第52話 俺、また知りたくない事実を知る
俺は驚愕していた。
戦いが始まったと思ったら既に終わりかけていたのだ。
俺はイベ書を使う間も無く致命傷を負う異世界ユニットをどうする事もできなかった。戦っていた三人は一人が倒されると一瞬で残りの二人も制圧されてしまった。
しかしだ、しかしだぞ。おかしくないか?
確か彼らのパワーは50万を優に超えていたはずだ。それがこうもあっさりとやられるなんてことあるだろうか?
俺は慌ててアマテラスに彼らのステータスを表示させる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
名前:ライオネル
職業:戦士
レベル:54
推定パワー:5,449
生命力:12/683
マナ:0/156
攻撃力:382(鋼の剣)
防御力:221(レザースケイル)
魔力:113
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ナ?ナニコレ?
なんかすんごい数値が下がってるんだけど?
今の俺のワールドの人間と殆ど変わらない強さなんだけど?
しかも装備もなんか弱そうな名前になってる。
「ア、アマテラス。解説プリーズ。」
「・・・。」
俺の丸投げにアマテラスはしばらく画面を見ながら頑張て考えていたが、自信あり気な笑顔を俺に向けて言った。
「分かんない。」
「これ、一体いつからこうなってたんだ?死にかけだからこんな数字なのか?」
「この数値は普通の状態の時のものが出てくるから死にかけだからってわけじゃないと思うよ。一体いつからこんな数字になったんだろうね~?」
た、他人事過ぎるぞアマテラス。
とは言え俺のワールドの問題と言えばマナが無い事。
つまり今このライオネルのマナが0になってる事が問題なのか?
というかMAX値も下がってるとかどういう事なんだ?
他の三人のステータスも当然マナは0だ。
そしてやはり、こちらの世界に来た時のステータスからかなり小さな数字になってしまっている。
つまり俺のワールドはどれだけ強い人をトレードで引っ張ってきても弱くなってしまうという事なのか?まるで砂漠に水を撒く様な行為にしかならないって事なのか?
かすかにともった希望の灯があっという間に絶望に変わる。
いや、まだ確定情報じゃない。
そうだ、増田だ。次は増田にトレードを頼もう。
それでアマテラスに監視を頼む。
それで検証しよう。
まぁ既に確信あるけどね。
俺が考え込んでいるとアマテラスが心配そうに声をかけて来た。
「国之さま?大丈夫、かな?」
まだ、アマテラスに話をするのはやめておこう。
ちょっと一難去ってまだ全然時間が経ってない。
次の検証が進んだ時に話をすればいい。
「いや、ちょっと色々とありすぎてな。というかまずは俺のワールドの人間と仲良くできる様にちゃんと話をして送り出すのが先ずやる事だわ!」
俺は話題を変える為に別の問題をアマテラスに伝えた。
いや、というかこれ重要な事だわ!
ショックな事多すぎて忘れる所だったわ!
なんで折角送り込んだのに戦いになってんだよ!
「あ、あ~。だよね。ちょっと説明足りてなかったかな?」
アマテラスがちろっと舌を出して困った顔をする。
いや、足りないのちょっとじゃないからね?
舌だしててちょっとかわいいけどダメだからね?
「あのなぁ、アマテラス。どう考えても足りないなんてもんじゃなかったぞ?ちゃんと説得するためのシナリオを考えておく必要があるだろ。」
「え?死んじゃったから次のチャーンス!っていうのがテンプレみたいなんだけど?何がダメだったんだろ?」
こいつ、本気で解ってねぇ。
俺はこめかみを抑えつつアマテラスに説明した。
「あいつら自分が死んだことを疑ってただろ?そこを納得させる話をしないとダメだろ。」
「うんうん、そうだね!」
「そんで、俺のワールドでどうして欲しいかも伝えないと戦いになっちゃったりするだろ?」
「なるほどね~。」
つ、疲れる。
お前はワールド運営を上手くやるためにいるんじゃないのか?
「でも全く死にそうな状況じゃない人もいるんだよね。」
アマテラスが思い出した様に呟く。
おお、そうなのか。
というかみんなどうやってトレードしてるんだ?
そんないいタイミングで出したいユニットが死にそうな状況にいる事あるのか?
「なあ、みんな一体どうやっていいタイミングでトレードするんだ?今回は俺の方が適当だったからいいけど、お互い欲しいレベルのユニットで取り換える時とかさ、タイミング合わなくない?」
「あ、それはねイベントトラップ作ってストックしておいてるんだと思うよ。」
「ん?イベントトラップ?ストック?」
アマテラスは解ってない俺を見てわざとらしく咳払いを一つして説明を始めた。
「そうだよ。イベントトラップっていうのは、自分の見つけたいイベントを抽出するためのシステムだよ。これに引っかかるイベントが見つかった時にスローストップモードにする事もできるよ!」
ん?そう言えばなんか以前増田にイベ書を使うタイミング見つける方法として聞いた様な・・・。
「で、この時にそのユニットを捕獲してストックしておけるんだよ。ただしストックロットは8ユニット分しかなくて、ストックしたら元のワールドには戻せないから気を付けてね!」
なるなる、つまり死にかけのユニット見つけてストックしておけると・・・。
「っていつも思うんだが、そういう情報ネットで見ないんだが。」
「あ~、基本的な事だし、エージェントが教えればすぐすむし、あんまり需要ないんじゃないかな?」
俺はアマテラスの小さなほっぺたをつねった。
「イタイイタイ!国之さまイタイよ!!」
何にしても検証だ。
先ずはあのステータス問題をちゃんと検証しないと。
俺はアマテラスのほっぺたを上下させながらどうするかを考えていた。
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