【新番組】魔法笑女☆スマイルンルン

市亀

「是非観てねっ!!」

 いつも笑い声が飛び交う平和な街、ニコニコ街道。

 ある日突然、悲しみで人を縛り世界を征服しようとする悪の軍団・ションボリーズがやってきて、闇のエネルギーで人々から喜びを奪ってしまう!


 ションボリーズの力に対抗できるのは、彼らの闇のエネルギーに対抗できるほど強い、喜びと笑いの力。喜劇の精霊・コメコメディは街を救うため、女子中学生のエミとニコに魔法の力を授ける。

 かくして彼女たちは、人々の笑いを集めてションボリーズをやっつける、魔法笑女☆スマイルンルンを結成!


 スマイルンルンはションボリーズが現れるたびに、漫才・コント・一発芸といった多彩なネタで住人を笑わせ、そのエネルギーでションボリーズを追い払っていく。

 それに対してションボリーズは、お笑い博士でもある魔女・ゲラーノを送り込む。笑いに精通したゲラーノが、スマイルンルンのネタにケチをつけることで、スマイルンルンは面白くないと人々に思わせる作戦だ。


 スマイルンルンがネタを披露するたびに、ゲラーノが現れては酷評する。

「ボケが分かりにくいのよ! ツッコミも鈍いし、欠伸が出るわ」

「ただ変な顔してれば面白いとでも思ってるの? 顔の筋肉の動きが一億倍は足りないのよ!」

「ああ、今のがオチだったのかしら? いつまで前振りが続くのかと待ちくたびれていたわよ、台本揃えて出直してきなさい!!」


 ゲラーノの言葉に傷つきながらも、最高の笑いを目指して修行に励むスマイルンルンたち。

 いつしかスマイルンルンの目標は、ションボリーズをやっつけることではなく、ゲラーノを爆笑させることへと変わっていく・・・・・・


 人の笑顔を守るため、大嫌いなお姉さんを笑わせるため!?

 笑いと魔法の大冒険が、いま始まる!









「っていう企画を考えたんだけど、モモちゃんどう思う?」


 アニメ監督である裏川うらかわに企画書を見せられ、テレビ局プロデューサーの桃倉ももくらは激しく苦悩していた。


 確かに、新たな魔法少女アニメの企画を考えてほしいと、業界には常々言っている。

 既存の枠には囚われない斬新な発想が欲しいとも、常々言っている。


 それでも、これは・・・・・・これまでの魔法少女シリーズからして、斬新すぎる・・・・・・そもそもお笑いは扱いが難しいのだ、特に子供向けとなると。それで五十話も作るとなれば、脚本家の心労は計り知れない。


 しかし裏川は、型破りな発想で多くの伝説を残してきた人物である。

 同時に彼女は、ジョークや放言をしょっちゅう仕掛けてくる人物である。


 これは本気か、あるいはジョークか。その真意を量ることすら失礼だ、しかし返事をせねば――桃倉が口を開こうとした瞬間、裏川はもう一枚の書類を見せる。




「なんちゃって、今のはネタでこっちが本命でした」

「ボケが分かりにくいのよ!!」


「けどスマイルンルン面白そうじゃない?」

「だったら台本揃えてから出直してきなさい!!」

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【新番組】魔法笑女☆スマイルンルン 市亀 @ichikame

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