死活問題

解散理由。

『ねぇー、ねぇー。黒――ぜんざい、しよ！』

『ぜんざい？』

『そ、ぜんざい』

『たべたいの？　ぜんざい。うーん、小豆（あずき）は大丈夫か。でも――餅（もち）は殺されそうな気が』

『違う、の。お話して、笑わす、の』

『ぁー。漫才（まんざい）、な』

『それ。まんざい、まんざい、が。したい、の』

『いいけど。漫才するには、コンビ名が必要になるぞ』

『かふぇおれ』

『カフェオレ。また、犬に、酷（こく）な、コンビ名にした、な。白』

『…………？　だめ、なの。黒』

『俺ら、コーヒーのなかに入っているカフェインに弱いから。少量でも摂取すると、下痢（げり）、嘔吐（おうと）、ふらつき。それから痙攣（けいれん）を起こしたり、不整脈（ふせいみゃく）や呼吸困難。最悪――死んでしまう』

『漫才できない、よ――黒とは！』

『ぇ！　はぁ？　いきなり、どうした』

『近づかないで、黒』

『いや、いや、いや。白から漫才しよって、誘ってきて』

『うわーん。黒。近づいてこないでーぇーえー』

『ええーっ！？　おい、ちょっと待てって！　白』

『うわーん。黒。ついてこないでーぇーえー』

「ママ。さっきから吠えてるから、犬語翻訳機で調べたら。白と黒、漫才しようとしてたみたい」

「へぇー。あの子たち、また、変わった遊びするの好き、ね」

「ママ。白と黒、どうして漫才するまえに、コンビ名で解散しちゃったんだろう」

「ぁー。それは、白が、考えた、コンビ名、が、問題なのよ」

「かふぇおれ。が」

「そう。カフェオレ、が」

「なにが、ダメなの」

「予想だけど。白は自分がミルクで、黒がブラックコーヒー。と、イマージュして、二匹混ぜ合わせて――"かふぇおれ"ってコンビ名に、したから」

「ぁーあー。なるほど、死活問題だ――そ、れ、は」