第26話 俺、決戦?に向かう

俺のワールドからドラゴンは全ていなくなっていた。

代わりに俺のワールドではドラゴン達とは比べものにならない位の小動物が生き残り、細々と生活していた。


それから俺はシャワーを浴びて顔を整えてから学校に行く準備をする。

朝食を食べている時にふとアマテラスの顔を思い出す。

その度に胸を差す様な何とも言えない気持ちが襲って来る。


いや、きっとあいつなら帰ってきたらまた元気になっているに違いない。

何せ天然で前向きなんだからな。

そんな期待とも希望ともつかない事を考えながら学校に向かう。


「よう国立、今日創造してごらんなさいって喫茶店で集合なんだろ?」

学校では耳ざとい増田が待ち受けていた。

こいつ、俺と同じく友達少ないと思ってたのに!なんだこの情報の速さは!?


「来るならお前も自分のワールド持ってこいよ?」

俺は牽制球を投げながらどれくらい情報が周ってるのか探りを入れる。


「増田は一体誰から聞いたんだ?てかどれくらいの人がそれ知ってるんだ?」

「安心しろ、俺が渦目さんから聞いた話だから。」

俺は増田が渦目さんと仲が良い事を全く想像しておらず暫くその顔をまじまじと見てしまった。


「なんだよ?俺が渦目さんと話しちゃいけないのか?」

「いや、そういうわけじゃないんだが。てかあと誰がそれ知ってるんだ?」


そこで増田が得意気にメガネをクイッと持ち上げる。

「安心しろ、俺がしっかりと渦目さんにストップをかけておいてやったぞ。」

「マジか増田!心の友よ!!」

「で?結局のところ国之常立ってお前なわけ?」


増田よ、お前もか。


「違うから!俺のはなんでか全然発展してないだけだから!」

「ま、それもワールド見れば判るだろ。何せ魔法使えなくてドラゴンしかいないんじゃな。」


「ドラゴンなんて居ないから!って、お前来る気かよ!?」

「ふむ、他の皆さんにも教えてあげようかな。」

「是非いらしてください!!」


俺はこうべを垂れてお願いする。

これで羽部八はべやに知られた日には・・・いや、あいつは別に俺のワールドなんか興味ないか。

だが、俺のワールドを見られる人はできるだけ少なくしたい、てか増田にも知られたくなかったのに・・・。


俺は増田に話をした渦目さんを恨んだ。

まぁ口止めしてなかったし逆恨みなのは自覚あるんだけどね・・・。



「アマテラスただいま。」

「国之さまお帰り~。」


俺が一度家に帰るとアマテラスが少しだけ元気になっていた。

「国之さま~、見て見て!なんかすっごいモフモフワールドになったんですよ!」

俺が目をやるとなんか世界が動物園みたいになっていた。


「最初はネズミみたいのしかいなかったのに、段々種類が増えて行ってこんなになったんですよ!」

「おお、マジか。でも今までのドラゴンとは違って小さいな。」

「ね~。あとデュエルに耐えられるのはまだ生まれてないみたい。」


「そっか。」

おれはそれがなんでもないかの様に軽く返事をする。


それから俺は今までの事情と自分のワールドを他の人に見せる事を説明し、その間アマテラスが出てこない様に言いつける。

きっと増田もこうやって隠れてもらってたんだろうな。


「了解!じゃ、私は中から見てるね!」

「おう、じゃ、エナジーラインから外すぞ?」

「うん、一応内部バッテリーもあるから時間を早く進めなければ外でも5時間は持つよ。」


それは知らなかった。

一応持ち運びに対応してたんだな。


俺はアマテラスの指示に従って台座の操作をするとモニターが畳まれた。

それからコアセットの箱から型取りされたケースを取り出すと、箱を立てた状態で台座が置ける様にデコボコが付いていた。

そこに台座を置くと、その近くに巻物状態になったモニターも浮いて収まった。


更に取り出したケースの裏に布の帯が付いており、その両端を箱のへこみに入れると箱が吊り下げて運べる様になった。

なんのへこみかと思っていたらちゃんと使い道があったのか。


準備が終わると俺は箱に話しかける。

「おい、大丈夫そうか?」

「うん、真っ暗だけど、台座は安定してるから大丈夫だよ。」



俺はあまりケースを揺らさない様に持って『創造してごらんなさい』に向かった。


カランカラン


ドアの呼び鈴代わりのベルが鳴る。

店に入るとそこには既に天野さんと渦目さん、そして増田が待っていた。

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