第53話 俺、増田とユニットをトレードする
俺は久々に学校に来ていた。
なんか本当に久しぶりな気がする。
まぁやる事多かったからね、仕方ないよね。
俺は早速増田の隣に腰掛けるとまずはイベ書の話から始めた。
「おはよう、増田。今日イベ書持ってきてくれたか?」
増田は待ってましたとばかりに俺に持ってきたイベ書を見せてくれた。
「おう、数は全然ないからこれだけだけどな。」
そこには三つのSRイベ書があった。
『危機からの生存』『予知』×2
「おお、したらその三つと交換って事でいいな!」
そう言って俺は自分の持ってきたSR『術式の進歩』を手渡した。
「おい、ちょっと待て。誰が三つやると言った?」
「おいおい、術式が進歩しちゃうんだぞ?お前のワールドが強くなっちゃうんだぞ?そしたら三つ位のSRあげてもオッケーだと思わないか?」
俺はちょっとごり押してみた。
「なるほどな、じゃ、
「いや、それは無いだろ。お前が使わなかったSRなんだろ?」
やり取りの結果は『危機からの生存』と『予知』を一個手に入れる事になった。
まぁ自分じゃ使えないSRだったんだから上々だろう。
それから俺はユニットのトレードをお願いした。
試しにやってみたいだけなので人間ならどんなユニットでもいいと言ったら、不承不承承知してくれた。
これでどうにか検証できそうだ。
俺が目的を達成してほくほくしていると教室移動の際にバッタリ天野さんと会ってしまった。いや、本来想定しておくべき事態だったんだが、あまりにもどうすれば良いのか判らなくて心の中に封印していたのだ。
え?封印してたって起こる事は起こる?
ンな事しってますよ。しってますとも。
うん、ダメだな。フリーズして動けない。
天野さんもなんかすっごい固まってるわ。なんか言わないと!
「あ、あの、あの、あの。」
って、俺はあのあの星人か!
いや、あのあの星人ってなんだ!!
「その、その。」
って、一文字変えただけかよ!!!
しっかりしろ俺!
俺がしどろもどろを超えてドロドロヘドロみたいになってると天野さんが意を決した様に喋ってくれた。
「あの、国立くん!き、気にしないでいいからね!」
「え?」
俺が天野さんの言葉に呆気に取られている間に天野さんは小走りに行ってしまった。
気が付くと俺は右手をちょっと突き出して立ち尽くしていた。
気にしないでってどういう事だ!?
やんわりお断りされたのか?
まてまてまて!もっと前向きに考えるんだ俺!
あれは、俺が天野さんを好きな事を気せずドーンと来てくださいって事では?
いや、ねぇわ!どう良く解釈したってそれはねぇわ!!
え?じゃあなに?
やっぱ俺フラれたの?
告白してないのに振られたの?
ハッと意識が戻って周りを見るとなんか通りがかりの人たちがこっちを見ていた。
ヤバい、めっちゃ恥ずかしい。
その後の授業の記憶はない。いや出てたとは思うんだが。
それから俺は帰路についた。
今日は休み明けで喫茶『創造してごらんなさい』の客は少ないので休みだ。
別に行ってもいいんだが今は俺のワールドの検証が大事だ。
別に傷ついたから今日は行きたくないとかそんなんじゃない。
俺は家に帰ると早速増田に連絡した。
「私だ。」
「私だ。」
いつもの会話から通話を開始する。
俺がなんかの番組で見た秘密組織の幹部の挨拶を使う様になると増田も同じ挨拶をする様になっていた。
なんか間抜けだと思いつつ先に止めるのが癪なので今日まで続いている。
いや、俺が始めたんだから止めるべきは増田だろ。
まあ些細な問題は置いておいて俺はアマテラスに増田のワールドとの接続をお願いしてから増田にユニット一体を送ってもらった。
「私のマスターが愛情込めて育てたワールドのユニットです。ありがたく受け取りなさい。感謝と賛辞を述べなさい。」
増田のエージェントのショコラの声がする。
うん、なんかツンデレってより女王様的な?
って、なんか結構薄汚れた服着た子が送り込まれて来たんだが?
10歳くらいか?どう考えても冒険者ですらないよな?
まぁこっちもかなり似たような子を送ってるわけなんだが。
いや、俺の方はそういう子しか送れないだけだから仕方ないよな?
「ホント!?すっごいありがとう!」
俺がちょっと増田に問いただそうとしていると、アマテラスがまっすぐな感謝を述べる。うちの子は素直で心が洗われる様だ。
とか言うと思うなよ、増田!!
「おい、なんか冒険者でもない子が送られてきたぞ!?」
「国立、俺がその子を見つけるのにどれだけ苦労したと思ってるんだ。ステータスをよく見ろ。」
そう言われて俺はステータス画面を確認する。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
名前:エンメカ
職業:―
レベル:12
推定パワー:43
生命力:63
マナ:0
攻撃力:42
防御力:26
魔力:0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
は?何を見ればいいんだ?
というか魔力すらないんだが?
「増田、どういう事なのか俺には全くもってサッパリだぞ?」
「ふぅ、察しが悪いな国立。お前のワールドは魔力がないんだろ?だから魔力の無いユニットをわざわざ探して用意してやったんだぞ。かなり希少だ。」
「いや、俺は魔力ある奴が欲しいんだよ!でないと魔法使えるワールドで活躍できないだろうがよ!」
俺は思わぬ伏兵に愕然としていた。
増田、お前きっと人の足を引っ張る天才だぞ。
「そうなのか、また今度な。」
そこで通信は途絶えた。
「お、おい、せめてユニットの経緯を!」
チクショウ。思わず通話切れの端末に話しかけちまった。
どうせ面倒臭くなったに違いない。なんて奴だ。
モニターの中では既にアマテラスがその子供と会話を始めていた。
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