第24話 俺、破滅の道に足を踏み入れたかもしれない
俺の予想通り、戦いはドラゴン達の圧勝だった。
だが、それ以上に俺は彼らの死に際にあっけに取られていた。
・・・なんかBLなパーティーだったな・・・。
「国之さま、お友達に勝てて良かったですね!」
「・・・おとも、だち・・・。」
その言葉に俺は今考えるべき事を思い出す。
そうだった!俺は知り合いに隠して来た自分のワールドを知られてしまう可能性に直面している!
もし今のが天野さんだとしたら・・・きっと俺だと思ってデュエルを申し込んで来たのに違いない。つまり俺はバッチリあのワールドを見られたって事だ。
誰だってあんな世界を見たら理由を知りたくなるだろう。
もしマナを入れ忘れて魔法の使えない世界とか知られたら、きっとクラスの笑いものだ。
いや、でも天野さんなら誰にも言わずにいてくれるかもしれない。
デュエルには勝ったんだ。
むしろ俺の強いパーティーに驚いてより仲良くなれる切っ掛けになるんじゃないか?
『どうやったらあんなに強いパーティーできるの?』とかね!
何せ心優しい天野さんだ。
おお、いいぞ。なんか希望が見えて来た。
俺が考えを巡らせているとアマテラスが話しかけてくる。
「国之さま~、これからどうする?今日はなぜか凄く対戦申し込みが多いよ。」
「は?」
「これもお友達?」
俺は画面に出してもらったデュエルの申し込みリストを見せてもらう。
・・・誰これ?
全く誰なのかも判らないアカウント名が30人程並んでいる。
「いや、全く思い当たる名前が無いな。」
「そうなんだ?てっきりお友達かと思ったよ。」
「そもそもこんなに友達いな、いや、いるな、こんくらいは普通にいるな~。」
なんてアマテラスに見栄張ってる場合じゃない。
どう考えても俺のアカウント拡散されてるだろ!?
天野さんが?いや、それにしては早いし、彼女はそんな事はしないはずだ。
きっと誰かが存在するアカウントを手当たり次第に探して、それを拡散したのに違いない。
うう、なんか色々とヤバい状況になってきてる気がする。
俺はもっと王道で有名になりたかったのに、こんなドラゴンしかいない様なワールドで有名になるとか。
「アマテラス!今日は止めだ。ちょっと考えたい事があるからまた明日にするわ。」
「ラジャ!」
アマテラスは敬礼して返事を返した。
何にしても明日は天野さんに探りを入れて今日の相手だったかを確認しないとな。
次の日、俺は学校に行くと、増田への挨拶もそこそこに天野さんに話をしにいく。
今日はどの授業に出てるんだろ?そんな事を考えて教室を出ようとすると、渦目さんがこちらに近づいてくる。
「国立、ちょっと顔貸してくれよ。」
「いや、俺ちょっとあま—」
俺が言い終わらない内に渦目さんが俺の肩を掴んですごんで来る。
「な?」
「はい。」
怖えぇ、なんかめっちゃ怖えーよ。
その整った顔で凄まれると変に怖いんだけど。
廊下に出るとそこには天野さんもいた。
ちょっとおどおどした感じで俺を見ている。
ここは何事もなさげに軽く挨拶でも交わすべきか?
とか考えていると渦目さんは天野さんにも顎で着いて来いと合図して歩いていく。
俺は結局挨拶も無しに天野さんと一緒に着いて行った。
無言。
終始無言だ。
そして、昨日で今日のこの展開。やっぱなんか昨日のデュエル関係あるよね?
つまりTELmeAmano《てるみあまの》は天野さんだったことほぼ確定って事か。
でもなんでこんなお通夜みたいな雰囲気なんだ?
魔法使えなくて卑怯とかそんな話か?
それともドラゴンのパーティーが卑怯って話か?
でもそんなのデュエルなんだから言いっ子無しだよな。
まてまて、あのワールドが俺のだって言ったらダメだろ。
昨日の俺のシナリオはどう考えても実現する雰囲気じゃねえわ。
しらばっくれろ、しらばっくれるんだ俺!!
考え事をしていると、渦目さんが一つの空き教室に入って行く。
それに続く俺と天野さん。
ドアが閉まると渦目さんがふり返り、腕を組んでこちらを睨みつける。
「渦目さん、いったいこれって・・・。」
俺はさも訳分かりませんみたいな顔で話しかける。
「ご、ごめんね、国立くん。ちょっと私のせいで・・・」
隣で天野さんがつぶやく。
え?天野さんのせいなの?
ならば受けようじゃないか、その理不尽。
俺は決心を固めた。
「テル!こういうのははっきりと言っといた方がいいんだよ!」
うお、怖えぇ。俺の決心が揺らぐ。
「だから一体何が?」
「
そういやその話だった。俺は決心を無かった事にした。
「い、いや、俺じゃないぞ。昨日増田にも言われたが。」
「本当か?」
「ほ、ホント、ホント。」
渦目さんは凄い眼光で俺の顔を覗き込む様に顔を近づけてくる。
近い、顔が近いぞ!
本来は嬉しいはずのシチュエーションが全く嬉しくない!
あまりの威圧に俺は壁に背を沿わせ、さらに背伸びしていた。
「ウズウズ、やっぱ国立くんじゃなかったんだよ~。」
天野さん、やっぱ素直でいい子だ!
あ、でもそんな純粋な目で見ないで!?俺、罪悪感で死にそう!
「でもあんな名前、他に居るぅ?」
疑念の目のまま俺から離れる渦目さん。
その疑念はごもっとも。
なぜ俺は名前を中吉とかにしておかなかったのか、心の底から後悔する。
「一体何をそんなに怒ってるんだ?増田からなんか魔法が使えないワールドって聞いてるけど、なんかあったの?」
俺は思い出した様に理由を聞く。
しかも伝聞系を使って俺じゃないアピール!どやっ!?
「自分の胸に聞いてみたら?」
全く容疑者から外されてなかった。
いや、でも分かんないから!
俺が国之常立だとしても、いや俺なんだけど、笑われる事はあっても怒られる理由は分かんないから!
「名前が、ま、紛らわしかった、とか?」
「ちがう。」
だよねー。
しかも凄く声が冷たくて泣きそう。
「ウズウズ~。」
なんか天野さんが耐えかねて渦目さんに声をかける。
その声で渦目さんもようやく怒りで上がっていた肩の力を抜いた。
「ま、いいわ。」
俺はホッと胸をなでおろす。
「ごめんね、国立くん。」
天野さんがものすごくすまなそうに俺に謝ってきた。
あ、そんな純粋な目で謝らないで!?俺、罪悪感で死にそう!
「あの~渦目さん、結局怒ってた理由って?」
俺は天野さんのピュアな目線に耐え切れず渦目さんに話しかける。
「それがさ!その国之常立って奴がさ、かなりエグイ方法でテルのパーティーを惨殺したんだよ!ひどくない!?」
俺は凄くキョトンとした顔をしていた。
え?惨殺?エグイ方法で惨殺?
「でさ、今朝テルが私に泣いて話をしてきたのよ。」
「ウズウズ~、私が勝手に国立くんかと思ってデュエル申し込んでみただけで、あんまりだったから話しただけで、別に責めたいとかじゃないよ~。」
「な、なんかドラゴンなんでしょ?そりゃ人同士とは違うんじゃ—」
俺がいいわけじみた話をすると渦目さんがキレた。
「物事には限度ってのがあるでしょ!しかも最後の散り際を汚すとかサイテー!!」
それを聞いて思い出したのか天野さんもちょっと涙目になっていた。
俺も思い出した。自決した相手を蹂躙する様に加えて振り回してたドラゴン達を。
「それはひどいな!許せん!」
許せん!天野さん泣かすとか絶対許せん!!
「だろ!?絶対探し出す!」
え?なんか愚痴聞いてあげたら終われる話じゃないの?
渦目さん?創造主が何人いると思ってんの?10億だよ?
だからやめよ?
「だから、国立、お前も手伝え?」
「う、うん。」
あ~、やめて!何この展開!?
いやいや、落ち着け、手伝うったってなんもできないだろ。
適当に手伝ったふりして流そう。
「じゃ、まずは国立のワールド見せてもらうわ。」
「は?」
その時、俺は世界が止まった様に感じた。
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