ラpiリンス

和寂

創世記1:3

目が覚めると真っ黒な空が目に入る。

いや、実際のところ空かどうかはよく判らない。

とりあえずただの虚無だ。


今自分が横たわっていたのは昨日見つけた10m四方のコンクリートブロックらしき物体で、隣には妹がまだ寝ている。


体をくくりつけていたロープを床面から外し、勢いをつけすぎないように慎重に立ち上がった。


とは言っても重力があるわけではないので、立っていると言うよりは接していると言うべきかもしれない。


腕時計は2001年1月5日の9時14分を指している。

この日付と時刻はほぼ便宜的なものだ。


とりあえず寝ていた平面に座る。


妹はまだ起きない。



ぼんやりと遠くを眺める。

何もない空間に遠近という概念はないのかもしれないが。


この世界には太陽らしきものがない。

全ての物体は不自然に均一な明るさガンマ値で視界に映っている。



ふと見回し、いつもの光点を探す。


見当たらないので左手で杭をつかみながら、右手で座っているブロックに力を加えた。

これでゆっくりと回り始めたはずだ。


隣の妹がもぞもぞと動き出す。

今の衝撃で起こしてしまったらしい。


「……おはよう」

「はい、おはよう」

ゆっくりと起き上がり伸びをする。

猫みたいだな。


「今日も夢からめることは無し、と」

「まあ夢かどうかは判らないけども」

「ほぼ夢みたいなものでしょ」


そう言いながら妹は手を出してじっと見つめる。

手のひらの辺りが少しぼやけたと思ったら、チョコたっぷりなザッハトルテがあった。


「これはやっぱり夢」


ついでにむしゃむしゃと頬張ほおばる妹。

夢ならカロリーも気にしなくていいってことか。

まあ、確かにそうかもしれない。いや、そうか?


ここでは、イメージしたものが実体化する。


「とりあえず俺も朝ごはんにするか」

ビックマックをイメージ。

焼き目のついたバンズ、肉汁のあふれるパティ、レキレキのシャタス、瑞々みずみずしいトマト、濃厚なコクのあるチーズ。。。


「お、良いね」

これは間違いなく本家より美味しいものができた。

ついでにファンタグレープも実体化。


「あ。私のもお願い」

「いや自分でやろうよ」

不満げな顔をする妹。


「飲み物出すの苦手って知ってるでしょう」

「はいはい」


そう、イメージで作るからうまく思い浮かべないと変なものができる。


試しにファンタグレープを単体でイメージする。


「あ、まーた意地悪するんだ」

まあ球状にファンタが発生する。ストローは付けてやるか。


「はいどうぞ」

「鬼畜兄貴め」


言いつつもストローを咥えて吸い込む妹。

割と面白い絵面だな。


ふと頭上を眺めると、探していた光点が見える。


「……あれ、行けるのかね」

「さあ。行ってどうかなるの」


しばらくの咀嚼そしゃく音。


「イメージでなんでも生み出せるのは良いけど、生み出してないものがこうやってたまにあるのは何なんだろうな」

「んー、さあねー」

ちゅーーっズッ。

手元にあった食べ物がなくなった。



「さて、こっからどうする?」

吸うものがなくなったストローを上下させる妹。

「ふぇつにふぁざわざひどうひなくてほ

「喋るならそれ取ってからで良くないか?」

ストローを上下させながら喋るのはすごくアホっぽい。


「まあ確かに延々と光点に向かって進むのも流石に飽きたな」

「生身で進まなくてもいいんじゃない?」

「たしかに」


最初は無我夢中で唯一明確に視認できる光点を目指していた。


2日目くらいに食料が生み出せることに気付き、ついでに物も生み出せることが判明。

その日は久しぶりの食事と2日分の疲労も相まって、初めての睡眠となった。

いつの間にか離れ離れになるかもしれないと思うと寝るに寝られなかったからだ。

命綱は精神衛生上、とても重要だった。



そもそもこんなのんびりとした思考をしたのも初めてだと思う。


この世界に来てから恐らく5日程経って、昨日は初めて平面で寝ることができたので、色々と落ち着いたのかもしれない。


人は土から離れて生きることはできないということか。



「ねえ。今ふと思ったけど、実在しないものは創れないの?」

「一昨日、ストライク出そうっていって結局何も出なかったじゃん」

残念ながら作れなかったのだ。

結構細部まで鮮明にイメージしたのにも関わらず、本物はおろかハリボテすら現れなかった。

起動画面を見て、GUNDAM……?とかしたかったのに。



「それなんだけどさ、デカ過ぎたんじゃない?」

「……なるほど?」


大きさか。

制限が大きさだけなら組み立てたらいいか。

いやそれはそれで面倒だな。

なら元々分離しているター◯Xとか?


「また黒歴史を繰り返すつもり?」

「お部屋は気に入って頂けましたかな?」

「戦闘中の灯火管制が気に入りません。私は明るいほうが好きです」

「すぐに終わらせます」

「……いや、なんでターンX無関係のシーンを……いや、そうじゃなくて。とりあえずガン◯ムからは離れて」

「はい」

ノリのいい妹である。

「我が世の春が来たァ!」

「兄貴の時代は一生こないよ。いや、そうじゃなくて。いや、そうなのかもしれないけどとりあえずガン◯ムからは離れて」

「はい。」

さらっと酷いことを言われた。

「このターンXすごいよ!さすがターンAのお兄さん!スモーのエネルギーはすべてもらっている、ゲンガナムの電力をいただいたようにな!わかっているのかハリー・オード!!」

「ユニバァァース!!っ!?」

「月光蝶である!」

「いや、長いのよ。チームワークでぇ!もいいから、とりあえずガン◯ムからは離れて」

「はっ、仰せのままに」


分岐終了


「じゃあストライクはデカ過ぎたとしても、具体的な限界は調べた方がいいかもな」

よし、じゃあ同じ前期GATシリーズの

「先に言っておくけど、ブリッツは見えないから出せるとかはないと思うよ」

「……はい」

釘を刺されてしまった。



ま、物差しでも出してみるか。まずは一尺から。

竹尺をイメージする。


「これ何m?」

「一尺」

「……なんでメートル法じゃないの」

「なんとなくです、すみません」

「んでその一尺は正確なの?」


……それは考えてなかった。

イメージによって作られるのだから一尺の長さも変わるのか?


「我が妹君よ。一尺の竹尺を」

「よしなに。いや、1メートルで良くない?」

「とりあえず出しちゃったし一尺で」

「ん」


妹の手の上に竹尺が現れた。

先程出したものと合わせてみる。


「これは凄い。目盛りも目盛りの形も同じだ」

「だね。ということは思い浮かべるのは数字の部分ってことかも」


ふむ。

じゃあ1メートルとかもそうなのか?


まあいいや、とりあえず続けよう。

いっけn

「今度はメートル法でね」

「……はい」


気を取り直して続けよう。

5m——出た。10m——出た。20m——出た?

「ちょっと待ってこれどういうこと。ストライクの全高は17.72mだぞ?」

「じゃあ体積か質量でしょ。ちょっと落ちいて」

「……はい」


じゃあ10Lの水から。


***


結論から言うと制限はないように思える、ということだった。

「結論出てねぇじゃん」

「……条件がよくわかんない。GAT-X105 Strike 全高17.72m 本体重量64.80t。でも水は100tは出た。となると重量制限じゃない。んー……」


そのまま妹は黙ってしまった



いまいち条件が見えて来ない。


例えばライトセーバーは出なかった。

正確にいうとそれっぽい物は出たが強力な赤外線光が出ただけだった。

とはいえ普通にコンクリートが溶ける熱量ということは1,200°C越えだったけど実体はなかったので鍔迫り合いはできない。(そんな設定のビームサーベルがどこかにあったなあ。いや、リマスター前ならできるな)


閑話休題それはともかくとして


他には立体機動装置を出してみたが、ガスやワイヤーなどもイメージした原作通りに再現されていた。

試しに吹かしてみて離れ離れになるところだったのはさておき。

移動手段としては必要ないけど男のロマンだな。



「喉渇いた。なんか出して」

「目の前に頭悪くなりそうなくらいの量の水があるよ」

「いや、うーん。なんかコレは飲みたくない」

「なんで?」

「……なんとなく」

わからなくもないが。


水分補給ならポカリスエットが1番だ。

500mlのポカリのペットボトルを出す。


ポカリスエット®︎

……あれ?


「ねえ出したならちょうだい。焦らしプレイは嫌いじゃないけど今じゃないと思う」


改めて手元に出したペットボトルをまじまじと眺める。


「なあ、これわかったかも」

「え?」


試しに「ティッシュ」ではなく”Kleenex®︎”を思い浮かべる。


「出た」

「ティッシュじゃん。このかわいい妹をオカズにするってこと?」

「やかましいわ。かわいい妹はオカズになんかならねぇよ。そうじゃなくてだな。おそらく登録商標か一般名詞はイメージがなくても補完されるんだよ」


「なるほど?」

「今ポカリスエットを出したけど、俺は詳しい成分比まではイメージしてないんだよ。知らないし」

「……ってことは?」

「おそらく固有名詞がグレーゾーンなんだと思う。ライトセーバーとか立体機動装置は完全にイメージ通りの形状だった」

「……なるほどね。とりあえずそのポカリちょうだい」

「あ、はい」


ひったくるようにポカリを受け取った府蘭は、キャップの封を開けてから無重力であることを思い出し、でも面倒だと思ったのかストローを出さずに飲もうと試みるが、やはり飲みにくそうにしている。

見ている方がもどかしいのでストローを出した。


「……どうも」


……



さて、この大量に出してしまった物達どうしよう。


水やら棒やら金属やら。

デブリベルトってこんな感じなのだろうか。


「ねえ。これどうする?トイレみたいにその辺に捨てて行くわけにもいかない気がするけど」

「だよねぇ」


うーん。


「Nuclear?」

「マジモンの黒歴史じゃん。っていうかデブリごとあたし達が蒸発するでしょ」

「それもそうか」


暫しの静寂と、時折宙を漂う物同士の衝突音。


ふと何かを思いついたのか、妹君が1番大きな水塊に向かって手を伸ばす。

そのまま見ていると、輪郭がぼやけ、ふっとかき消えた。


「まさか消えろって念じたとか?」

「そうよ、そのまさかよ」


なんのこっちゃない、消せるのだった。

「じゃあ手分けして消していこうか」

「あい」


近くにあった金属塊に意識を向け、消えろと念じる。すると1秒もしないうちに輪郭がぼやけて消えていく。とことん御都合主義だな。


……?


「なあ妹よ」

「ん?」

「消えろって念じたんだよね。」

「うん」

「……初めに消したのって確か20tの水だよね」

「多分。……どした?」

「20tの水が一瞬で完全に消滅したら真空になるんじゃないの?」

「……確かに。……え。じゃあここ元々真空ってこと?」

「いや、消滅させたら自動で空気が補充されるとか?」

「えぇ……」


確かめてみるか。

蝋燭とライターを出す。


「ライターだけでいいでしょ」

あ、そうか。

少し動転していた。

シュッと火花は散ったが、火はつかなかった。


「……つかないね」

「ということは真空なのか」

「それはどうかな。酸素がないだけ、とかも考えられるけど」

「ふむ。どちらにせよ俺たちは窒息してないんだな」

「そうね。生きているというのは、それだけで喜ばしいことだね」

「結局真空かどうかはわかんねえな」


わかったのはいのちのかがやき。


「あ、じゃあ兄上。ちょっと耳栓してみて」

「ん」


ゴム製の耳栓を創って耳にはめる。

「いいぞ」

猿のように頭の上で手を叩く府蘭。

音は聞こえない。

「かわいいな」


『すぅ……府蘭!お兄ちゃんのこと!だぁーいすき☆!!』



……


「あの、唐突なキャラ崩壊やめてもろて」

「いいじゃん別に。聞こえても恥ずかしくないし」

「そうか。まあとりあえず音というか声は仮想空気(仮)みたいなものを伝播してるってわけでもなさそうだな」

「距離とか色々検証したいね」

「だな」

「まあでも、とりあえずこのデブリを片してしまおうか」

「りょーかい」


***


「さて、これからどうしたものか」

「今日はもう疲れた。なんか楽しいことしたい」

「例えば?」

「S○X!」

「やめないか!」

「んっふふふ。……まあ冗談はさておき」

「それが冗談であることにお兄ちゃんは安心したよ。」


そもそもこの空間は何なのだろうか。

目的地はどこだろうか。

何故俺達はこの空間にいるのか。

俺達は何をすればいいのか。


「そもそも無重力環境で上手くできるもんなの?」


「え。その話引っ張るのか」

「いや、元の世界でやったことある人居ないわけじゃん。ISSでおっぱじめるわけないだろうし。なら気になるでしょ」

「そういうもんか? まあそもそも妹相手に勃つモノがないという話だが」

「こんなにかわいい妹なのに?」

「うーん。かわいいから勃つってわけでもないよ」

「じゃあ何が足りないのさ」

「色気」


……


「……はい」

「いやなんかごめん」

「謝らないで。余計傷付く」

「そうか。この話を引っ張ったのはお前だがな」

「……」

「お兄ちゃんはいつでもかわいい妹の味方だぞ」

「……」


何故か残念な感じになった妹を横目に、改めて辺りを見渡す。


見渡す限り何もない空間が拡がっている。

光源がある訳ではないのに瞳にハイライトが無い妹の顔ははっきり見えるというか、陰影が存在しない。


やはりかなり異様な光景である。


四方八方から見えないだけで平行光線が当たっているのであれば影ができる筈なのだが、それもない。


左手に見える光点は相変わらず静かに光っているだけだ。



「あ、そうだ。重力が欲しい」

「え」

「え?」

「え?」

重力、、、だと?正気か貴様。


「重力ってあれだぞ。全ての肉体的苦痛の元凶、諸悪の根源、魂を地の底に縛り付け、戦いを生み出す権化だぞ?」

「いやそこまで言わなくても……いや間違いではないけど。でも実際のところ、日常生活の上ではすこし不便なのよ。トイレ然り風呂然り。洗濯はしなくてもいいけどさ」

まあ、それはそうだ。


2日目の夜、妹がトイレに行きたいと言い始め、携帯トイレを出してその中にすることになった。

因みに先程初めて出した物を消せることが判ったわけだが、今までの分はポイ捨てである。

許せこの名も無き世界よ。


御都合主義なんだからそういうところもちゃんとして欲しかったが、腹は減るし用も足さないといけないらしい。世知辛いな。


「あと、そろそろ湯船に浸かりたい。日本人としては」

「そんなに根っからの日本人だったのか」

「もちろん。正月に神も仏も気にせず初詣とやらにに行って小銭を撒き、若人が命を燃やして走る様を観ながら餅を食い、2月にはチョコを配って真偽不明の建国記念日を祝い、2月に配った3倍の旨いものを回収し、年度初めには嘘を吐きながら面識のない誰かの復活祭と昭和天皇の誕生日を祝い、あまりにも変わらない憲法制定を祝い、土用の丑の日には鰻を食べ、敗戦国の末路を先祖にびながら盆は踊って墓に参り、10月末には訳も無くお菓子を強請ねだり、クリスマスには知らない人の誕生日ケーキを食べる、生粋きっすいの日本人だが何か」


ところどころアレな部分もあるが、おおむね間違っていないな。


風呂。それは命の洗濯。

宇宙空間だと水は貴重だから元の世界の宇宙飛行士も湯船なんて贅沢品はなかっただろうし、そもそも無重力環境下で湯船に浸かるなんて事はできないと思うのだが。


しかし、久しぶりに湯船に浸かってゆっくりしたいのも事実だ。


蒸しタオルで体を拭くだけではやはり気分が悪い。せめてシャワーくらい浴びたい。


「身体を拭いてきれいにするのは清拭せいしきって言うんだって」

「そうか。なんで伝聞形式?」

「これ書いてる人がさっき漫画で読んだから」

「思いのほかメタ過ぎる理由だった」

「虚構新聞の市田さんが描いてる まんが欄の記念すべき第300話 『4コマ』に出てくる話だよ」

「情報提示ありがとう。市田さんのまんがが好きなのはわかったからとりあえず離れよう」

「正式には清拭、アハハ」

「アハハじゃねー。って元ネタのやり取り真似すんな」


とはいえ蒸しタオル改め清拭でずっと過ごすのは流石に嫌だ。何かいい案はないだろうか。


「のどかわいたー。ポケリスエットだしてー」

「え?さっき出したじゃん」

「もう全部飲んだよー」

「ていうか自分で出せるのでは?」

「……それが不思議なことにできないんだって」

「えぇ……」


また謎が増えた。

かわいい妹がいくら手のひらを睨みつけても出るのは水だけだ。

「悪化してない?」

「……うん」


以前オレンジジュースを出そうとした時は、薄いみかん風味の液体が出ていたのだ。


「あ、いや悪化はしてないのか」

「?」

「単に元のポカリスエット自体濃い味のものじゃないからね」

「あー。そーゆーことね。完全に理解した」

「それはわかってない奴のセリフなんだがそれはともかくとして」


風呂ねぇ……風呂……ユニットバス……シャワー……シャワーヘッド……湯船……水道代……光熱費……家賃……滞納……夜逃げ……ホームレス……不衛生……生活保護……QOL……衣食住……風呂なし東向き1LKの六畳一間……なにかんがえてたんだっけ……


「お風呂でしょ」

「そうそれ。で、なんで君は僕の思考の中に返事ができたのかい?」

「えーそりゃあだってー……妹だもの♪」

みつを。って付くやつか?

頼むから身体をくねくねモジモジさせながら言うな。

「ごめんって」

まあいいけども。


シャワーは水道というか水圧を掛けないと難しいだろうしマジで色々難しそうだな。


とは言っても湯船というか大量の水を溜めておくにも無重力じゃあ無理だし……



いや、待てよ。さっき水を大量に出した時、球状にまとまってたよな。

お湯を大量に出せば、浸かれるのでは?



「府蘭、風呂入れるぞこれ」

「え。ほんと?」

「まあ見てなって」


10tのお湯40°Cを生成。

服を脱ぎ始めると察した妹も負けじと服を脱ぎ、我先にと湯に飛び込む。


「あつっ」

「んっ……ふぁー……」

「おー……これはいいな……」


水の中で器用にくるりと回って腕の中に入ってくる府蘭。


湯船どころか周りには何もないのに温かいお湯に入っているという不思議な感覚だが、とても気持ちのいい湯加減だ。


思わず寝てしまいそうになる。


湯船ゆぶねかったままの寝落ちは失神しっしんとほぼ同様の状態。そのまま脱水症状だっすいしょうじょうになったりおぼれたり最悪死に至るのでマジでやめましょう


唐突の注釈終わり


「なんか、露天風呂より開放感あるね……」

「まあそりゃあ、上下前後左右、全方向何も無いからねぇ……」

「…コンクリートの足場も消したんだっけ……」

「そういえば消してしまったな……」

「………」

「………」



〈〈〜〜♩〜〜♩〜〜♩〉〉


 

 突然爆音で響き渡る、間伸びした鐘の音。

 

 「もうお昼か……」

 「みたいだね」

 

 これで鐘の音がするのも5回目になる。

 

 「初日の府蘭のビビりかた面白かったなぁ」

 「そりゃいきなりあんな音がすれば……」

 尻すぼみに黙り、うなじが少し赤くなる府蘭。

 

 「まあ漏らすほどとは思わなかったなぁ。」

 「——っ!」

 「もう中学生にもなる妹が涙目でお漏らししてるのはちょっとかわいぐほぅ」

 「しね!」

 「——っ!」

 きっ、キン◯マがっ……

 

 ###

 

 「……ひ、人の心とか無いんか……」

 「ふん」

 

ホワイトアウトした視界の向こうから、蝙蝠こうもりの翼を生やし真紅の瞳で両手を広げてにっこり微笑ほほえ怜未れいみが見えた時は、マジで死ぬかと思った。


当の妹君は無言でお湯から抜け出し、虚空からバスタオルを出すと躰を拭き始めた。

時折「ふんっ」とか声が漏れるあたり、まだぷりぷり怒っているらしい。

人の急所を蹴り上げておきながらなんちゅー態度だ。


「お前には許されない。妹様には許される」

「はいはい!私が悪ぅございました!」


やれやれ、全くとんでもない妹を持ってしまったもんだ。


オマージュパレードはこの辺にして、これからどうするか決めないとな。


「府蘭、これからどうする?」


ついーっ


「ぷはー。無重力だと牛乳ぷはーもできないんだよね」

「今やってたじゃん」

「いや、そうじゃなくて、なんというかこう。のどごしがないというか」

「言わんとすることはわかるけども」


文句を言いながら牛乳瓶を空にする府蘭。

そういえば風呂上がりの牛乳って日本人だけなのだろうか。

「らしいね」

へー、そうだったのかー。神奈川県民の熱愛グルメー

「ケンミンSHOWの小林ナレーターの真似しなくていいから。」

「エブリケンミン、カミングアウト!」

「その文言無くなったらしいよ」

「ウッソだろ」

「おかしいですよカテジナさん!」

「……なあ。中身のない会話やめない?」

「もう一回キンタマ修正した方がいいかね」

「すみませんでした」

これに関しては俺が悪かった。



「で、これからどうする?……それともその前にその格好にツッコんだ方がいい?」


「いや、触れなくていい。文字に起こさなければ問題ない」

「もし仮に映像化される場合に危ないから控えて頂けるとお兄ちゃん嬉しい」

「そんな未来は存在しない」

「黒歴史ってか?」

「核ハイボールがお好きでしょ?」

「ツッコミが追いつかねえわ」

「嫌よ!なんであたしがおにいのいうことなんか聞かないといけないの!おにいのくせに馴れ馴れしくしないで!」

オマージュ発言なのでリアクションは割愛。


「で、540字前に戻るけど、これからどうする?」

サラサラのお下げをくるくるしながら光点を見据える。

髪を乾かすのもドライヤー要らずか。だいぶ府蘭もこの世界の住人になってきたな。もし元の世界に戻ったとしたら苦労するだろうなぁ。


元の世界に戻ったら、か。


「……お兄はさ、この世界のこと、好き?」

「Hmm.That is a good question.」

「それ完全に濁すときのリアクションじゃん」

ばれたか。


この世界が好きか、ねえ。

確かに何もしなくても飯は食えるし、寒くもなく熱くもなく、非常に過ごしやすいことは確かだろう。

まさに創世記に書いてある通りのエデンの園である。


そもそも元の世界が大好きだったかどうかと言われても微妙ではある。


アダムとエバがエデンの園から追い出され、生の苦しみを味わうために堕とされたあの地上が果たして本当に幸せなのだろうか。


そもそも幸せとは何だろうか。

満足感?充足感?

どれも違う気がする。


「わたしはさ、このままでもいいかなって思ってる」

「どうして?」

「だって何のストレスもないよ?飢えも渇きもないし体の痛みも眠気も感じない。それにムラムラもしないでしょ?」

「え?妹相手に?」

「私はしなくなったよ」

「じゃあ、前は実の兄に欲情してたってマ?」

「乙女にそんなこと何度も言わせんな恥ずかしい」

「待て真顔で顔を赤らめるんじゃない」

まじかよ。マジで気付かなかったわ。

そんな目で見られていたのか。

「その好意に全く気付かなかったお兄ちゃんはダメなお兄ちゃんだったか?」

「好意じゃない欲情だ勘違いすんな」

「え。怖」

「あとれみねえもだよ」


は?


「まあそれはそれとして、とにかく元の世界に戻ることの魅力があまり感じられないって話。」

「いや待ってこれ元の世界に戻ってはいけないやつでは?」

「そんなに姉妹丼がお嫌かね?」

「好悪ではなく貞操の危機だよ」

「バレなきゃ犯罪じゃないんです!」

「惑星保護機構に連れて行かれるぞ」

「そして誰もいなくなるか?」

「あ、やっぱり府蘭ってフランドールから取ったのぜ?」

「あたしだけならたまたまかもだけど、お姉さまが怜未れいみな時点で確定でしょ」

「まあね」


それはそれとして、まじでとんでもないことを聞いてしまったぜ。

というか聞かなければ良かったぜ。

これどういう心境で過ごせばいいんだぜ。


「大丈夫だって。ここに来てから全く発情してないし襲うつもりもないから。もし襲いたくなったら寝込みを襲うから安心して」

「全く安心できないなぁ……」



***



「あ、そういえばだけどその服はできたらせめて原作準拠のドレスに着替えてくれると嬉しい。なんていうかふとした瞬間に言及してしまいそうで怖いから」

妹はわざとらしく頭のリボンを引っ張りながら器用にターンし始める。無重力なのにすごいな。

「えぇ。このドレス気に入ってるんだけど。真っ赤でふりふり付きの水玉模様」

「いくらここが別次元とは言えD社の力は多分及ぶから」

「D社怖。愛しの御兄様のお願いとあらば聞き届けないわけにはいきませんね」

くるくるとY軸回転を続けながら府蘭の姿がぼやけ、光っていく。プリキュアの変身バンクかな?

足元からぴちっとしたブーツに覆われていき、どぎついラインのハイレグスーツを身に纏う、ピンクのリボンでロングツインテールに髪が結われて最後に決めポーズとフラッシュエフェクト。

「雷撃の対○忍の力、みせてあげる」

「いや逆にアウトだろ」

対魔○じゃねえか。しかもフラッシュエフェクトとか器用なことするな。

「というかふと思ったんだけど、髪の毛伸ばせるならあの馬鹿みたいな虚乳とかにもできるんじゃないの?」

なんなら髪の色も少し変わってるし。

しかし妹は何を仰ってるんですかと言わんばかりのキョトンとした顔である。


「え?だってお兄ちゃん貧乳のほうが好きでしょ」

「……はい」

これ以上深掘りしても絶対にいいことにはならないので話を逸らす。

「とりあえずお腹すいたから昼ごはんにするか」

「はーい」

「食べ物はまあ各自で。飲み物何がいい?」

「おにい「それ以外で」

それは飲み物じゃないだろう。

「じゃあお兄ちゃ「だからなんでお兄ちゃん、から始まるのかなぁ?!」

はぁ。

なんか相手をするのも馬鹿らしくなってきた。お昼ごはんは何にしようかなぁ。


今日は日本の素晴らしき食文化、お弁当にするか。

何が素晴らしきなのかと思った諸君。日本のお弁当という食文化は案外日本固有のものであるのだぞ。

例えば我らがブリカスことイギリスやアメリカなど欧米諸国の多くの国はランチボックスとしてサンドウィッチやバナナ、チップス、リンゴのみといった食べやすく手間も少ない、といった言うなればおやつに近いものであったりする。

それに対し、ある程度おかずとお米などのバランスをとりつつ、冷めても美味しい極東島国日本JAPのお弁当は海外でも注目されている食文化なのである。

ちなみにだが、お隣の中国では冷めたご飯、特にお米を食する文化がなかったため、お弁当産業が進出した際には苦労したらしい。

まあお弁当の与太話はこれくらいにしておこう。お腹すいたし。


何弁当にしようかな。

スタンダードなのり弁当や唐揚げ弁当でもいいしなんならすき◯の牛丼とかも良いかもな。あれ2000日毎日とか食べれるくらいにはうまいからな。

「あたしは絶対無理」

まあひとによるか。

「府蘭は何にしたんだ?」

「とろ~り3種のチーズ牛丼特盛温玉付き」

「すき家じゃねぇか」

思いっきりすき家じゃねえか。今自分で無理とか言ってたくせに。


「毎日は無理ってだけで口に入れるのもおぞましいとか言ってるわけじゃねえよキン丸マもぐぞ」


おー怖。

とりあえず自分の昼ごはんはエッグチーズマフィンセットにするか。

朝マックのメニューを昼に食べるという背徳感。

堪りませんねえ。

……あれお弁当の話どこいった?


***

###



〈–––のは〜なが つ〜ぼんだ

つ〜ぼんだと お〜もったら

い〜つのま〜にか ひ〜らいた〜〉


「……また微妙に不気味な歌で起こされた」

兄貴はこんなふうによくわらべうたを唄う癖がある。

しかもそれは決まって私たちが寝ているあいだ・・・・・・・・・・・に。より正確には、私たちが寝入ねいる前や起きる時にわらべうたを唄っているのをよく耳にする。


『これは失敬。すっかりおやすみになられていたおねむだったようで』

「んんーっ、…子供扱いしないで」

まだ覚醒し切ってない頭を振りながら目をひらく。

と、西陽の眩しさ・・・・・・で眉を思わずひそめる。


「私どれくらい寝てた?」

『んー、3時間くらいかな』

「結構寝ちゃったわ」

『まあ時間はいくらでもあるから大丈夫だろ』

「それもそっか」

伸びをしながら目を開く。

家の2階、六畳間の兄の部屋だ。

窓は開け放たれ、外のぬるい風が入ってくる。

どうやら兄のベッドで寝てたらしい。

さて、起きるか。


???????


まて。

何かがおかしい。


西陽にしび

兄の部屋?

ここは、、、どこだ?


『どこだと思う?』


「えっ?」


『ここは、どこだと思う?』


「誰?」


『心外だなぁ。誰よりも君のことを愛している人間の一人さ。』


「じゃあお兄ちゃんか。」


『御名答♡では改めて、ここはどこでしょう』


どういうことだろう。

さっきまであの何もない無の空間にいたはずだ。

なのになぜ、私たちの自宅にいるのだろう。

自宅を作った?いやしかし外の景色まで再現されている。

街ごと作った?そんなまさか。いや、できるのか?


いやまて。

我が最愛の兄のことだ。これも何かの実験に違いない。

となるとただ力技で全て作ったとかではない気がする。

現に外を見ると夕焼け空や夕陽、夕方のゆったりとした空気、部屋を見れば昔二人で剥いだ襖や日差しで焼けた畳、使い古した勉強机、どれも記憶通り・・・・だ。

いや、時計の位置ってあそこだっけ。んー、ベッドの真上だったような…


––––!!


瞬きした瞬間に東側の長押なげしに掛かっていた時計が消えた。

もしやと思って頭上を見ると、時計が移動していた。

いや、まるで最初からそこにあった・・・・・・・・・・かのように思える。

私の記憶を参照しているのか?


『惜しい』


何?

惜しい?


『試しに何かさわってごらん』


ベッドに手をつき、ヘッドボードの脇にある黄ばんだ白い目覚まし時計に手を伸ばす。

しかしその手は霞を貫いただけだった。


「……」

『そんなあからさまなしかめっ面しないでよ。これでも結構創るの大変だったんだから』


兄は何を創ったんだろう。

まあそれを当てて欲しいんだろうな。

多分これも、私が「お兄ちゃんの姿が見たいよ〜」などとわめけば直ぐに終わるのだろうけど。

いや、一旦この謎の技術で結像して騙してくるかもしれないか。

鬼畜兄貴典型的なオールドタイプめ。

そういえば思考はトレースされてたんだっけ。


はてさて。

少なくとも今あぐらをかいているベッドには実体がある。

さっき手をついたし、今も私の軽い・・体重を支えている。

『BMIは平均ちょい上だぞ』

「うるさい」


そうだ。

私もイメージを出したり消したりできるんだった。

ベッドの消失をイメージする。


「いてっ」

盛大に尻餅をついた。そりゃそうだ、座っているものを消したら落ちるに決まっている・・・・・・・・・・


「重力!?」


「お〜お〜あ〜た〜り〜」

ばっ、と視界がひらけ、何もない無の空間と満面の笑みの兄が出迎える。

「はい」

「何だその不満そうな顔はー」

「いや、起き抜けになんか変なことされたら誰でも多少なるでしょ」

「それもそうか。で、どうよ」

「何が」

「お待ちかねの重力」

あーーー。なんか言った記憶あるな。重力が欲しいって。



いや。

うーん。

そんなことよりですね。

「で、さっきのは何?」

「さっきのって?」

「お兄ちゃんの部屋だよ!」


––––––––––キリトリ(没)–––––––––––––


「うん。よく再現できてたぞ。でもバンシィの造形は少し甘かったな」

「は?」

「あと本棚の蔵書も少し足りなかったぞ。まあそもそも本は全部中身酷かったけどな」

「……えっと。お兄が創ったんじゃないの?」

「いや?俺が重力の実験してたらなんか発生し始めたって感じだな。最初に箱は創ったけど」

「箱?」

「いや、もしブラックホールとか創っちゃった時のために『絶対に壊れない箱』で府蘭を囲んでおいたんだよ。そしたら最初にベッドが発生して、箱が書き換えられるように俺の部屋が作られて、家全体ができて、前の道路ができて、10分も経たずに家の周辺はできてたよ」

無意識の私が創った……?


–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



こういうの細かい設定を考えるのが面倒だからこの話雑な設定を始めたのに、ここの理屈を考えるのに年単位で時間を使うのは本末転倒じゃなくって? 御兄様?」

そのとおりでございますExactly

まじでそう。愚か。

「で、筆者大アルカナ0番は何か思いついたの?」

「ええ、それはもう。満足のいくものが」

「では話しなさい」

「御意にござりまする」

「なんの茶番?これ」

「筆者の言い訳タイム」

「あっそ。いいから続けて」

「アッハイ」

流石はお嬢様末っ子である。


「多分だけど願望器の誤作動かと」

府蘭が昼寝を始めた後、重力を作ろうと思い立った。

思い立ったは良いが、私の足りない頭では、必要な重力をE=mc²に則って安全に且つ安定的に顕現させる方法が思いつかなかった。

暫くの間足りない頭を物理的に絞って遊んでいると、概念だけを抽出できないだろうかと思い立った。

でも思考した概念がダイレクトに顕現するのは怖かったので、器を介することにした。

||~~あまりにも日本語が覚束無い~~||


「聖杯戦争?」

「いや元ネタはそれだけどさ」

「あっそ」

「え。今の流れで仕組み聞かないとかある?」

「いやもう長々と話したでしょ」

「そっすね」

あーいすいまてーん。

「懐かしいわね。あとキャラぶれてるわよ」

「鏡をご覧」

「あら美しい御尊顔。見惚れちゃうわ」

「最早誰だよ」

「鏡よ鏡。この世で一番美しいとされている私の顔を映しなさい」

「それは最早ただの鏡では」


いつの間にか来ている服が如何にもなお嬢様ドレスになっている。

文字に起こすならば、『レミリア・スカーレットの服を着たフランドール・スカーレット』になるだろう。わざわざ髪もブロンドにしちゃって。かわいいね。


「ここでいきなりキャラ増やすのは安直かな」

「間違いなく安直ではあると思うけど」

まあ展開として悪くはないとも思うけど。

「以前から存在が示唆されていたキャラの登場とかは?」

「もうそこまで言うなら素直に怜未ねえに会いたいって言えばよいのでは?」

「いや?別に?そういうつもりじゃないけど?」

「図星じゃん。その反応は」

「図星ってなに。ちがうけど」

「そっぽ向きながら言われてもねぇ」


「じゃあお兄ちゃんは会いたくないのさ?」

「いや別に会いたくないとは言ってないよ」

「じゃあいいじゃない」

「俺が悪かったから拗ねないで」

「ふん」

府蘭はこういう時、放っておいても機嫌を直してくれるので好き。

「こういう時、放っておいても機嫌を直してくれるとか考えてんでしょ」

「うん。だから好き♡」

「やったぁ♡」

「語尾にはーとはちょっとキツいかなぁ」

「さっき出した鏡あるから貸してあげるよ」

「ありがとう。優しいね♪」

「どういたしまして♪」

なんと気の利く妹だろうか。


「で、新キャラの実装ってどう思う?」

「とりあえず天井まで回してから考える」

リークとか見たうえでとりあえず引く。それが礼儀ってもんよ。有名な偉人も言ってた。課金は家賃まで。

「そういえばお兄ちゃんはそうだったイカれてたね」

「そういう府蘭は完凸勢じゃんかよ」

「私は推しだけだから。お兄ちゃんはほぼ全キャラ完凸じゃん」

「まあ歴が長いからねぇ。すり抜けとかで段々と」

「嘘つけ絶対課金してたゾ」

「そうだよ」


「で、何の話だっけ」

「祇園精舎の鐘の音」

「そうだね。諸行無常だね」

「とりあえず今回の新キャラ実装は見送りで」

「なんでさぁー」

「事前告知に留めるんだよ」

「なんでさぁー」

「購買意欲を煽るため」

「この小説そんなにどころかほぼ誰も見てないよ」

「まあ、今じゃなくていいかなぁ」

「お兄ちゃんが言うならそれでいいけど」

素直で聞き分けの良い子である。かわいいね。


さて、どうするか。

府蘭が昼寝から目覚めたはいいが、そろそろ日没である。

残念ながら陽は登らないし沈まないので、正確には2001/01/05 東京 における日没時刻のはずである。自分の記憶が間違っていなければの話だが。

「夜と昼欲しいよね」

それはそう。一応出した時計通りに毎日寝起きしているが、やはり昼夜の概念は欲しい。

「というか家みたいな居住スペースを作ればいいのでは」

「やだ」

「なんでさぁー」

「出たくなくなるから」

「家ごと移動すればいいのでは?」

「やだ」

「なにか別の理由があるわけか」

「やだ」

意固地モードに入ってしまった。


「風呂掃除したくない?」

「やだ」

「トイレ掃除したくない?」

「やだ」

「お兄ちゃんの料理食べたくない?」

「や……」

「お兄ちゃんが嫌い?」

「……わかってて訊いてくるのは少し嫌い」

「そっかぁ」

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ラpiリンス 和寂 @WASA-B

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