第45話 俺、初のユニットトレードをする
俺が家に帰るとアマテラスが待ってましたとばかりに声をかけてくる。
なんか以前と比べてもかなりはつらつとしてる気がする。
見てるこっちもウキウキしてくるな。
「国之さま~!遂に村ができたよ!」
本当だった。俺のワールドはなんだかかなり人間的な生活に進歩していた。
テントみたいな家が複数件立ち、麦みたいなのが生えた畑があった。
いや、なんかまとまって生えてるだけで畑じゃないかもしれないが。そこで人間が石のナイフで収穫していた。
「これ、畑か?」
俺が聞くとアマテラスが教えてくれた。
「これねぇ、カメに貯めてたやつから芽が出てね、最初はそのまま食べてたんだけど、それを土に埋めてみた人がいてね、それから育てる様になったんだよね。でもこれ最初は信じてもらえてなかったよ。」
アマテラスはなにか思い出した様に笑った。
「そうなんだな。」
俺は何故信じてもらえなかったのかよく解らなかったが、アマテラスが面白そうなので一緒に笑っておいた。
一体どうやって穀物が生えて来たと思ってたんだろうか・・・謎だ。
まぁ順調にワールドが育ってるのは嬉しい報告だ。
ならば俺は次のフェーズに移らなければならない!
「アマテラス、実は人間が生まれた事でトレードができる様になった。」
「あ、そうだね!トレードできるね!」
アマテラスも嬉しそうに返事をする。
俺も初トレードだ、ワクワクするな。
「でだ、マスターがトレードしてくれる事になったんで今から連絡して今日やろうと思うんだけど、できるか?」
「もちろんだよ!あっちの接続IDさえ教えてもらえればトレードはできる様になるよ。あとはお互いトレードするユニットを選ばないとだね!」
そうだった。
ユニットってどう選ぶんだ?
マスターの要望を聞いてなかったわ。
まぁ接続の際に聞いておこう。
俺が端末でマスターに連絡をするとマスターはすぐに出てくれた。
「あら常之ちゃん。もしかして寂しくなっちゃったの?」
ピッ!
俺は通信を切った。
すぐにマスターからのコールが来た。
「んもう、いけずね!」
「いや、誰だって切りますから。今のは切っていいやつですから。」
俺は冷静に返しておいた。
「まぁそんなことはいいです。トレードお願いしたいんですけど、マスターにはどんなユニット渡せばいいんですか?」
「ふぅ。面白味の無い人間はモテないわよ。」
「放っておいてください!」
「仕方ないわね。因みに今そっちのワールドってどんな感じなの?ちょっと見せてもらえる?」
俺はマスターとID交換をしてアマテラスに相互リンクをしてもらう。さらに共有をコミットしてこちらの画面をあちらでも見れる様にした。
しばらくこちらの様子を見ていたのかしばし沈黙の時間があった。
「マナがないのに本当に人間が生まれたのね。でも、かなりゴツイ感じの人が多いわね。」
俺もそう思うわ。まぁ昨日まで猿だったわけだしね。仕方ないよね。
「そしたら、10歳~15歳の男の子で頼むわ。」
「え?マスターもしかして・・・。」
あ、口に出しちゃった。まあ途中で止めたしセーフでしょ。
「バカな事言うんじゃ無いわよ。常之ちゃんのワールドは魔法使えないんだしせめて成長ポテンシャルがあるユニットにしたいって話よ!」
全然通じてた。
「マスターの日ごろの動向からつい。」
「それについてはまたこっち来たときに詳しく聞かせてもらうわ。たっぷりとね。」
そこにアマテラスが割り込んできた。
「国之さま~、ちょうどいい子がいたよ。海で流されて漂流してるし、ちょっと助かりそうもないから。」
「あら、アマテラスちゃんいい仕事するじゃない。じゃ、まずはその子で頼むわ。」
モニターには二人の男の子が船で流されて漂流していた。既に何日か経った後なのかかなり疲弊した様子だ。
「え?なんか大丈夫なんですか?」
「うん、トレードはできるだけワールドに影響の無い状態のユニットでやるのが基本だから。それにトレード後のワールドに行ったら健康状態は一度完全に回復するよ。」
「そう言う事よ。」
確かに突然村の中で消えたら他の人は驚くわな。
という事はマスターの方のパーティーも何等か消えても大丈夫な状況にあるって事か。冷静に考えると、消えても大丈夫な状況とか怖いな。
「じゃ、トレード開始しちゃうね!シモン君よろしくね~。」
シモン君とはマスターのエージェントだ。君付けで呼ぶようなキャラじゃない気もするが、アマテラスなら許されるだろう。
「気安く呼ぶな。」
突然少しハスキーな声が聞こえてくる。多分シモンだろう。
「え~、じゃ、シモン君、よろしくやってくれたまえ。」
アマテラスがなんかちょっと太い声で言い直した。
多分そこじゃないと思うがナイスガッツだ。
「っち、いつかコロス。」
シモンの荒んだセリフにアマテラスが「うわ~、こわ~」とか言いながら操作を続ける。うん、全然気にしてない口調だな。
「よし、オッケー!」
最後にアマテラスがなんか赤いボタンを押すとモニターにトレーディング中のメッセージが表示される。
そして突然アマテラスの周りに和装の屋敷の様な空間が現れ、最奥の一段高い所にアマテラスが座っていた。なんか偉そうだ。そしてその前に4人の男が立っていた。
二人は皮鎧を身に纏い、腰に剣をさしていた。もう一人はローブを纏った魔導士っぽい男で、最後の一人は軽装の探検持ちだった。
「あ、こっちも成功したわ。じゃ取り込みするからまたねん。」
端末からマスターの声が聞こえて通信が切れた。
え?ちょっ、自分トレードって初めてなんだけどどうすりゃいいの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます