍先は盾を貫く事が無かった。
運良く馬を突き殺しても、槍を引き抜くまでに乗っていた敵兵に切り殺された。
それは蹂躙を超えて一方的虐殺であった。
ルガメは悟った。彼は神の子の血を引くもの。その彼を、そして彼の神を超える存在が生まれたのだと。
「わが父バンダよ!偉大なる天空の神アナンよ!残された我が民に導きを!死にゆく我らに栄光ある伝承を!」
それがルガメが最後に発した言葉であった。
一方、エルティナの将軍アーガイルは戦場であっけにとられていた。
あまりに未知な敵にどれだけ苦戦するのかと死を覚悟して臨んだ戦いで一刻と保たずに敵が崩壊したのだ。
敵の戦略はあまりに稚拙であった。
いや、そもそも魔法も使えず、装備すら殆どなく、身体能力も結局人のそれであったのだ。戦略以前の話であった。
正直、魔導騎兵隊を突撃させるだけでも勝つことができただろう。
こうしてキャッスル戦は一方的な戦いで幕を閉じたのであった。
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全く一方的な戦いに俺とアマテラスは唖然としていた。
相手は魔法が使えなくなった状態なのに難なく自分達の軍を壊滅させていった。
いや、そもそも彼らの恰好を見た時点で悪い予感はしていた。
まぁ分かっててもデュエルが始まったら何もできないんだが。
「こ、これは当分ワールドの発展の為に頑張んないとダメみたいだな。」
「そ、そうだね、国之さま。」
俺は改めて自分のワールドをちゃんと観察する事にした。
「アマテラス、戦争が起こってるとこ映せるかな?」
「ちょっと待ってね。あ、こことかかな?」
そこには数十人の武器を持った腰巻をした男たちが戦いをしていた。
お互いに槍を突きあい、果敢なヤツが攻め立てて一人ずつ倒していく。
数の差があるときは上手く二対一の関係を作り続けて敵を減らし続ける。
その後、いくつかの戦争を見る事で俺は確信した。
俺のワールドには殆ど戦略等無いという事を。
いや、それ以前にもっと装備を発展させる必要がある事に。
しかし目標は分かってもその手段がいつも判らない。
ただ一つ判っている事、それはイベ書をとにかく手に入れるんだ!
俺は次の日喫茶『創造してごらんなさい』に行く事にした。
そしてそこでまた衝撃の事実を知る事になるのであった。
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