第6話 俺、遂に戦いの火ぶたを切って落とす
デュエル
それは自分の育てた世界の住人と他の世界の住人を戦わせる異世界クロスバトルだ。
構想、試行錯誤、運、それらを兼ね添えた神が勝ち残る世界。
デュエルには何段階かの戦闘サイズがある。キングダム、キャッスル、クラン、パーティー、ユニット。上から徐々に戦闘サイズが小さくなってくのだが、今俺の見ているドラゴン種ならパーティー戦までを行えるらしい。
それにしたってドラゴンだぜ?しかも知性の無い。
こんなのが戦争に参加とか言われてもピンとこないよな。
上位プレイヤーの動画なんかも人間メインかデーモンメインなんかが多かったし。
しかし、どうやらそれは俺の勘違いで、実はドラゴンでもゴブリンでもルールに則ていれば戦わせることができるらしい。
ただそう言った人がいない事を考えても、それらのモンスターユニットでの戦闘があまり勝算が無いという事が容易に想像がつくってもんだ。
つまり俺のワールドのこいつらも期待はできないって事じゃないのか?
何せこいつらブレスも吐けないし・・・やっぱ弱くない?
そんな思案を重ねる俺にアマテラスは熱心にデュエルをお勧めする。
「まあまあ、国之さま!何事もチャレンジだよ!」
「あのなぁ、アマテラス。デュエルだってタダじゃないんだぜ?」
そう、デュエルはネットでセントラルワールドサーバに繋ぐ必要があり、一回戦毎に500スコアか戦闘チケットが必要なのだ。
「でもでも、折角ここまで来たのに!それにどんな創造主だってどこかで負けてるんだから、ドーンとやってみましょ!?それに勝ったらイベントポイントも入るんだよ?」
そう、デュエルで勝つとイベントポイントが手に入る。格上を倒せばより多くのポイントが入る様になっている。そしてイベントポイントはワールド内でイベントガチャとか色々と買い物ができる便利ポイントなのだ。
戦闘チケットなんかも買えるので勝率が高い人はタダでデュエルができる様になる。俺も少なくともそこまでを目指していた。コアセットを買う前までは・・・。
俺は自分のワールドの状況と懐具合を思い出して嘆息する。
ふとアマテラスを見ると、アマテラスは上目遣いで俺を見上げていた。
っぐ、突っ走って好みの顔にしたけど、実は間違いだったのかも。
甘え上手がさらに危険度に拍車をかけている気がするぞ?
「わ、わかったよ!一回だけだぞ?サクッと負けたら当分はやらないからな!」
「やったー!さすが国之さま!早速準備しちゃうね!」
そういってアマテラスは大張り切りで何やらカコカコと設定を始める。
そんなアマテラスを見て、ふと俺は浮かんだことを口にしてしまった。
「アマテラスお前、世界創造のエージェントなだけに、俺に対して販売ノルマとか持ってないよな?」
アマテラスは手も止めずにこれでもかってくらい沈んだ表情でこちらを見た。
「そ、そんな国之さま。私、私そんなことしないよ!落ち込んでた国之さまに、喜んで、もらえる様に、、一生懸命、、、頑張ったのに。」
うわ!めっちゃ目が潤んでてかわいい!いや、そうじゃないわ!
「す、すまん!俺が悪かった!」
俺が45度に頭を下げるとアマテラスは一瞬で機嫌を直して晴れやかな笑顔を見せた。
「うん!私、頑張るよ!」
っく、そんないい笑顔で言われたら俺も頑張っちゃうわ。
「準備できたよ!500スコア、よろしくね!」
そう言ってアマテラスは台座を指さした。
「おう。」
ええい、たかが500スコア!
俺は勢い込んでスコアを支払う。
遂に俺は戦いに乗り出したのだ。もう後戻りはできない。
シャラランと澄んだ鈴の音が聞こえてくると500スコアが支払われ、相手を探している旨のメッセージが画面上に表示される。
さして待つこともなく、対戦相手は見つかった。
「国之さま、この人どうかな?チャレンジできる上限付近なんだけど。」
そう言われて俺はモニターの数字をじっくり見てみる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
プレイヤー名:大吉
プレイヤーランク:946,433,587
戦績:63%
開拓レベル:14
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
因みに俺のはこんな感じだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
プレイヤー名:国之常立
プレイヤーランク:983,659,223
戦績:ー
開拓レベル:3
推定パワー:497,300
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
相手は大吉、縁起が良いのか悪いのか。
いや、俺が引いたんだから良いんだよね?
プレイヤーランクが10億近くなのはきっと世界中にプレイヤーがそれくらいいるって事なのだろう。何せ今俺はランキングの一番低い所に居るだろうからな。
で、相手は全戦闘の内63%で勝利していると、なんか強そうじゃない?ランクも結構差があるし。まぁまだ下位の戦いだからランク数の差なんてあんま影響ないのかもしれないけど。
開拓レベルというのはその星がどれくらい進んだ星か、例えば星の環境や生命の進化度、社会構成や文明等が総合的に評価されて計算されているらしい。
俺のワールドは3か。判ってはいたが、相手に比べてかなり原始的という事だな。
そして次が戦闘集団のパワー・・・これは相手のパワーが見えないので、出回ってるデータで推計するしかないんだが。正直ここまで低いランクだとどれくらいで強いのか弱いのか全く判らない。
因みにネット情報だが、現在、上位パーティーのパワーは2000万前後あるらしい。今の俺の30倍だ。流石にここらへんのランカーが2000万もあるわけないけど。
俺のパーティーの約40倍・・・想像つかないな。
「なんでこの相手を選んだんだ?」
「ん~、こちらのワールドでオッケーな人を探したら見つけたんだよ。一番最初はこちらのワールドの方があの子達も安心して戦えると思ったから。」
確かに獣だしな。環境変わったら色々と動揺しそうだよな。
「因みにこの情報から相手の大体のパワーって分からないのか?」
「実は私もネットで公開されている情報以上は知る事ができないんだよ。だからこのランク帯だと特に目安も無くて・・・ダメかな?」
そうか、エージェントも特に事前データみたいのは持ってないんだな。
「判ったこいつと対戦しよう。」
「オッケ~!」
相手はこちらが未開のワールドと知って既に対戦承認して待っている。
こちらもアマテラスが対戦承認を実行する。
続いてステージ設定が表示される。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ワールド:あなた
フィールド:平地
シーズン:夏
タイムゾーン:昼
サイズ:パーティー
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
なるほど、俺のワールドが戦場の様だ。
とは言え実際に俺の作ったワールドに敵が送られてくるわけではない。
サーバ上に同じ環境が構築されて、俺と相手のパーティーがこにコピーされて戦闘に入るのだ。なので、それぞれのワールドには影響が無いらしい。
「さあ、始まるよ!!」
アマテラスが気合の入った声を上げる。
つられて俺は力の籠った目でモニターを見つめたのだった。
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