第5話 俺、世界に戦える存在を見つける
唐突に告白宣言してしまった俺は、恐る恐る真っ赤になった顔を天野さんに向けた。
そこにはなんだか可笑しそうに笑っている天野さんの顔があった。
か、可愛い。じゃなくて俺なんか笑われる様な事言ったっけ?いや、それは言ったけど、当の本人が可笑しそうな顔ってどういうことだ?もしや脈あり!?いや、それで笑ったりとかしないよな・・・。
その答えはすぐに解った。
「唐突な話でビックリしたけど、国立君告白したい人がいるんだ?」
なんだ、そういう事か。確かに天野さんにとは言ってないもんな。
バレなくてホッ。
「告白できるといいね!私、応援してるよ!国立君なら絶対勝てるよ!!」
天野さんはグッと力強く拳を握って励ましの声をくれた。
「じゃ、またね!」
そう言って天野さんはまだクスクス笑いながら友達のところへ行ってしまった。
って、ちょっとまてよ?これって別の人に告白するって事になってるよね?
いや、バレなかったんだしいいのか?
いやいやいや、あの余裕な感じ、どう考えても俺に脈ないよね?いや、そこは考えるのはよそう。心が深くえぐられそうだ。いや、そこは前向きに、きっとデュエルで勝ち上がれば振り向いてくれるに違いない!
ん?というかそもそも
どうにかってどうするんだよ?
考え事をして突っ立ってる俺の肩に手が置かれた。
「ボーとしてどうしたんだ、国立?そろそろ帰ろうぜ?」
そうだった、こんなとこで考え込んでても仕方ない。家でゆっくり考えよう。
増田と初期ワールドの育て方の話をしながら家に帰り付く。
ま、俺には無用な情報なんだがな!
部屋に入るとそこにはアマテラスがいて嬉しそうに手を振っている。
「常之さま!誕生したよ!デュエルできる生物誕生したよ!!」
「え?」
一瞬アマテラスが何を言っているのか判らない。
いや、生物が生まれるという所までは判る。別に魔法が使えない環境だって生物は生まれるんだから。でもデュエルができる生物?種族でもなく?
いや、そんな事はいい、デュエルが、できる!?俺の胸は期待でいっぱいだった。
「どういう事だアマテラス?」
「だからぁ、生まれた生物がどうやらデュエルできるっぽいの!」
わかんないかなぁという顔でアマテラスが人差し指を左右に振る。
「今約135億年くらい経った所まで来たんだけど、そこで生物が複数種類誕生したんだよ。で、そのうちのいくつかがデュエル可能な種だったの!」
やっぱり!デュエルができる!?
これは正に絶望からの救済!
「マジか!よくやったぞアマテラス!!」
俺は思わずアマテラスの頭を撫でた。
ってホログラムかと思ってたけど撫でられるのかよ!?
「えへへ、かなり力技で処理進めたからね!まぁこのコアがハイスペックだったからできた事だよね。」
アマテラスが愛おし気にモニターを撫でる。
普通スペックの場合30億年進めるのに1日位かかるものらしい。これは処理速度だけで見ればそんなに差はないのだが、ハイスペックは演算範囲が通常の3倍なのだ。そのため境界計算が不要で計算量に段違いの差が出るとかなんとか。
やっぱ無理してハイスペックコアを買っておいて良かったぜ!
まぁ通常は30億年も経てば文明の一つくらい生まれてるらしいんだがな・・・。
俺は早速アマテラスにそいつらを見せてもらえる様に頼んだ。
モニターには青と緑の綺麗な星が映っており、だんだんと地上に近づいていく。
そこはどこまでも、見渡す限り植物が生えている肥沃な大地だった。
いや、火山の近くや沼地なんかは流石に生えてないみたいだけど。
更に近づき森に入ると、この世界の木々の幹は鱗が生えたみたいだ。
蛇の様な鱗やパイナップルの表面の様な鱗、2cm位の板を屋根みたいに重ね張りしたような幹の木もある。どれも見た事の無い感じの木だ。
地面の近くにはソテツやシダの様な植物、それに苔が繁茂していた。
ときたま、大きな昆虫が画面を横切る。
「おお、ファンタジー感あるな。」
「そうだねぇ!」
思わず漏れた俺の独り言にアマテラスが応える。AIにもそこらへんの感覚があるのか。ちょっと驚いた。
「で、肝心のそいつらは何処にいるんだ?まさか、さっきから飛んでる昆虫じゃないよな?」
「国之さまなかなか面白い事言うね!そんなわけないでしょー。」
そう言うと何やら両手を空中で振って画面を操作して移動を始める。
どこまで行っても森の中だが、その森が遂に途切れた。
村か?町か?それとも城があるのか?
俺が目を皿の様にして観察していると薄いグレーの物体が近づいてくる。
なんか、動物?あれ?周りの木と同じ位ない?
さらに近づくと、なんかドラゴンに似てる?それにしては色々と足りない。
見た感じ翼が無いし頭も角とかは見当たらない。表面には鱗があるが、雰囲気的にはドラゴンのそれと言うよりは爬虫類っぽい。
「これ、もしかしてドラゴン、なのか?」
「見た目的にそんな気もするよね。翼も無いしブレスも吐けないみたいだけど。」
「なかなか強そうだな!」
「でしょ!?それにこの子達、群れで生活してるのよ。」
顔が少しドジョウっぽくて目がちょっと離れた感じのバランスで愛嬌がある。
それに、ブレスの吐けないと言うその口は大きく、中には鋭い歯が並んでおり、いかにも冒険者を噛み砕きそうだ。
頭にちょっとした突起があるんだが、あれは頭突き用だろうか?
あんなのに突撃されたら防ぐのはかなり厳しいだろうな。
そして立ち上がった時の高さは10m前後はある上に、走るときは前かがみになって結構なスピードが出ている。こんなのに群れで襲われたらひとたまりも無いわ。
とは言え仕草から知性は感じられない。
上位のドラゴンみたいに話せるとかは無くて、普通のドラゴンみたいだな。
「で?デュエルできる種ってのがこいつらを狩りに来るのか?こんなドラゴンの群れを狩る奴らとか期待感しかないな。」
「ううん、この子達だよ!」
「は?」
俺はマジマジとアマテラスを見る。
アマテラスは控え目な胸をそらしてこちらをまっすぐに見返してくる。
「うそ、だろ?」
「ホントだよー!」
うそ・・・だろ?こんなの俺の求めてるロマンじゃないぞ?
こういったドラゴンをバッタバッタとなぎ倒す英雄達を想像してたんだが。
いや、きっとこれは途中経過だ。
こいつらが更に竜神族か何かに進化して無双しだすに違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます