第39話 俺、増田を餌にイベ書を釣る
次の日、俺はまた学校を休んで喫茶『創造してごらんなさい』に行っていた。
天野さんに会いたくないからではない。
今日は増田が来るのでそれを餌にマスターからイベ書を巻き上げようと目論んでいるのだ。
まあ、マスターには申し訳ないが何せイベ書が無い。
今の勢いを保つためにできるだけイベ書が欲しいのだ。
因みに今朝起きた時あの猿達が複数の種族に増えていた。
アマテラスの曰くもしかするとエルフとかドワーフになるのかもしれないと。
ヤツらはそれぞれ住む場所が違うらしい。
森の中で主に果実を主食にして生活する種、森とサバンナの境界付近で生活する種、洞窟を作ってそこを住処とする種。
俺の見立てではきっとエルフ、人間、ドワーフにそれぞれ進化するのに違いない。
人間だけでも嬉しいのに一気に種族が増えるとか幸せが爆発しそうだ。
俺は創造してごらんなさいに到着して喜びの扉を押し開けた。
カランカラン
マスターの顔を見てちょっと現実に引き戻された。
「あら常之ちゃん、なんか私に会うのが待ちきれなかったって顔してるわね。」
うん、平常心に戻ったわ。
「いやマスター、そういうのいいから。」
それから増田が来る話をすると、マスターは大喜びだった。
因みにコーヒーサービスも難なく許可された。
自腹にならなくて良かった。
「ところでマスター、またイベ書もらえませんか?」
「え?あんなにあげたのに?」
流石のマスターもちょっと唖然としている。
「もらったイベ書全部突っ込んだら、どうにか人間が生まれそうなんですけど、できれば今の勢いをキープしたいというか、継続的に変化させておきたいというか。」
「ちょっと話が見えないわ。」
俺は今までやった事と人に近い猿が生まれるまでの経緯を説明した。
「今種族も分かれてるし、上手くするとエルフやドワーフも生まれるのかもしれないと思うと居ても立っても居られなくて!増田をもっと連れてくるんでお願いします!!」
ちょっと考える様にしていたマスターも増田の名前を聞いて少しだけ心が緩んだ様だ。頑張れ俺!あと一押し!
「とは言え先日あげたのが私の余り全部だし、他のイベ書は使うのよねぇ。」
「人間生まれたら返しますんでこの通り!!」
俺はパンパンと
俺の真摯なお願いにマスターは心が打たれた様だ。
「わかったわ、常之ちゃんのお願いなら仕方ないわね。」
そう言うと奥に引っ込んでからまた箱を持って出て来た。
「すぐに使わなそうなのとかダブりをいくつか見繕ってあげるわ。」
マスターは素早くイベ書をえり分けて俺の前に置いてくれた。
それは30個程のイベ書だった。
「これ結構使う奴だから毎月返済で買い取りって事にしておくからね!」
マスターは何かある度にイベ書を使ってパーティーや後続を鍛えてるらしいので、このセレクトはマスターの言う通り結構使えるイベ書の集まりなんだろう。
流石はマスター。俺は90度に曲がる程深々と頭を下げた。
「ありがとうございます!」
この恩は絶対に返す!
お金なんていいって言われる位増田を連れて来てやる!
俺はチラリといくつかのイベ書を見てからそれらをしまいアルバイトを始めた。
その中に
猿とは言えきっと勇者ぐらいいるに違いない。しかし猿の世界を揺るがすとか一体何が起こるんだろうか。
それからしばらくして増田がやってきた。
「お、いらっしゃーい。そこ座んなよ。」
俺が慣れた感じでテーブルの一つを指さす。
きっとエージェントをあまり見せたくないだろうから角のテーブルだ。
増田は慣れない感じで「おう」とだけ言って指さされた席に座った。
「あら、
因みに焙琉というのは増田の下の名前だ。俺が教えておいた。
「あ、増田です。色々と教えて欲しくて来ました。」
増田はワールドをセットしながら挨拶を返した。
心なしか俺見る目線が鋭い。
「あら、そうなのね!しっかり手取足取り教えてあ・げ・ちゃ・う!」
そう言うが早いかマスターは既に増田の隣の席に座っていた。
増田はあからさまに体を引いた姿勢で引きつった笑顔を返していた。
増田、試練を乗り越えて立派な漢になるんだぞ。
俺は心を込めて淹れたコーヒーを出してやった。
その時、増田の
増田の欲望が入りすぎてこれでもかって位巨乳とくびれの比率が凄い。
ん?あれは・・・猫耳か?
一瞬、髪型の一部だと思ったがどうやらケモ属性入りらしい。
増田、属性入れすぎだろ・・・俺はケモ耳が付くなら髪型はもう少し大人しい方がいいと思うぞ。
で、服装なんだが・・・メイドだ。
思ったより普通なんだが、むしろ立派なツインドリルとの落差が違和感しかない。
身体全身覆う様に長袖とタイツ。肩が大きめの三角形で何やらイカツイ感じだ。
増田、きっとこれ人前に出すために買い換えたな。
「ちょっとちょっとマスター!私というものがありながらこの人は誰なのです!?」
増田のエージェントはそう言いながら『うちのマスター』を指さした。
うーむ、増田、呼ばせ方も趣味が入ってるな。
しかも『私というものがありながら』っていったい日ごろどんな会話を交わしてるんだ?
「あら~、可愛い子猫ちゃんね。焙琉ちゃんはね、バーチャルはあなた、リアルは私って事なのよん。これからもよろしくね♡」
返しが大人だ。流石だぜマイマスター!
なんか甲高い声が聞こえてきた。
さて、仕事しますかね。
気付けば木花さんも仕事に入って楽しそうに見ていた。
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