第8話 俺、TUEEEEする

俺は既に戻って来た?アマテラスと一緒にモニターを凝視していた。

てっきり俺はフィールドのどこでも見れるのかと思っていたが、どうやら自分達のユニットの居る一定領域しか見る事ができない様だ。


モニターには小さいフィールドマップと、自分達のユニットがそのフィールドのどこら辺にいるかを示していた。


フィールドは5km×5kmの正方形でその対角線上にお互いが配置されている。

既にドラゴン達はその対角線上の中心を通り過ぎていた。


他にもモニターにはユニットのステータスも見る事ができた。

そのうちの一番強いヤツはこんな感じだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

名前:ー

職業:ー

レベル:78

推定パワー:40,236

生命力:3,663/3,663

マナ:0/23

攻撃力:823

防御力:262

魔力:10

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


どんなもんなんだろ、これって。


それから5分、遂にドラゴン達は相手を見つけた。

それは、あまりにも小さな人であった。

いや、当然あっちが普通なんだけどな。ドラゴンに比べてあまりにも小さすぎて。


「あ、ステータス出たよ!」

アマテラスが相手側のステータスをモニターに表示させる。


俺はその一番上に表示されたステータスを確認する。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

名前:アルタ

職業:ファイター

レベル:34

推定パワー:1,710

生命力:422/422

マナ:55/63

攻撃力:237(鉄の剣)

防御力:122(プレートメイル)

魔力:18

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ん?

なんか全然弱そうだぞ?

推定パワー(何で計算されてるのか知らないが)が圧倒的差だし、個別のステータスもかなり差があるな。


別のを見てみよう。

二人目はあの女性かな?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

名前:リーナ

職業:プリースト

レベル:28

推定パワー:1217

生命力:223/223

マナ:329/365

攻撃力:30

防御力:76(聖者のローブ)

魔力:194(聖者の杖)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


よ、弱い。なんだこれ。すっごい弱いぞ?

もしかすると低ランカーはドラゴンより断然弱いから、最初の内はモンスターでデュエルした方が有利って事か?これは盲点だぜ。


しかもマナが減ってる?自分達のワールドでいくらか消耗してたとか?

あの魔法使いっぽいのはどうだ?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

名前:マグナ

職業:ウィザード

レベル:48

推定パワー:3987

生命力:381/381

マナ:800/889

攻撃力:42

防御力:98(魔導士のローブ)

魔力:343(精霊樹の杖)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


こいつは結構強いな。

でもやっぱ桁が違うぞ。

まぁ普通ドラゴンは最強生物だもんな。これはもしかして行けちゃうんじゃね!?


心に余裕のできた俺は一応他の二人にも目を通す。

が、やはり似たようなものだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

名前:ナダ

職業:ローグ

レベル:32

推定パワー:1,328

生命力:347/347

マナ:109/121

攻撃力:173(黒鉄のダガー×2)

防御力:88(レザーアーマー)

魔力:65

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

名前:ドミノ

職業:ホプライト

レベル:39

推定パワー:2,688

生命力:483/483

マナ:61/68

攻撃力:322(鉄の剣)

防御力:176(フルメイル、タワーシールド)

魔力:22

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


あちらのパーティーが話をしているのが聞こえる。

「ちょっと、何よあれ?」

「ド、ドラゴンか?」

「なんという数じゃ。」


まぁ、そりゃ驚くよな。何せこっち13体もいるしな。

そうこうする内にリーナとマグナがそれぞれに杖を構えて詠唱を始める。


「そうか、数値が小さくても魔法で強化すればドラゴンも倒せるのか!?」

「だね~、魔法が使えるとその力はかなり底上げされるから。」

魔法見るのは初めてだからつい忘れてしまっていた。やっぱりダメなのか?


ゴクリ


俺の喉が鳴った。

特にモニター上では変化が見られない。

二人は既に詠唱を終えている。


「魔法、かかったのか?」

「多分?」


しかしリーナとマグナは何か動揺して自分の手などを確認している。

「ど、どうして!?」

「魔法が、発動しないじゃと!?魔力が抜けた感じはあったぞ?」


動揺した二人にアルタが声をかける。

「どうした二人とも!?終わったのか?なんか、いつもと、違うぞ?」

「アルタ、それがー」


その時、彼らの近くで咆哮が響く。

詠唱している間に近づいて来ていたドラゴン達が攻撃の合図を始めたのだ。

その距離は既に5mも無かった。


————————————————————


「みんな!俺の後ろに!!」

ドミノが叫び、一番先頭のドラゴンに向かって盾を構える。

彼も2mはあるだろう、しかし10mを超えるドラゴンとは巨人と小人だ。


ドラゴンはドミノに食いつこうと身を屈める。

そこに合わせてドミノがドラゴンの顎に剣を突き刺す。

「ゴガァ!!!」

その痛みにドラゴンは顔を逸らし、ドミノを睨みつける。


「よし、剣は効くぞ!皆落ち着いて対処するんだ!」

ドミノが叫んで後ろを確認する。


そこには、驚愕で固まって上を見上げるアルタと、食われまいとダガーを振るナダしかいなかった。

「アルタ!リーナは!?マグナは!?」

アルタが震える腕を上げて指をさす。


その先に目を向けると、一匹のドラゴンに咥えあげられた白いローブが見えた。

ローブは牙の沈んだ部分から赤く染まり、既にその端から赤いものが滴っていた。


アルタがふらふらと動き出し、独り言をつぶやきながら剣を構える。

「リーナ、約束、約束、いつか、いつか・・・。」

リーナを咥えて咀嚼しようとするドラゴンの足に向けて力なく剣を振るう。

それがドラゴンに気に食わなかったのか、アルタに威嚇の咆哮を放つ。


ドチャリ。


アルタの後ろで重く軟らかいものが落ちる音がする。

アルタは振り向かず、再度剣を振り上げて吠える。

「リーナアアアァァァ!!!リーナを返せぇぇ!!」


しかし、その剣は振り下ろされること無く、後ろから迫ったドラゴンにアルタごと咥え上げられた。

「あああああ!」

ドラゴンはアルタを噛み砕こうと上を向いて何度も咥えなおし、どうやらそれが咀嚼できないと解り口から吐き出す。その落ちた先には鋭い歯で圧殺され、無残な姿になったアルタが転がっていた。


ドミノはアルタが食われた瞬間叫んだ。

「アルタァ!!」

それと同時にドミノは闇に覆われた。そして浮遊感と共に体に強い圧力を感じた。

肉を喰らう生臭い匂い。盾と上歯に凄い力で抑え込まれ、身動きが取れない。


どうにかして口の外に出ている腕を使って剣を刺そうとするが、上腕が歯に挟まれて上手く刺せない。


ドラゴンはドミノのあまりの硬さに噛み切れず、首を左右に振って勢いよくドミノを口から放す。ドミノは宙に放り出され、10m近く飛んで地面に叩きつけられた。

「がはぁ!」


そこに2体のドラゴンが競い合う様に走り寄り、取り合っては飛ばしてと繰り返した。数回を数えた所で、ドミノは遂にこと切れた。


最後まで奮戦したのはナダだった。

その素早さと慎重な機転でどうにか攻撃をしのいでいた。

ドミノが咥えられ、次に戦意喪失していたアルタがやられ、最早成す術もなかった。


ナダの怒りは既に敵ではなく、己の創造神に向けられていた。

「俺たちは選ばれたんじゃなかったのか!世界最強じゃなかったのか!」


迫りくる大口を避けながらダガーで浅い一撃を加え、背後の気配に前転で対応しながら怨みを吐き出す。

「ちくしょう!なぜ唐突にこんな試練を!?出てこい女神!貴様のその美しい身体に呪いの印を刻んでやる!!」


そして遂に背後からの噛みつきに右上半身が食いつかれる。

「ちくしょう!ちくしょう!ゴブ、ぢぐ、バハッ!ガハッ!」

右肺が潰れ、気管に血が入り込む。むせ返りながらまだ動く左手で食いついているドラゴンの上あごにダガーを突き刺す。ダガーが骨に当たる感触がする。


ナダは思わず口を開けたドラゴンから解放され、距離を取る様に二、三歩前に歩くと、力なく前のめりに倒れた。

ドラゴンはしばしの躊躇の後、動かないナダを足で押さえて喰らい付き、遂にはそれがとどめとなった。


————————————————————


俺とアマテラスはそれらの場面を固唾を呑んで見ていた。

とは言えあまりに惨い場面には自動的にモザイクがかかっていた。流石R15。

ちょっと一方的で凄惨な戦い過ぎて、なんと言えばいいのか、俺、途中から人間側を応援してたわ。


戦いが終わるとファンファーレの音と共にモニターに『WINER』の文字が浮かび上がった。ドラゴン達が決めポーズっぽいアングルで表示されている。

そして世界が粒子となって消えていった。


「や、やったね、国之さま。」

「あ、ああ。」


お互いに顔を見合わせる。アマテラスも色々と思う所のありそうな表情でお互いにしばし沈黙の時間が流れた。


そこへ軽快な音と共にメッセージの受信通知がモニターにポップアップした。

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