第36話 俺、増田と和解?する

朝、俺が起きるとアマテラスが興奮気味であった。

「見て!見て見て見て見て!!」

鼻息が見えそうな勢いだ。


俺がアマテラスの指さすモニターを見るとそこには手に手に木の棒を持った猿たちが、かなり前かがみだが二本足で平地を歩いている姿が映し出されていた。


「ふんごおおおぉぉ!!」

思わず変な声が漏れた。


10匹以上の集団でトラみたいな生物から狩った獲物を横取りしていた。

彼らは奪い取った獲物を5匹で引きずりながら運び、その周りで残りの猿が周囲を警戒しながらどこかへ帰っていく所であった。


「こいつらで行けそうなのか!?」

俺が興奮してアマテラスに問いかけると彼女はちょっと自信なさげに答えた。

「ちょ、ちょっと私にも判んないけど、でも国之さまの狙い通りになってるよね。」

まぁ確かにどうなるかなんで判らないよな。


しかし、こいつら昨日までちょっと枝使う程度の猿だったのになんだこの進歩は!

俺は使ったイベ書を思い出す。

UCアンコモン『アイテム熟練』あたりがなんかいい仕事したんだろうか?

あるいはSRスーバーレア『偉大なるモノリス』が効果高かったんだろうか?

あの木の棒がRレア『魔剣の発明』の魔剣って事はないよな・・・。


結局このイベ書というのは効果がかなり曖昧で解りにくい。

原因が辿れる様になってればいいのに。

いや、俺のワールドがもっとノーマルならもう少し効果も解りやすいのかもだけど。


俺はステータス画面を表示してもらう。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

名前:―

職業:―

レベル:38

推定パワー:1,452

生命力:415

マナ:34

攻撃力:202(木の棒)

防御力:113(木の棒)

魔力:21

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ステータスは殆ど変わらないんだな。

でも装備が出来てるのが俺的には感動的な事だった。

きっと魔剣を装備したら数値的にはもっと上がるのに違いない。


俺は魔剣を装備する猿を想像して少し笑ってしまった。

そんな俺をアマテラスも嬉しそうに見ている。


「アマテラスありがとう!なんか希望が見えて来たわ。今日の学校帰りにリアルガチャをぶん回してくるぜ!」

「うん、お礼を言うのは私の方だよ。国之さま、諦めないでくれてありがとう!」

俺は思わずアマテラスを抱きしめたかったが、小さくて無理なので頭をなでるだけにした。


「よし、このまま残りのイベ書も全部投入してくれ。」

「ラジャッだよ!」

アマテラスは返事をするが早いか早速どんどんとイベ書を投げ込み始めた。

もはやそれはイベ書の闇鍋であった。


俺はCコモン『マスコットとの出会い』を持って上機嫌で学校へと向かった。

が、学校が近づくにつれて俺の気持ちは徐々に沈んでいった。


あ~どうしよ。

なんて話かければいいんだ?

実際に話をするところを想像するとかなりプレッシャーがかかってきた。


なんて言うだろ?

顔合わせたら嫌な顔されたらかなりショックだ。

いきなり走り去られたら・・・死にたい。


どうか今日は天野さんに会いません様に。

俺は会わなきゃいけない気持ちと会いたくない気持ちにじわじわと沈められながら学校へと入っていった。


俺が教室に入ると前の席の方に早速天野さんを見つけた。

ヤバい!いやヤバくはない!が、まだ心の準備ができていない。

俺は後方左側に増田を見つけ隠れる様にそちらへと移動した。


「よう。」

俺はいつもの様に増田に挨拶をして天野さんから影になる様に奥側の席に座る。

増田も俺の顔を見ると眼鏡をクイッと上げて応えた。

「誰だお前?」


ちょっ、おい!俺だよ俺、とでも言えばいいのか?

というか、もしかして俺のエージェントがまともだった件でこの態度なのか?

「おい、流石にそれはひどいぞ?」

「ひどいと言われてもな、俺はお前をしらん。」


こ、こいつ、こんな事で頑なとか。

「女の子にモテるイベ書あげるから機嫌なおせよ。」

「ふむ、話くらいは聞こうじゃないか。」


・・・友達としてどうなんだこいつは。

まあいい、深くは考えない様にしよう。

それに俺にはこいつが必要なんだ。


「これだ、このCコモン『マスコットとの出会い』はリアルガチャでしか出ない上に女子の間で大人気らしいぞ。」

俺は増田にCコモン『マスコットとの出会い』を手渡すと、増田も「ま、いいだろう」とか言いながらそれを鞄にしまった。


俺は更に増田に提案を出しておく。

「実はほかにも『創造してごらんなさい』のマスターからたくさんイベ書をもらったんだわ。」

増田の顔が一瞬で遠くなるので俺は続ける。

「SRも入ってたからな、増田も通うと色々ともらえるかもしれないぞ。」


俺は増田がSRという言葉に反応したのを見逃さなかった。

「俺またあそこでバイト始めたから一杯くらいはタダにできるぞ?それにあの人ランク1万代のかなりの上位者だし、色々と聞けるのが良いんだよな―。」

追加のメリットを並べてみる。


増田は今1000万以内を目指している所だ。そんな増田にとって1万代はかなり神に近い存在である。

おお、かなり悩んでる。あと一押しか?


「マスターはあんな態度だが手を出す事は絶対ないから安心しろ。面倒見もいいからかなり色々と教えてくれるぞ。」

「そうか、ちょっと考えとくわ。」


増田が徐々に妥協し始めた。

これで俺はマスターに恩返しができそうだ。

まぁ実際手を出されることはないから安心なんだけど。


そうこうするうちに授業が始まった。

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