第10話 俺、初めてイベを発動する

さて、六回引いたガチャは一体どんな効果があるんだ。

俺は改めて出て来たイベントを確認する。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

C:偶然の出会い

ユニット一体に小さな出会いが訪れる


C:危機一髪

ユニット一体が間一髪で危険を回避する


C:偶然の勝利

自分より少し強い敵に勝利する


C:夢のおつげ

夢で次に起きる事を知る事ができる


UC:不思議な出会い

通常ではありえない様な出会いが訪れる


R:伝説の防具

ダンジョンがあれば伝説の道具が生まれる


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


うーん、なんだろう。普通に世界が創られてれば判る。伝説の防具とか判りすぎる。

でも俺の世界はドラゴンばっかなんだよな。


「なあアマテラス、これってどうやって使えばいいんだ?」

「うーん、UCまでは今使ってるパーティーに使うのが基本だね!」

まあ確かに自分の使ってる奴らに使いたいのは間違いないな。


「このダンジョンないと使えないやつは?」

「もちろんダンジョンがないと使えないよ。ダンジョンは、イベントガチャで『ダンジョンの誕生』を使うか、特定条件で発生するのを待つしかないかな。」


つまり今の時点で『伝説の防具』ってのはクズイベか。

いや、そもそもこれ使えてもこのワールドってドラゴンばっかで意味なくない?


それ以前にこいつらダンジョン探索とかするのか?

どう見たって野生に生きてるとしか思えないぞ?

万が一に見つけたとしてどうやって装備するんだ?

こいつらが発見したら自動的に装備されるとか?


ダメだ色々と疑問しか浮かばない。


いや、もしかしたらこいつらが進化して竜人族みたいのが生まれるのかもしれないぞ?そうだな、時間が経てば進化して文明が生まれるのかもしれん!それまでに色々と仕込んでおけばいいだろ。


・・・自分で言ってても何をどう仕込めばいいのか全く判らんが。

俺はアマテラスに目をやる。アマテラスは小首をかしげてこちらを見返す。


「すまん、色々と皆目見当が付かないんだが、このドラゴン達に一体何を使えばいいんだと思う?」

「うーん、国之さまも難しい質問しますねぇ。」

アマテラスは顎に手を当てて考え始めた。これは判らんパターンだな。


俺は少しだけ期待して待つと、アマテラスはポンと手を打って提案してきた。

「そうだ!ランダムに選んで使ってみるのはどうかな?」

うん、期待通りだ。それ名案ぽく言っても名案じゃないからね?


「じゃ、この少しでも効果の期待できそうな『偶然の出会い』ってやつを使ってみるよ」

「うん!いいと思う!これなら期待できるね!!」

アマテラスはウキウキな感じでイベントを実行した。


「あ、パーティーの内の一体に効果が発動したみたいだよ!」

「どんな感じだ?」


俺はモニターを覗き込むと、そのドラゴンは大きな川で自分の頭程もあるデカい魚を捕まえたところだった。


川の上から魚影を見定めると一瞬でデカい魚を口で捕まえて空に放る。そして頭から落ちて来たそいつを一飲みする様に口に入れた。


流れる様な見事な捕獲だった。


しかしその後がいけなかった。なんとその口に入れた魚を喉に詰まらせたのだ。

ドラゴンはどうにか吐き出そうともがき、手をばたつかせるが、手が短すぎて口に届いていない。遂にはどたどたと走り出したのだ。


なんだこれ!?どういう出会い?死との遭遇?Cにしたって酷いイベントだぞ?

すると走る先の森からもう一体のドラゴンが出て来た。

え?あぶな—


アマテラスは思わず顔を隠して目を閉じる。

ドゴーン!

凄い音がして、二体のドラゴンが衝突した。


その衝撃で魚がドラゴンの口から飛び出して二体の前に落ちた。

はす向かいに尻もちをついた二体のドラゴンがお互いを見合っている。


って、おい!なんだこの今日日見ないラブコメ展開は!!

しかもドラゴンだぞ!

あ、仲良く魚を食べ始めた。


「良かったですね国之さま。こんな素敵な出会いが起こるなんて。」

「・・・おう。」

アマテラス、俺はお前のその素直な感性が羨ましい。


食事が終わったのか二体は仲良く森の中へ消えていった。


いったいこれでどんな効果が起こったんだろうか?

世界創造って難しい。


どっと疲れを感じた俺はもう寝る事にした。

俺はアマテラスにお休みを言ってベッドに入った。


次の日、アマテラスが嬉しそうに俺に報告をくれた。

「国之さま!生まれましたよ!かわいい赤ちゃんですよ!」

寝ぼけた顔で俺がモニターを覗くとなんと、ドラゴンの赤ちゃんが卵から孵った所だった。


「へー、かわいい・・・ような?偶然見つけたのか?」

「ちがうよ~国之さま。昨日のドラゴン達の赤ちゃんだよ!」

「昨日の・・・ってあのお魚咥えた!?」

俺は一気に目が覚めた。

「そうそう!!」


そうか、このワールドは一日でだいたい1,2年は進むからもうつがいの赤ちゃんが生まれたのか!


こいつら魚咥えて走っただけですぐ子供とか!!

俺なんて、話しするのがやっとなのに!!

俺の中を何かどす黒いものが—って全く生まれないわ。

しょせん野生だし、なんとも思わないな。


「それにしてもデュエルしてないと時間がどんどん進んでいくな。」

「そうだよ。だから強いパーティーが生まれた時はできるだけ集中してデュエルするのがお勧めだよ!でも一応ボトムアップ効果っていうのがあってね。一度強い人が出るとその人がいなくなっても、それに近い人が出やすくなるんだよ。」


「それって遺伝的ななんかなのか?」

「うーん。難しい事は知らないけど、ユニークって言われる人が出てくると、なんかそれに近い人が出やすくなるんだって!」


うん、何が起こってるのかは解らないが何が起こるかは分かった。

もしかするとなんか強い個体が生まれた時にイベを固め打ちするといい事あるのかもな。ちょっと学校で情報収集してこよう。


おれは朝飯を食べて学校に向かった。

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