第19話 俺、発展しないワールドに歯噛みする

魔法世界の戦いから三日、俺は今まで通り自分のワールドでの戦いで連戦連勝を続けていた。順位的にも他の創造主の幅が広いのか、あまり順位差なく相手を探せるのが助かっていた。


先日の300枚余りのイベ書は今のワールドに使えなそうなものを取り除いて全てアマテラスに渡してあった。そのほとんどがCコモンのイベ書だ。

アマテラスはそれらの内既に半分程を使い終わっていた。


そして時代も更に6千万年進んでいたが開拓レベルは相変わらずで、ドラゴン達も相変わらずの野生だった。


ただ、見た目はかなり変わって獰猛さが増していた。

うん、変わったというよりは別の種なのかもしれない。

正直目の前で見たらチビるレベルで見た目が怖くなった。


まず、色が薄い橙色に所々に黒いぶち模様が入っていて平均体長が12m程に一回り大きくなっていた。


そして頭がより大型化してどう見ても人を一飲みできそうなサイズになっている。相変わらず角とかは無いんだが頭には短いたてがみというか鶏冠とさかというかそんな感じのもんが付いていた。


そしてその見た目に合わせてなのかステータスも上がっていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

名前:―

職業:—

レベル:56

推定パワー:87,248

生命力:4,220

マナ:72

攻撃力:1,563

防御力:454

魔力:33

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


だが上位ランカーに比べれば些細な上昇だ。

何せ6千万年も経っているのに2倍にもなっていないのだ。

世界創造ワールドクリエイトを始めてからの日数を考えれば全く贅沢は言えないレベルなんだが、ワールドで進んだ年数を考えるとちょっと滅入る。


コツコツとイベの効果は出ている、と信じたい。だが、毎日アマテラスから何が起こったか報告を受けても、なんか期待できないものばっかりだった。


一日目

「国之さま~、見てみて!最近親子で狩りとか散歩する様になったんですよ!」

そう、期待していたUCアンコモン『後継の育成』だったんだが、なんか親が生まれた子供の面倒を見る様になっただけだった。


「ああ、微笑ましい光景だな。」

俺は期待外れのショックであまり抑揚のない返事をしてしまった。


「ですよね~。あ、見てください、一生懸命食べて可愛いですよ!!」

画面には子供ドラゴンが親が仕留めた獲物の赤々しい肉に食らいついて引きちぎっていた。おい、獲物のお腹掻っ捌かれてモザイクかかってんぞ。


二日目

「国之さま~!なんと!違う種族間の恋ですよ!」

それはアマテラスの気まぐれで使ったCコモン『種族を超えた恋』だった。

これ絶対に考えると想定された使い方と絶対違うよな。

きっとエルフと人間とか人間とエルフとかに使うやつだよな。


「ああ、ロマンチックな光景だな。」

俺は全くロマンを感じずあまり抑揚のない返事をしてしまった。


「ですよね~。あ、見てください、巣を作り始めましたよ!!」

画面には2体のドラゴンが仲良く草木を敷き詰めていた。

こっから先は見なくていいわ。寝よ。


三日目

「国之さま!子供ドラゴンが川に溺れてる!」

「マジか、なんか使えそうなイベ書はあるか!?」

アマテラスはあれでもない、これでもないと探していたが最後にC:『新技の閃き』を使った。


え?なに?もしかしてドラゴン泳ぎ始めるの?

ちょっと何が起こるのか見てると川から大木が流れてきた。


「あ!つかまったよ!頑張れ!ドラゴンちゃん頑張れ!」

アマテラスの応援の甲斐もあって?子供ドラゴンは木にがっしりとつかまった。


で?新技ってこれなのか?これが新技なのか!?

と思っていると子供ドラゴンは更に木の上に乗り始めた。


は?俺は自分の目を疑った。

「二本足でライド、だと!?」

そう、ドラゴンが流れる木の上でバランスを取りながらサーフィンしているのだ。

その顔は楽しんでいる、というよりは生き残りをかけた真剣な面持ちでやむにやまれずやっているという雰囲気であった。いや表情わからんけど。


最後にはバランスを取りながら、大木をどうにか岸に乗せて帰ってった。


「んなわけあるかぁぁ!?」

俺は素でツッコんだよね。素直なアマテラスは拍手してたわ。


因みにこの大技は川で大木が流れている機会がなくて二度と目にする事はなかった。


他にも


「聞いてくださいよ国之さま!今日、不倫されそうになってたドラゴンちゃんにUCアンコモン『秘密の発見』使ってどうにか破局を防いだんだよ!不倫はダメだよね~。」

おい、そんなのにUCイベ書使わないでくれ!


「圀之さま!新発見!新発見!なんとUC『強敵の出現』使った後でC『芽生える友情』使ったらドラゴンちゃんに仲間ができたんだよ!」

仲間?と思ってみたらなんかドラゴンの肩にデカい飛竜が乗ってた。


その飛竜は正にドラゴンの様な羽を持っていた。全身が深い紺色で色的には蝙蝠こうもりに近い気もする。ただ、頭は全部がくちばしの様で、頭には一本の角が生えていた。歯並びは凄いが顔が全然ドラゴン種じゃないな。


聞くと最初はテリトリーを廻って戦ってたらしいのだが、途中で『芽生える友情』を使ってみたら友達になったらしい。


特筆すべきはこの飛竜、パーティー戦に参加できたのだ。

上空からの援護はかなり強力だった。

しかし、悲しい事にその関係は一代限りだった。


とまぁイベントは色々とあったんだが、俺のワールドの進展は全くなかった。


それに加えて俺のワールドは地味にネットで話題になり始めていた。

魔法の使えない世界に加え、パーティーが大量のドラゴンの群れという事で都市伝説レベルの噂になったのだ。


『あれなんか特殊なダンジョンなのか?かなりエグイわ。しかもドラゴン10体以上とか、度肝を抜かれたわ。』

『あんな卑怯な設定聞いたことないんだが、なんかの不正じゃね?』

『俺も当たったが魔法が数回しか使えなくて惨敗したわ。』

『おいおい、そんなフィールド聞いたこと無いぞ?お前ら幻でも見たのか?』

『群れるドラゴンとかどう考えても低級雑魚だろ。上位種は群れないからな。』

『俺のパーティーは剣技だけで勝ったわ。』


心当たりのある書き込みから憶測、果てはデマの報告とかかなり情報は支離滅裂だが、徐々に書き込みは増えて来ていた。まぁ対戦も既に150回を超えてるし、あんなワールド、ネタにうってつけだわ。


唯一助かったのが名前が晒されてない事だ。

晒されたら誰も相手してくれなくなるだろうからな。


それだけはどうにか避けたい。

だがきっとそれは時間の問題だろう。


それまでにこの事態の打開策が見つからないと俺の世界創造ワールドクリエイトの夢は行き止まりだ。

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