爆笑する方法

高岩 沙由

爆笑を体験するために

「ねぇ、爆笑する、ってどういう感じ?」

 居間でお笑い番組を見ながら、大きな口を開けて爆笑している妹の菜摘に向かって私は聞いてみる。

「えっ? なに突然」

 菜摘は目に浮かんだ涙を指で拭いながら戸惑いの声で聞き返してくる。

「まんまなんだけど?」

「意味わかんないわ」

 まあ、そうだよね。


 私は、笑いの沸点が高いのか、こうやって一緒にテレビを見ていても大きく口を開けて笑うことはない。

 せいぜいが、ちょっと口角を上げて、ふっ、と笑うくらいだろうか?


「ってかさ、お姉ちゃんは何が面白いの?」

「面白い?」

「あー、例えば、漫才を見て笑えるとか? ギャク漫画を見て笑えるとか?」

 私は考え込んでしまう。

 だが、お笑い番組を見ても、ははん、くらいで、菜摘のように大きく口を開けて笑うことはない。

 ギャク漫画を読んでも、どこが笑えるのかわからないうちに読み終わっている。


 考え込んでいると菜摘がにじり寄ってきた。

「じゃあさ、これは?」

 いきなり私の足の裏をくすぐり始めた。

「あっ、それはくすぐったい!」

「んー爆笑まではいかないか……」

 菜摘の行動を不思議に思いながら目で追う。

「じゃあ、ここは?」

 といきなり脇の下をくすぐり始めた。

「ひやー、そこはダメ!」

 私は脇の下がめっぽう弱く、撫でられるようにくすぐられると身をよじってしまう。

「ここが弱点か!」

 菜摘は楽しそうに両脇をずっとくすぐり続けている。

 そのうち、私の笑い声がどんどん大きくなり、涙が浮かんでくる。

 その様子を見た菜摘はくすぐる手をやっと止める。

「いまの状態が爆笑に近いんだけど、わかった?」

「……なんとなく」

「……そっか」

 菜摘は遠い目をして、またテレビを見始めた。

 ……私はくすぐられる以外に爆笑できる日がくるのだろうか?

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爆笑する方法 高岩 沙由 @umitonya

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