第30話 俺、アマテラスの話を聞く
アマテラスは踊りに釣られて出て来た。
なに?盛り上がってて気になったの?
まさかマスターが脱いだからじゃないと思うんだが・・・。
「アマテラス!」
俺が叫ぶと、アマテラスはびっくりした顔になって引っ込んでしまった。
「アマテラスちゃん、もう見つかっちゃったんだし、出てらっしゃいよ。」
マスターがモニターに声を掛けると恥ずかしそうにアマテラスが出て来た。
素直だな。
「突然なんか出てこなくなるし、ビックリしたぞ。怒らないから何があったのか教えてくれ。」
「本当に?」
アマテラスがちょっと心配気な上目遣いで見てくる。
そんなうるんだ顔で見られるとドキッとするぞ。
「も、もちろんだ。」
コミュ障な俺はつい目を逸らしながら言った。
そこでアマテラスは話し始めた。
マスターと木花さんは経緯を知っているのでどちらかというと見世物の観客気分と言った雰囲気で向いのソファーに座っている。
「国之さま~、この世界、人型種が生まれないみたいなんだよ。だから私、国之さまに申し訳なくて。」
「あ、すまんアマテラス。その話は既に聞いたわ。その話はまた帰ってから相談しよう。それより三人に今までの事、話したんだよな?」
そう、そこについても気にはなっているんだが、それ以上に帰った三人の状況が知りたかった。
「あ、そっちね。そっちはね~。」
俺のセリフを聞いてアマテラスは若干明るくなった口調で話し始めた。
で、アマテラスは眼鏡の友達から乞われて今までの経緯を話したらしい。
増田の事だな。
「あのね、マナ入れ忘れた時の話をしたらみんな大笑いしてたよ。確かにあの時の国之さまの顔こーんなだったもんね。」
そういうとアマテラスは口を三角形に開けて劇画調にショックを受けた顔をしてみせた。
っていうか、可愛い顔してそういう表情をするもんじゃないぞ。
もしかしてその表情も含めて三人に笑われたんじゃない?
笑われる事は想定はしていたが俺はちょっと辛くなって目を伏せた。
学校行った時に三人に会うのが恥ずかし。
「それでね、自己紹介してる時に私の名前が国之さまの好きな人からもらったって話したら、女の子が顔を真っ赤にして帰っちゃったんだよね~。」
おい!?マジか!?
俺そんな話したか?
いや、冷静に考えたらこれ名前だけでも結構バレバレなのでは?
いやいや、それ以前に知られちゃったのか?
このタイミングで知られるのってどうなの?
どう考えても最悪じゃない?
だって、天野さんが傷ついて渦目さんが怒ってるときだぜ?
俺は顔を覆って屈みこんだ。
明日からどうやって生きて行けばいいんだ?
「でね~、眼鏡君からこの服って昨日買ったのって聞かれたから、最初からこれだよって教えてあげたら、眼鏡クイッって上げて帰っちゃったんだよね~。」
は?いや、それ帰る理由になるの?
あれか?同士だと思ってたのに裏切られたとかそんな話か?
それにしてもこんな集まってる時にする話か?
もしやあいつ、俺を貶めようと・・・
俺はこめかみを押さえて考え込んだ。
明日からどんな顔で会えばいいんだ?
「それでね、生物が生まれたと思ったらドラゴンしか居なかったってとこまで話したら、『なるほど、話は分かった』って言ってもう一人の子もこうやって腕組みして考え事しながら帰っていっちゃたんだよ。」
そう言ってアマテラスは腕を組んでうつむきがちに難しい顔をして歩いて見せた。
そうか、渦目さんは納得したのか。したんだよな?
一先ず渦目さんの怒りが収まったなら当初の目的は達成したって事でいいよな?
あれ?これ経緯を知ってもらった時点で解決してるよね?
俺
あの時のアマテラスの顔が思い出されて罪悪感が俺を襲ってきた。
いや、でもアマテラスが出てこなきゃごまかせたはずで、やっぱ使ったのは使ったのであってたはずだよな?でもアマテラスの性格を考えるとどうせバレてた可能性も高い気がするし、いや実際バレてるし。
「最後に国之さんが『もう、ダメだ~。好きな人にバレたら死ぬ~』って
え?そんな言い方した?
それを聞いて俺が顔を上げると向かいの二人が笑いを堪えている。
いや、堪える気なんて絶対ない。
二人はその時の状況を思い出しただけだ。またお腹を抱えて笑い始めた。
木花さんなんてマスターの肩を叩いて笑っている。
「俺、死にたい。」
俺は両手で顔を覆って泣いていた。
二人は結構な時間笑っていたが、どうにか落ち着いたらしい。
「いやー、国立さんってあんま喋んないし、もっとクールな人かと思ってましたよ。これが噂のギャップ萌えってやつですね!」
俺、コミュ障なだけだから。
それに木花さん全然萌えてないよね?めっちゃ笑ってたし。
それギャップウケじゃない?
「常之ちゃん愛の為に世界を壊すなんてステキよ~。でもおかげで好きな人に知ってもらえて良かったわね!」
いや、なんか壮大なラブロマンスみたいになってるし。
しかも愛の為に世界を壊すとかどんだけイカレてるんだ?コワいわ!
というかそうだった!俺は天野さんに知られてはいけない事を知られてしまった!!
いや、知られていけないというより知られてはいけないタイミングで知られてしまった・・・これって終わってない?
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