好きな人

かもんべいべ

ミライ

 俺の心の中に明けない夜はない。


 「やば…い!止め…て!!」


 「いや、止めない。」


 「イ…ク…」


 腰を振り、絶頂と共に一緒にベッドに横たわる。


 この光景、もう何度目だろうか?


 「翔くん、今日もすっごく気持ち良かったー!」


 「俺も気持ち良かったよ。」


 今日は加奈(26)と一夜を共にした。加奈は大手企業の社員であると同時に俺の客先でもある。


 4ヶ月前、懇親を深めたいと飲みに誘われた事がきっかけでベッドの上で体を重ね合う関係にまで発展した。


 「翔くん、次はいつ空いてる?」

 

 「うーん、来週末あたりかなー。」


 「1週間以上空くじゃん〜!寂しい〜!」

 

 「まぁとりあえず仕事では会えるわけだし、それまでお互い頑張ろうよ?」


 「うん〜。わかった〜!」


 俺は加奈を優しく諭した。


 加奈は年下なだけあって甘え気質だ。

 若さもあるからセックスにも勢いと激しさがある。小柄だがEカップあり、好きな体位はバック。


 今晩も体力的には疲れたがスッキリした自分がいる。

 年々衰える体力に反比例して満たされない性欲。俺はセックス依存症なのかもしれない。


 次の日、俺はいつも通り出社して業務をこなしていた。


 昼休憩に自分のデスクでコンビニで買ってきたパスタを食べていると、スマホにメッセージが入ってきた。


 めぐみ(33)からだ。


 「翔平、明日の夜は予定通り大丈夫そう?」


 「バッチリ空けてあるよ。楽しみにしてる。」


 すぐに返信した。


 めぐみとの出会いは会社の飲み会で三次会に行った時だった。

 暗がりなバーで友達と3人で飲んでいためぐみたちに俺の上司が酔って話かけたのがきっかけだ。

 

 映画鑑賞という共通の趣味で意気投合し、連絡先を交換してから関係が続いている。


 めぐみは病院で看護師として働いており、落ち着いた雰囲気の色気漂う大人な女性。

 スタイルの良い高身長に泣きぼくろが余計に色気を漂わせる。


 めぐみとの関係は半年になる。


 次の日の晩、仕事帰りにそのままめぐみの住むマンションに寄った。


 仕事が休みだったらしく、部屋に入った瞬間キッチンから手料理の良い香りが鼻を突き抜けた。


 「先にお風呂入ってきたら?」


 「うん、そうする。」


 「パジャマと下着、いつものとこに置いてあるから。あとバスタオルも。」


 「ありがとね。」


 俺はすぐ風呂に向かった。


 ここで湯船に浸かると時折疑問に思う。

 自分の寝巻きや下着が相手の家に置いてあるという状況は、普通ならカップルに起こり得る現象ではないかと。

 

 めぐみとは半年の仲だが、別に付き合ってるわけでもない。体の関係はあるが。

 正直顔もタイプだし、セックスの相性も良い。


 風呂から出た後、めぐみのお洒落な手料理を食べた。

 それから2人で映画を観ながらお酒を飲む。


 23時、一緒にベッドに入った。


 「翔平?」


 「めぐみ…」


 めぐみの上に覆いかぶさってキスをした。


 舌を絡めたタイミングでパジャマのボタンを上から一つずつ外していく。


 ボタンを外し終わったらブラの上からDカップの胸を揉み始める。


 「直接…触って…?」


 吐息を漏らしながらめぐみは言う。


 胸を揉みながらブラのホックを片手で外す。

 

 露わになったところをさらに揉みしだく。

 途中乳首を摘んだり、舐めたりして愛撫する。


 「翔平…気持ち…良い…」


 「めぐみの気持ち良い顔に興奮するよ。」


 「バカ…見ないで…」


 めぐみの下半身に手を伸ばした。


 すでに湿ったパンツをすぐに脱がせた。


 愛液でトロトロになった陰部を優しくなぞる。

 もっと濡れてきたところで指を挿れる。


 めぐみの喘ぎ声がどんどん大きくなっていく。

 手でイかせる。


 めぐみの手が俺の股間に伸びてきた。


 「気持ち良くさせてあげる。」


 泣きぼくろがエロく見える。

 手で触り、口で頬張る姿に興奮する。


 「翔平のが欲しい…」


 「じゃあ挿れるよ。」


 喘ぎ声が部屋中に響き渡る。

 めぐみは基本的に正常位が好きですぐにイく。


 ゆっくり腰を動かし、徐々に速度を上げる。

 めぐみの長い両脚が俺の腰回りを挟み覆う。


 「翔平…やば…い。もう…イき…そ。」


 「イっていいよ?」


 やはりめぐみはすぐにイった。だが俺はイってないので一度速度ダウンし、まだ継続する。


 めぐみは喘ぎ続ける。

 これを3度繰り返した時に俺は大体イク。

 

 セックスが終わると俺たちはすぐに深い眠りについた。


 翌朝、ワイシャツや靴下の予備も置いてあるので、そのままめぐみの家から出社する。


 「翔平、次はいつ会える?」


 「1週間後くらいかな。」


 「わかった。また連絡するね。」


 「了解!じゃあ行ってきます。」


 そう言ってめぐみのマンションを後にした。


 ここまで良い感じなのにも関わらず、俺には簡単に付き合えない理由がある。


 加奈とめぐみ、そして今晩約束してる亜子(29)。


 最初はこの3人の誰かと付き合いたいと思っていた。

 上から目線であるが、俺の中で彼女候補という形で親交を深めてきた。


 時間の経過と共に仲が深まり、3人共に対して友達以上恋人未満という関係が徐々に構築されていったのだ。

 

 体を許し合うがセフレではない関係。おそらく普通なら少なくともお互いに気があると感じ始める状態。


 だが、日々の一緒にいる時間、セックスを重ねるにつれて問題が生じた。


 3人共が同じくらいに一緒にいて居心地が良く、同じくらいにセックスの相性が良いのだ。

 そして全員スタイルや顔の系統は異なるが、比較が出来ないくらいに俺好みのタイプである。

 

 そう…俺はこの3人を同じくらい好きになってしまったのだ…

 好きな人を1人に絞れない。


 付き合ってないとはいえ、これは三股になるのかもしれない。ゲスな事だとも理解している。


 それでも俺は1人を選べない。


 今の状態に陥って3ヶ月。開き直ったわけではないが今日まで3人と関係を続けている。


 出社後すぐに亜子から連絡が来てる事に気が付いた。


 「今日の飲み会、待ち合わせ場所どこにしたらいいかな?」


 「亜子の会社近くで待ち合わせしようか。そこから店も遠くないし一緒に行こう。」


 「わかった〜!今日は華金、仕事頑張ってたくさん飲もうね!」


 「亜子と外で飲むの久々だし、楽しみにしてる!」


 亜子との付き合いは5ヶ月ほど。

 

 彼女は俺の会社からわりと近いところの商社で事務をしている。


 知人の紹介で一緒に食事をしたのがきっかけだ。同い年でお互い酒好きという共通点からすぐに飲み友達になり、そこからは加奈やめぐみと同じような関係に発展した。


 今日は午後から先日会ったばかりの加奈のいる会社に出向かなくてはならない。

 もちろん加奈とも顔を合わせる事になる。


 めぐみも亜子も仕事中に会う事がないから、仕事中に加奈に会える時間は癒しに感じている。


 昼食を食べ、昼休憩終了後に早速向かった。


 担当の方と一緒に加奈がやって来た。

 俺と加奈がプライベートで関係を持ってる事は誰も知らない。


 まず俺がいつも通りの挨拶をする。


 「こんにちは。いつもお世話になっております。」


 「こんにちは。こちらこそお世話になっております。こちらへどうぞ。」


 と加奈が返してくる。


 こういった感じでよそよそしい演技を2人で毎回している。


 会議室で商談が始まり、途中担当の方が電話で席を外した。


 2人っきりになると加奈がすかさず小声で言ってきた。  


 「翔くんに早く会いたかった〜!」


 「俺もだよ。」


 「けど仕事で会うだけはつまんなーい!」

 

 「俺は会えるだけでも嬉しいけどな!」


 「だって触れたり出来ないんだよ??」


 「仕事だしそれは仕方ないじゃん〜。」


 付き合ってるわけではないのに会話がカップルそのもの。

 そしてやけに今日の加奈はむくれっ面だ。


 「来週末ゆっくり会えるからそれまで我慢我慢!」


 俺が諭すと加奈は言った。


 「じゃあ我慢するかわりに今キスして?」


 「今?ここで!?」


 「うん、そしたら来週末まで頑張れる。」


 「わかった。」


 俺は客先の会議室で加奈にキスをした。


 一瞬の出来事の後、担当の方が戻って来て商談も無事終了。

 俺が帰る頃には加奈の表情も来た時より明るくなっていた。


 帰り道にふと思う。

 俺は今日亜子に会うというのに何やってんだ…

 

 同じくらいに好きというのは同じくらいに自分自身へ罪悪感を与える。


 それでも3人から1人を選ぶ気になれない。


 仕事が終わり、亜子と合流した。

 予約してたイタリアン居酒屋に向かった。


 道中は大体いつも他愛のない会話をする


 「翔平くん、最近仕事はどう?」

 

 「仕事はわりと順調かな〜。亜子は?」


 「私もぼちぼちかな?けど何もないのが1番よね!」


 「そうだな!良い事ならあって欲しいけど、悪い事は起きないで欲しいね!」


 【何もないのが】って言葉にちょっと引っかかった。

 今日加奈と会議室でキスした事は何もないには入らないよな?


 亜子は今日俺が他の女とキスした事、普段他に2人の女を好きだという事、関係を持っている事を知らない。


 付き合ってないが、やはり罪悪感を感じる…


 会話をしているうちに店に着いた。

 席に案内され、すぐに生ビールを2つ注文した。


 「今日もお疲れ様。乾杯!」


 「翔平くんもお疲れ様〜!乾杯!」


 「あー、美味い!亜子と店で飲むのほんと久々だな。」


 「ほんと久々だよね!最近ずっと家飲みだったしね〜。」


 「亜子ん家、酒いっぱい置いてあるし凄いよね。」


 「翔平くんが来る度に買ってきてくれるから増えたんじゃん〜!」


 基本亜子とは他愛のない会話が多い。だが、酔ってくるとボディータッチが増えてくる。


 入店から3時間弱、2人で芋焼酎をロックで飲んでいる時だった。


 「翔平くん〜。今日今から私ん家で飲み直さない?泊まっていいからさ〜。」


 俺の右腕を両手で掴みながら亜子が言う。


 「急にこのまま行って迷惑じゃないのか?」


 「全然大丈夫〜!だって翔平くんだも〜ん。」


 わりと酔っているとはわかっているが、俺にとって好きな人。行くことにした。


 途中コンビニで新たにお酒と俺はパンツを購入した。

 店員もコイツ今日はこの子ん家にお泊まりだなって察しただろう。


 家に着くと、亜子はさらに酔いがまわっていた。


 「私先にシャワー浴びてくる〜。翔平くんも一緒に浴びよ〜?」


 「いや、2人は狭いだろ!先浴びてきな〜。」


 「服脱げな〜い…脱がせて〜?」


 「まじかよ!しょうがないな〜。」


 俺は亜子を下着姿になるまで脱がせた。


 「あとは自分で脱衣所で脱ぎな。」


 「ふーん。脱がせてくれてもよかったのに…」


 完全に酔っ払いだ。亜子がシャワー浴びてる間に俺は仕切り直して缶ビールを飲んだ。


 20分後、亜子が出てきた。


 「シャワーお先〜!あ!先に飲んでるなんてずるーい!」


 「いや、亜子酔ってたし飲めるかわかんないから先に飲んじゃってた。」


 「まだ飲むし〜!夜は長いよ!翔平くんもシャワー浴びてきなー。」

 

 「うん、シャワー借りるわ〜。」


 亜子はわりとシラフに戻っていた。

 俺もシャワーを浴びながら若干の酔いを覚ました。


 だが、部屋に戻ると亜子が再び酔っ払いに戻っていた。


 「翔平くん遅いからもう飲んでる〜!」


 「あれ?10分くらいじゃん!」


 「それでも遅い〜!」


 「はいはい!じゃあもう一回乾杯しよっか!」


 「かんぱ〜い!!」


 深夜1時。どれくらい飲んだだろうか?

 

 そんな俺は亜子に誘われてベッドに一緒に入っている。

 同時に亜子の手が俺の股間の方へ向かって伸びてきている。


 亜子とも体は何度も重ねているが、今日の亜子はいつになく積極的だ。


 「翔平く〜ん、気持ち良いことしよ?」


 「亜子…」


 キスをしながらすぐに服とショートパンツを脱がせた。下着姿になった亜子の体はいつ見てもやはり綺麗だ。


 透明感漂う白い素肌に美しいくびれ。そしてブラに窮屈そうに収まりながら生まれるFカップの谷間。


 この瞬間を拝んでいる俺を世の男性は羨むことだろう。


 亜子は自分からブラのホックを外した。


 「たくさん揉んで…」


 俺はFカップに手をかけ優しくも時折激しく揉んだ。


 「あっ…もっと…」


 吐息を漏らしながら亜子が言う。


 乳首を摘むとさらに吐息が漏れる。


 「舐めて…」


 俺はFカップに顔を埋めるようにして舐めまくった。

 それから亜子のパンツを脱がせた。


 露わになるのは無毛の陰部。

 触り心地がたまらないと毎回密かに思っている。


 Fカップを揉みしだきながら愛液で濡れたそれを指でそっとなぞる。俺の指までびっしょりと濡れていくのがわかる。


 次第に亜子の吐息が喘ぎ声に変わってゆく。

 そこで指を上にずらしてクリを触る。


 「あっ…!ダ…メ…」


 「いや、ダメじゃない。」


 さらに指で責め立てる。


 「イ…きそ…う」


 亜子の体がビクッとなった。


 「下も舐めて…」


 亜子の股の間に顔を埋めて陰部を舐めた。

 クリを舐めるとやはり反応が良い。

 

 そして亜子を膝立ちさせて指を挿れ激しく動かした。


 「ダメ…!出ちゃう…」


 亜子から透明な液体が吹き出した。


 体をビクつかせた後、亜子は力が抜けたように俺にもたれかかる。


 「気持ち良い?」


 「やばい…気持ち良すぎてイっちゃった…」


 「亜子今日も吹いたね。」


 「も〜!恥ずかしいから言わないで…」


 「可愛いよ。」


 「私も翔平くん気持ち良くさせる。」


 亜子は俺の服を脱がせてパンツを下ろした。


 俺の股間に唾液を垂らし、やらしい手つきで触ってくる。

 勃起してくると口の中に頬張った。


 舌使いもなかなかのものだ。


 「翔平くんの…挿れて欲しくなっちゃった…」


 そう言うと亜子は俺の上に跨った。


 亜子の騎乗位は強烈だ。すぐにイきそうになるレベル。

 亜子の1番好きな体位でもある。


 Fカップの揺れと腰の動きのやらしさに興奮する。


 「やばい…気持ち良い…」


 「私も…翔平くんのが中に入るともっとやばい…」


 俺も下から突いた。


 「イク…!」  


 亜子はすぐにイった。


 そのまま対面座位に切り替える。

 

 胸が当たり更に興奮する。そして亜子の歪んだエロい表情が至近距離で見れる。


 お互いに激しく腰を動かし合い、一緒にイった。


 そのまま横になり、服も着ないまま2人して寝てしまった。


 翌朝、俺が先に目を覚ますとその後すぐに亜子が目を覚ました。


 「おはよ。」


 「おはよう〜。」


 「よく寝たわ〜。」


 「私も熟睡してた。」


 「とりあえず服着なきゃな!」


 「たしかに!そうだね!」


 服を着ている最中、亜子が突如聞いてきた。


 「翔平くんってさ、好きな子いるの?」


 「好きな子?好きな人は…いないかな。」


 ちょっと歯切れ悪く答えてしまった。


 「なぁんだ〜!たしかに好きな子いたら私とエッチしないよね!」


 「うんー。けど好きになりそうな人はいるかな。」


 「なにそれ〜!変な言い方!」


 そう言って亜子は笑っていたが、俺は若干複雑だった。


 好きになりそうな人はいるって口を濁したが、実際に好きな人自体は存在しているからだ。


 でも簡単に好きな人がいるとは言えない。


 それは加奈、めぐみ、亜子の3人が俺にとって順位がつけられないくらい好きな人という存在だからだ。


 俺は今、毎週3人の女性と過ごし、セックスをしている。


 好きだが付き合っていない。


 これがいつまで続くのかはわからない。


 側から見れば、覚悟を決められない最低な男に見られると思う。


 ただ、解決策は2つある。

 彼女たちが俺を見限るか、俺が彼女たちから身を引くかだ。


 もしウルトラCがあるとすれば、彼女たち以上に惚れてしまうような存在が現れた時かもしれない。


 その時はきっと、この気持ちに終止符が打たれるだろう…


 ミライはどうなるかなんて誰にもわからないが、俺は今を生きている。


 


 


 


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