第48話 異世界に降り立った不幸なパーティー
俺がアマテラスと色々と話をしてからモニターを見ると四人は戦っていた。
一体何が起こったのか、集落の人間と戦っていたのだ。
いや、四人いたのが三人しかいないんだが?
「ア、アマテラス、これは一体何が起こって・・・」
「多分ワールドに送ってから5日経ってるけど、その間に何か起こったみたいだよ。」
いや、それ答えになってないから!
何か起こったなんて誰にだって分かる状況だから!
俺は起こった何かを知りたいんだよ!!
俺は心の中で絶叫した。口にだしてもどうせ答えは返ってこないから。
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ライオネル達は気づけば森の中に立っていた。
「こ、ここはどこだ?」
ガーランドが当然の疑問を口にする。
「ここが異世界?この木はブナの様だが。」
ルーメンが自分達の世界でも見た事のある木を撫でながら言った。
「くそ!全くどうなってんだ。変な女神に呼び出されて、気づけば異世界がよ!」
ライオネルが悪態をつく。
「とにかくまずは状況を確認しよう。」
レギンがそれをなだめる様に提案する。
四人はまず自分達の持ち物を出し合った。
基本的にはいつも身に着けている物ばかりであった。
剣や鎧は点検してみたが特に問題はなさそうだ。
手持ちの道具はナイフが3本、手ぬぐいが5枚、銀貨が43枚。
そして食べ物は一切無くルーメンがいつも腰につるしている革袋に入っていた多少の水と薬草だった。野宿等で必要なものは全て背負い袋に入っていたが、それらは戦闘の際に床の端に置いていたせいか、無くなっていた。
四人は続けて周囲の探索を開始した。
危険はあるが、四人は効率を優先してバラバラに探索を開始した。
とにかく早く情報が欲しかった。
それから3時間後、四人は再度同じ場所に集合して情報を持ち寄った。
「この付近には全く何もない。あのクソ女神、いったいこんな所に俺らを送り込んで何をさせようってんだ?」
「俺の方も全く収穫無しだ。」
「俺はあちらの高台から木に登って周囲を見たが、あっちの方に川があるみたいだ。川の近くなら何か集落位はあるかもしれん。」
レギンの言葉に三人は「おお」と声を上げて喜んだ。
川があれば水も確保できるし、動物達も水を飲みにくるはずなので食料確保もやりやすいはずだ。
そして最後の報告に三人は驚愕した。
「僕の方も何も見つからなかった。だけどそんなことより、どうやらここでは魔法が使えないみたいだ。」
「そんなバカな!魔法が使えないなんてあるのか!?」
ライオネルは試しに身体強化の魔法を使い、全く何も起こらない事にさらに驚いた。
「もしかして、あの女神の呪いか?」
ガーランドがボソリと言った。
四人は顔を見合わせる。
「そ、そんななぜ!?僕は魔法が使えなくて危うく大蛇に殺されかけたんだぞ?防壁魔法も出せないし小指程の火も出せない!僕は魔導士なのに全くどうしてくれるんだ!!」
誰もどうしようも無いのは明白だった。
無事だったことを神に感謝すべきだろう。いや、最早この世界で神は信用できない。己の幸運に感謝すべきだ。
「と、とにかく状況をまとめよう。まずこの世界では魔法が使えない。あるいは俺たちは呪いを受けて魔法が使えない。そしてこの周囲には何もない。森だけだ。あとは遠くに川がある。」
ライオネルの言葉に他の三人も頷いた。
ライオネルが続ける。
「一先ず川に出よう。俺たちには水が必要だ。」
ライオネルに続き、他の三人も立ち上がり、四人は川を目指して歩き出した。
それから2日が経った。全く慣れない土地での探索活動は苦しいものだった。
川に出て水を補給しながら下流へと向かって進んでいた。
食料は森で採れる木の実そして川魚と稀に遭遇する野生の獣だった。
何より困ったのは火が簡単に起こせない事だった。
前の世界では魔法でちょっと灯せばよかっただけなのにこちらではそれができない。
レギンが斥候として学んだ魔法を使わずに野営を営む知識を持っていなければ捕らえた獲物は全て生で食べなければいけなかっただろう。
それがこの世界でどれほど危険であるかを彼らは知らなかったが。
森での野営は非常に神経をすり減らすものだった。
何せ警戒系の魔法陣は使えないので一晩中見張りが必要なのだ。
彼らがどれだけ無意識に魔法を使っていたのかが良く分かる経験だった。
そしてこの世界に送られて4日目、少し遠くに煙が複数本、立ち昇るのが見えた。
「煙だ!人がいるかもしれないぞ!」
「た、助かった。」
「気を抜くな。もう少しいったら俺が先に行って偵察してくる。」
「僕はもう休めるならどんな人たちだって構わないよ。盗賊の集落だって歓迎だ。」
ルーメンはかなり顔色が悪く疲弊していた。
彼は魔導士なので体力もなく、魔法も全く使えなくなったため、かなり精神的に参っていた。そのため、彼はガーランドに背負われていた。
それから日の沈む前に彼らは集落近くで野営を始めた。
ルーメンの調子は戻らず、魔法の使えない彼らには何もできる事は無かった。
手持ちの薬草はいくらか彼の苦しみを和らげていたが、その苦しみを消し去る程では無かった。
「レギン、済まないが斥候を頼む。」
「ああ、任せてくれ。できる限りの情報を取ってくる。」
そう言うとレギンは煙の立ち上る場所へと進んでいった。
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