全員の筆跡を確認。仕方ない、帰ろう。

(うーん、みんな違ったのかなんなのか…………)

 結局部活終わるまでに心当たりのある五人に聞いてみたが、凉子の字が最も近いかなーでも表情落ち着いてたなーくらいまでの手がかりしかなかった。

(やっぱ三通目を待つしかない、かー)

 俺はげた箱の扉を開け

「うおぅっ?!」

 たら三通目入ってやがったーーー!!

(まさかの不意打ちっ!)

 てっきりアパートのポストに入っているもんだと思ったからびっくらこいたのなんの!

 俺は慌てて周りを見回したが、ちらほらいる周りの生徒たちには封筒の存在はばれていないようだ。

(と、とりあえず)

 ささっとブレザーの内ポケットに隠して、俺は急ぎ気味に靴を履き替えた。


 俺は体育館裏にやってきた。体育館を使う運動部も練習は終わってるし、生徒もまず通らないからな。

(では……)

 二通の白い封筒と一緒だ。切手もなければ宛名もない。便箋は一枚。

 ゆっくり開いて読んでみると


     好きです

         遥斗くん』


(おいいぃぃぃーーーっ!!)

 これじゃなんにも進展ねぇよぉー!

(……ん? 『遥斗くん』!?)

 そうだ二通目と三通目、『遥斗くん』って書いてあるぞ!?

(五人のうちに遥斗くん呼びなのは……朔夜だけだ!!)

 じゃ、じゃあこれは朔夜が書いたのか!?

(いやでも朔夜の字は超丸超ちっちゃでだいぶとこの文字からは遠いぞ?)

 そりゃ意図的に字体を変えて書いたのかもしれないが、大きさも違うわけだしなぁ……。

(んんーーーむむむ……)

 だめだ。がくっ。わからん。

(しゃーない。四通目を待つか……)

 いつまでもこんな体育館裏なんていてたらそれはそれで怪しまれるかもしんないし、帰ろう。

「は、遥斗っ!?」

「うおわっ」

 裏から出たと思ったら急に俺を呼ぶ声が!

 ざら板に腰掛けていたのは

「未香、こんなとこでなにしてんだ?」

 バスケ部所属の未香だった。制服ってことは着替え終わって後は帰るだけっぽい? ぇ、てかなにその左腕の角度。

「はっ、遥斗こそなんでそんなとこから出てくるんだっ!」

「あ、いや~、あはは~」

 うん。いきなりこんな怪しい場所から出現したらびっくりするわな。すまん。

(てか確かにびびらせるような登場をしてしまったが、にしてはあの未香がこんなにびっくりしてるってのもなぁ……?)

 意外とドッキリとかに弱いタイプ?

「うわっ! そ、それっ……」

「ん? ああこれげた箱ぉぉぉぉぉーーーーー!?」

 しまった! 手に封筒を持ったままだった!

(やばいやばい、さあどうごまかす、俺よ!)

「て、いうか! 遥斗意外とモテるんだねぇ! ラブレターとかもらっちゃってさぁ!」

(………………ん?)

「待て。なんでこれがラブレターだってわかったんだ?」

「うっ! あぁ~女の勘ってやつさ! そんなかわいらしい封筒ラブレター以外ないだろ!?」

(…………んむ?)

「まっしろけっけだぞ?」

「わぶっ! でもほら! 中は花柄だっただろ!? な!?」

(……これが相路地未香、か)

 それではとどめの一撃といこうか。

「なんでこの状態で中の便箋が花柄だって知ってんだ相路地未香さん」

「ぎくぅーっ!」

(ぷっ、ちょっとおもろっ)

 本人には悪いが、これは笑わずにはいられないっ!

「そっ! そんなに笑うことないだろ!」

「あぁいやいや。ぷっ、未香そんなかわいかったのかってなっ」

「かわっ!!」

 あーあ、とうとう未香は体育座りをしてしまった。

「一緒に帰ろうぜ、未香。いいよな?」

 ごめ、俺顔にやにやしながら言ったかも。

「……うん」

 ちょっと時差があったのか、未香は少し間を開けてうなずいた。


 俺と未香は横に並んで一緒に歩いて校門を抜けた。

 立てば未香の方が身長高いはずなのに、妙にそわそわしているためなんかちょっとちっちゃく見える?

「なぁ未香」

「ななんだっ」

 ほんとにこれはいつもの未香なのだろうか? 今朝の未香と影武者が入れ替わってるとか?

「いろいろ聞きたいことがあるんだが、まずこの手」

「うあわわ出すな出すな!!」

 どうやら出してはいけない物らしい。

「紙の字、今朝見せてもらった国語のノートの字とちょっと違わないか?」

 あ、ちょっと視線下がってる。うん、いい表情だ。

「……き、緊張してたんだよっ」

(いい。すごくいい)

「手紙にしては文字数少なすぎないか?」

「だから緊張してたっつったろ?!」

「なぜか遥斗くん呼び」

「てっ、手紙で呼び捨てとか馴れ馴れしいと思ったんだっ!」

「なお便箋もかわいいのを選んだ模様」

「かわいい言うなーっ!!」

 そんなに叫んで大丈夫なのだろうか? 周りに知られる方がもっとあれな気がするがっ。

「で。俺のどんなとこが好きになったんだ?」

「すっ…………」

 なんかたこさんの口で顔が止まっている。

「……自転車直してくれたり、ノートまめに取ってたり、部屋きれいだったり、お茶とか手際よかったり……音楽もできるみたいだし、しゃべってて楽しいし……なんか、気づいたら、いつの間にか…………」

 おててをもじもじうにゅうにゅ。未香はさわやかかっちょいい系だと思っていたのに、実際はこんなにもうにゅうにゅ系だったとはっ。

「直接言うのは恥ずかしいから、き、気持ちだけでも……って……」

 たまらなくかわいいじゃねぇか未香!

「それじゃ、その未香の気持ちを聴いて、俺も未香のこと好きになってもいいよな?」

「なあっ?! なななななんでそうなるんだ!!」

「いやそうなるだろ普通っ」

 まさかバスケットボールしてるときもこんなおどおどしてないだろうな?

「未香のおかげで両想いになったんなら、もちろん付き合ってもいいよな!?」

「つっ………………!」

 お口わなわなしてる。

「あれ、俺振られちゃうのか?」

「そんなことできるかっ!! ぁああでも急すぎるだろ!!」

「急すぎたらだめな理由でもあるのか?」

「き、気持ちの準備ってもんがあるだろ!」

「え? これを俺に出した時点で気持ちの準」

「だから出すなあーーー!!」

 たまらないな。うん。

「……もっ、もっと優しいやつだと思ってたぞ……」

 うわーとうとうふくれっ面まで披露しやがったっ。

「悪かったよっ。じゃあ付き合うかどうかは保留でいいから、とりあえず次の日曜、遊ぼうぜ。てかバスケ教えてくれよ! それくらいならいいだろ?」

 俺も今たいがい未香のかわいさにどきどきしているが、未香本人のどきどきは一体俺の何百倍なんだろうなっ。

「……それくらいなら……で、でもなぁ…………」

 おろ、未香の得意分野を選択してみたのだが。

「なんだよ未香バスケ部なんだろ? それとも休みの日くらいバスケから離れたいとかか?」

「あぁそんなんじゃなくって……」

「じゃあ、なんだ?」

「…………肩とか当たったら、恥ずかしいし……」

「どんだけかわいいんだよ!」

「だからかわいい言うな遥斗ぉーーーっ!!」

 とりあえず未香、冬休み俺の実家に強制連行な。拒否権なしっ!

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試作型短編51話  数あるラブレ……いやこれはちょっと違うよな……? 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho

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