第29話 俺、なぜか避けられる

俺はモニターに書かれている本日終了をお知らせする文字を見て呆然としていた。


なに?どういう事だ?

アマテラスって寝たり休んだりって必要なかったよな?

今までそんな状態見た事無いし、しかも都合によりってあるし。


「おい、アマテラス、出てきてくれ。一体何が起きたんだ!?」

モニターからは全く返事がない。


そこにマスターと木花さんが入ってくる。

「あちゃー、見ちゃったんですね。」

「まぁ見るわよね。」


いや、みちゃったって俺のなんだけど。

ていうか家帰ったら絶対みるじゃん。

むしろ君たち知ってて渡してたわけ?


「いや、もうこれ俺的に収拾付かない事態なんだけど、頼むから教えてくれ。」

「そうね~。どうせいつかは知るんだし、咲夜ちゃん教えてあげなさいよ。」

あまりに悲痛な俺の顔を見てマスターが木花さんに言った。


「え?やですよ。」

なにその即答?


「いや、さっき聞いたことには答えるっていったじゃん?」

俺の抗議の言葉に木花さんは腕組をして向いのソファーに座った。

「ふむ、まぁいいでしょう。質問をしてみ給え。」

なんか木花さんの口調が変わったんだけどどうした?


「一先ず俺が気絶してから何かあったって事だよな。」

俺の質問に彼女は「うむ」と頷く。


「そんで、俺に関わる話だってことだよな?」

同じく「うむ」と頷く。


「誰かが俺のワールドを勝手に操作したとか?」

そこで彼女は無言で首を横に振った。


俺はモニターを見る。

アマテラスが出てこない、これがヒントか。


「アマテラスが今までの事を話したとか?」

また「うむ」と頷く。


「その結果三人が怒っちゃって、アマテラスは俺が怒ると思って引っ込んだ?」

木花さんはちょっと口を押さえてプッと噴き出してから首を横に振った。


え?

俺はマスターの顔を見ると、マスターも口を押さえて笑っている。

いや、わかんねーよ!全く何が起こったのかわかんねーよ!!


「そうね、アマテラスちゃんが出てこなくなっちゃった件だけ話して上げるわ。これは重大な事だから。」

俺の抗議の目線にマスターはそう言ってアマテラスが隠れた原因を教えてくれた。


本来ワールドにマナがあれば惑星ができてから直ぐにマナ効果で精霊と神々が生まれ、そこから人やエルフやドワーフ、それに魔獣なんかを作り始めるらしい。


え、人ってそんな生まれ方するんだ?

まぁ確かにどうやって生まれるのか全く想像できないけど。

俺はちょっと自分の身体を見回してみる。


しかし、俺のワールドにはマナがない。

普通であればマナがないワールドに生物が生まれる事自体考えられない事らしい。

なのでそれ自体かなり凄い事らしいのだが。


そんな例外事象はあるにしても俺の世界にはマナが無いために神々がいない。

つまり人やエルフなんかを作る存在がいないのである。

なので俺の求める種は生まれないだろうという事だった。


俺はその話を聞いてかなり沈んでいた。

俺の世界にエルフやドワーフどころか人すらも生まれない。

彼らは神々がいなければ創造されなかったのか。


そして、その気持ちはアマテラスにとっても同じだった様で。

それを聞いてアマテラスは引っ込んでしまったらしい。


だが何にせよ、俺はアマテラスと相談しなければいけない。

「おい、アマテラス、出てきてくれ。」

俺の呼びかけはむなしく全く反応がない。


「マスター、俺どうすれば?」

すがる様な顔に流石のマスターも木花さんも考え込む。


ちょっとしてからマスターは俺に確認をしてきた。

「ん~、あなたの子の性格ってどういう設定なの?」

「活発、天然、前向き、・・・あと甘え上手です。」

俺は最後の甘え上手を伝えるべきかちょっと迷った。

なんか、な?解るだろ?


でも色々と知ってるマスターにはちゃんと全部話した方がいいと思って俺はちょっとテレながら伝えた。


「あら、あまえじょ~ず♥」

「はい、国立さんの好み頂きました~。」

頼む木花さん、良いタイミングで合いの手入れないで。

俺はなんか恥ずかしくて両手で顔を覆ってしまった。


「成程ねぇ。」

なんか木花さんが腕を組んだまま凄い納得顔で首を縦に振っている。

「え?なに?何が成程なの?」

俺がそう聞いた時、いきなり部屋にアップテンポな曲がかかった。


俺と木花さんが顔を上げると、マスターが端末の操作パネルを操作していた。

そして立ち上がると唐突に言った。

「さ、二人とも!踊るのよ!!」


「「え?」」


マスターは俺達を立たせてソファーと世界創造の乗った机を端に寄せてスペースを作るとモニターをこちらに向けた。

「さあさあ、お二人さんどうしたの?踊りなさい。」


いや、突然踊るとか言われても。

俺が木花さんを見ると木花さんも流石にあっけに取られていた。


「アマテラスちゃんを呼び出したいんでしょ?ダンス!レッツダンス!!」

マスターは凄い激しく踊り始めている。

ていうか、なんかめっちゃ上手い気がするんだが、この人。


とか思ってたら床を滑る様に俺たちの後ろに動いて来て俺と木花さんのケツをバシンと叩いた。


「「セクハラですよ!」」

二人はハモってマスターを睨む。


マスターは全く聞いてない様に踊っている。

足の動きがどう考えても素人じゃない。


この全く話を聞かない時のマスターは俺たちが言われた通りにしないと帰してさえくれないやつだ。

なんか仕事の時も変な所で厳しかった事を思い出す。


「「はあ。」」

またもやハモってため息をつく。

俺と木花さんは顔を見合わせ、お互いの気苦労を察する。


もうヤケだ!

お互いに諦めた俺と木花さんも踊り始める。


俺は子供の学校行事で踊った事しかない。なので見様見真似と言うか適当にリズムに合わせて体を動かす。


木花さんを見ると、多分彼女も似たような感じだ。

ただ一人、マスターだけが全く素人っぽさの無いダンスを披露している。


なにこの空間?

てか踊りとアマテラスにどんな関係が?


マスターが「アオゥ」とか「ッホーゥ」って雄叫びを上げるのが面白くて地味にテンションを上げてくる。

なんかもう訳わからないのに楽しくなってくる。

木花さんも楽しそうに踊ってる気がする。


三曲目に入ったところでマスターがベストをソファーに放る。


って、何やってるんだこの人!?

シャツの前を引きちぎって脱ぎ始めたんだけど!?

「わわ!マスター!脱ぎ始めないでくださいよ!!」


慌てて止めに入る俺。

それを見て木花さんがキャハハと笑い始める。

いや、笑ってないで止めて?

てかなんで同性の俺が恥ずかしがって木花さんが笑ってるわけ?


その瞬間マスターがモニターを両手で指さして言った。

「アマテラスちゃん、お・か・え・り♥」


その言葉に俺がモニターを見ると、そこには端からちょっとだけ顔をのぞかせていたアマテラスがいた。

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