第12話 俺、難局を乗り切る
うん、二人は変に悩んでる俺を差し置いてじゃんけんし始めたよね。
そもそも勝った方は何と交換してくれるつもりなんだ?
よく考えたらこれ俺のだし、いいトレードできる方と交換ってのが順当だよな?
いやだがしかし、そんなやり方で値を吊り上げさせても印象よくないか。
俺は結局成り行きに任せる事にした。というか既に決着はついており、勝利した渦目さんの喜びようはじゃんけんで『マスコットとの出会い』を手に入れたかの様だ。
俺、ちゃんとなんかもらえるんだよね?
というか天野さんの落ち込み具合も結構だな。
まぁマスコットは確かにパーティーに居ると嬉しいだろうけど、これ
「えっと、これCだけどなんか凄い白熱してたね?」
その言葉に天野さんが応える。
「国立君しらないの?それリアルガチャでしか出ないんだよ。」
「そうそう、一部ではレアコモンとか言われてるんだぞ。」
そんなもんがあったのか!?
リアルガチャ、恐ろしい子。
「なるほど、因みに俺は何がもらえるのかな?」
それを聞いて渦目が思い出した様な顔をする。
「そっか。自分のは家なんだよね。因みに国立はどんなの欲しいんだ?私もそんなにないんだけど。」
「うーん、まだ始まったばっかだし、何使えばいいのかも判らないから正直なんでもいいんだよな。」
「じゃ、『神の怒り』でどうかな!?私使わないし、
「いや、俺もいらないよ!てか俺が持ってるの知ってるでしょ!?」
「そっかぁ。どうしよう。」
いや、そんな結論見えてる申し出を断られてガッカリしないでくれる?
俺たちの会話を聞いてた天野さんが助け船を出してきた。
「そしたら、私が今日当てた『師匠との出会い』はどうかな?羽部八君も結構いいみたいな事言ってたし。」
「ちょ、テル!まさかの横やり!?」
渦目さんが慌てて天野さんの顔を見る。
「違う違う、私がウズウズにこれをあげるから、今度ウズウズの家に行った時に何かちょうだいって事でどうかな。」
「テル、天才!これで決まりだね!」
渦目さんは名案とばかりに天野さんに抱き着いてる。
「いや、それ
「ん~私たちそこまで順位に拘って無くて、推しを作って楽しむのがメインだから。どっちかというとそう言うイベントの方が貴重なのよね。」
「だね~。」
推し?推しってなんだ?
なんにしてもかわいいの前では
俺は素直に交換してもらう事にした。
「サンキュー!」
渦目さんが嬉しそうに『マスコットとの出会い』を手にして掲げている。
「おう、天野さんもありがとう。また出たら教えるよ。」
「うん、ぜひぜひ!」
天野さんともかなり距離を縮められたし、高々
俺は万事丸く収まってリックリックしながら帰っていった。
しかし、この手に入れた『師匠との出会い』使えるのか?
俺の世界はドラゴンとかばっかなんだぞ?これ使うとあいつらに一体何が起こるんだろうか。全く想像が付かないな。
いや、でもよく考えたらこれは天野さんからもらったガチャイベだ。
くんかくんか
俺は匂いを匂ってみたが別に普通にプラっぽい匂いがするだけだった。
いや、ちょっとやってみただけで変態癖があるわけではないからな?
でもこれは大切にとっておこう。
家に帰ると早速アマテラスが話しかける。
「ねえねえねえねえ!」
ねえが多い。
「見てよ見てよ見てよ!」
見てよも多い。
俺がモニターに目を移すと、そこには少し育った子供ドラゴンがいた。
「おお、結構成長したな。」
俺は何気なく、見たままの感想を述べる。
「それだけじゃないんだよ!この子、既にパワーが4万近くあるんだよ!」
え?成長したドラゴンが4万ちょっとだぞ?それが成長過程なのに既に4万!?
俺は再度モニターに目をやり、ステータスを表示させる
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
名前:ー
職業:ー
レベル:32
推定パワー:38,236
生命力:3,242/3,242
マナ:0/33
攻撃力:743
防御力:228
魔力:12
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
確かに。まだ最強では無いがレベルが低いのにステータスが今までのドラゴンと近い値になっている。一体何が起こったのか。
「なんでこんなに強いんだ?」
「え?理由は判らないけど・・・親ドラゴンの喉に魚が詰まったから、とか?」
「それ、本気で言ってるか?」
「えー、他になんかあったかな?」
「いや、もう少しなんかあるだろ!『偶然の出会い』がいい働きしたとか。」
「そっかぁ。なるほどねえ。さっすが国之さま。」
いや、思い当たるのそれしかなくない?
俺はアマテラスが腕を組んで納得気に頷いているのをあきれ顔で見ていた。
もうこれはあれだな、エージェントじゃなくてマスコットだな。
イベガチャ使わないでも可愛いマスコットがいるんだからかなりお得だ。
俺はそう考える事にしてデュエルをする事にした。
今日も一方的な虐殺ショーだった。
こちらに来た敵パーティーは魔法が使えない事に動揺し、ドラゴンの出現に驚き、その数に恐怖し、そして蹂躙された。
俺の順位は順調に上に上がっていき、イベントポイントも貯まって行った。
ただ、順位も上がってきて相手のパワーも徐々に底上げされて来ていた。
そして、そんな中、驚くべき魔導士が一人登場したのだ。
なんと、このマナの無い世界で魔法を使ったのである。
————————————————————
魔導士ガスバルは創造主の命を受けて神敵を倒すために、道なき平地を仲間と歩いていた。ガスパルはここに着いた時から自分の感覚に違和感を持っていた。
なんだか徐々に体の中から力が抜けて行く様な、誰かに少しずつ力を消失する呪いを掛けられている様な、そんな感覚だ。
そしてその感覚の正体は、地面の先から豆粒の様に見えた敵を確認し、戦闘準備に入った時に明らかとなった。
「
ガスパルが仲間の剣士の剣に火属性の強化魔法を掛けたが全く反応が無いのである。
その瞬間ガスパルは理解した。
(この違和感、この世界には、マナが無い!?)
ガスパルはダンジョンで一度同じ経験をしたことがあった。
その部屋はボスの居る部屋だったのだが、同じ様に魔法が使えなかったのである。
そう、その部屋にも空間中に一切のマナが無かったのである。
ボスはハウリングハウンド。頭を割る様な遠吠えと壁をも足場とする高速の移動、そして鉄をも切り裂く爪と牙。
レベル的にはパーティーは十分に余裕を持って勝つ事の出来る相手であった。
しかし、一切の魔法の使えない部屋では全く事情が異なった。
その戦いは熾烈を極めた。
攻撃も強化も回復すらもできず、ただひたすらに仲間の剣技で戦う戦闘。
魔法一筋のガスパルはただ死なない様に逃げ纏うだけであった。
誇り高き魔導士職でありながらただ無様に、ひたすらに逃げる事しかできない屈辱。
先ずは魔法剣士が殺され、次に前衛の戦士が殺され、残りは槍使い、レンジャー、神官、そして魔導士となった。
ガスパルは何度も何度も魔法を発動させようと試みた。
しかし、身体からマナが消費されるのに現象は発動しない。
それは、マッチを擦るよりも無駄な努力であった。
そして遂には槍使いが殺されようかと言う時、魔導士は一つの記憶が蘇っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます