ザ・バイブ!(KAC2022:④お笑い/コメディ)
風鈴
最強の聖者爆誕変、、あっ!ちがうわ、編!
☆第0話 啓示!
『おめでとう、恵まれた方。
御使いガブリエルが、神から使わされて、極東の国、日本の、
「真理奈!お告げがあったのよ!その子を早く、私に預けなさい!」
「うえっ??何を言ってるの、おねえちゃん!この子は私の大切な子よ!怖いよ!!おねえちゃん、すっぴんよ!」
「うえっ!!」
こうして、それからは、真理愛により、真理奈の子は聖なる英才教育を受けることとなった。
もちろん、真理愛の子供になった訳ではない。
その子の名前は、
まだ童貞の3歳であった。
☆第1話 洗礼(バブテスマ)!
ヨハネ司祭(㊟司祭とは神父と同義だが神父は尊称であり、司祭は役職名である。カトリック教会や正教会で使用。牧師はプロテスタント。だが、この話はクリスト教なので、その区別は当てはまらない)は、聖人マルコの名前を信徒信義帳の新たなページに記載しようとしていた。
(
そう呟きながら、信義帳に記す。
(久しぶりじゃな、この聖人の御名を記すのは!)
黒いキャソックを着たヨハネ司祭は、その新たなる信徒に対面すると、洗礼の儀を執り行う。
演説台のような台には、その信徒信義帳が開かれ、司祭の斜め後ろには、とても綺麗で、ムネの豊満なシスターが伏し目がちに控えている。
「神と精霊と、我が主、イエス・クリストの御名において、この哀れな子羊、九条達也を神の使徒の使徒として、聖マルコ・・ゴホン、オッホン、聖コマルの名を与える」
(またやらかした。マルコって書いたハズなんだが、コマルとは!コマッタな、ま、いっか!)
シスターは、チラッと司祭を見て、少し訝し気な目をしたが、司祭の深い思慮は自分の想い及ぶものでないと、口には出さなかった。
そして、伏し目がちに、赤いブドウジュースと食パンの白いところだけを千切ったモノを、真理愛に手渡した。
真理愛は、厳かな表情で、おもむろに受け取ると、ブドウジュースに浸けパンし、目を伏せ、おもむろに口の中に入れた。
そして、厳かに全部ごっくんしてしまった。
と、その時、伏せた目が、上目遣いとなり、左手で口を覆い、目をぱちくりと大きく見開いて、付け睫毛をバサバサと音でも立てるかのように瞬きを繰り返した。
「あうううう」
真理愛は、持っていたブドウジュースを全部飲み干し、息をついた。
真理愛は、我に返り、再び伏し目がちになって、手のひらを上に挙げながら両手を広げ、肩をすくめた。
シスターは、それを伏し目がちに見ると、おもむろに真理愛の耳元で囁いた。
『お代わりあります』
真理愛は『頂戴します』と小さな声で言い、再び、伏し目がちになった。
そして、もう一度、真理愛はシスターからパンとブドウジュースを受け取り、浸けパンをすると、3歳の達也の口におもむろに持って行った。
3歳の達也は、イヤイヤをしたが、真理愛が強引に口の中に運んだ。
こうして、
因みに、真理愛の夫ヨハネは、このヨハネ司祭であり、クリスト教では、司祭の妻帯を、ある条件下で許可されている(カトリック教の司祭は、妻を娶ってはならないのだ)。
☆第2話 ザ・バイブ!
真理愛の英才教育は、多岐にわたったが、いつも同じことが最初と最後に行われた。
それは、ロウソクを灯している間だけ(20分)、聖書を読むのだ。
一文ずつ英語と日本語を交互に読むのだ。
英語は、発音を、特に厳しくやったため、達也は、バイブルの発音が極めて流暢だ。
敢えて、日本語表記をすると、バイブゥと言う。
しかし、慣れて速く言うようになってくると、バイブと言った。
しかし、これは、彼の能力を開花させる言葉となったのだ。
その能力とは?
☆第3話 隣人を愛せよ!
ピンポーン!!ピンポーン!!ピンポーン!!
「早く早く!達也!」
「うん、ばかってる!ごっくんこ!」
飯粒を飛ばして返事をする達也は、もう、小学5年生になっていた。
因みに、ピンポーンは、3回が合図だ!
そして、このピンポーンをする子は、
とても可愛い、お金持ちのお嬢さんだ。
小学5年になる前の春休みに、お隣に引っ越してきた、にんじん、ではなく、隣人だ。
「おはよう、いつもありがとうね、れいなちゃん!」
「おはようございます、お母様!いつもお綺麗ですね!」
「あらまあ、毎度ありがとう、ホントの事を言ってくれて」
「うふふふふふ・・・・」
「おほほほほほ・・・・」
二人が盛り上がる中、達也が出て来た。
「おはよう、れいなちゃん!行こう!」
「うん!」
二人は並んで、登校するのだった。
「たっちゃんって、物知りよね。わたし、もっともっと勉強しなくちゃ、たっちゃんと・・その・・・・」
「うん?どうしたの?」
「うんと・・・・」
そう言って、顔を赤らめた麗奈を見つめる達也だったが、達也は、麗奈が何を言おうとしているのかが良く分からずにいた。
(こういう時には、アレだ!ザ・バイブ!!)
心の中で、唱えた。
すると、達也の頭の中に、聖書の言葉が流れ込んできた!
『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ!』
(これは、そう言う事だったのか!!)
「れいなちゃん!僕は、君を愛してる!!一生、健康で幸せになろう!」
「えっ?ええっ!!」
「れいなちゃん、愛してるよ!」
「えっと~、もう、やっだ~~!!」
ばちこーん!!
背中を叩かれた。
「えっ?れいなちゃん?(痛いよ、なんで?ザ・バイブ!)」
『あなたの右の頬を打つような者には、左の頬も向けなさい!』
「いいよ、今度はお腹も叩いてよ、れいなちゃん!」
「えっ?そんな、ごめんなさい~!!わたし、そんなつもりじゃなかったの。もう、照れるよ~~!」
そう言って、麗奈は手を握ってきて、達也の耳元で、小さく囁いた。
「わたしも大好き!!」
二人は一緒に手を繋いで登校したのだった。
☆第4話 悪い者に手向かってはいけません!
「おい、タツ!おめー、一宮のこと、れいなちゃ~んとか、キモイんだよ!」
「かっはっはー!まったくよ~、こんな変わってるヤツのどこがいいんだ、麗奈は?」
女子達の居ない所で、僕は、男子のリーダー的なグループに絡まれていた。
「おい、タツ!一宮と一緒に登下校とかするなよな!」
「だいたい、お前が麗奈としゃべると、麗奈にお前のツバが飛ぶだろうが!麗奈が病気になってもいいのかよ?」
「それは、ダメだ。れいなちゃんが病気になるなんて、絶対にダメだ!」
「おう、そうだろう?」
「よくわかってるじゃねーかよー!だったら、もう少し、えんちょー、しろよな!」
「うん?」(達也)
小声で耳打ちする男子。
『えんりょだよ、えんりょ!』
『ああ、そうとも言うな!』
「いいか、タツ!えんりょーしろよな!えんりょーを!」
僕は、心の中で、ザ・バイブと唱えた。
『悪い者に手向かってはいけません!』
「うん、わかったよ」
それから僕は、れいなちゃんと一緒に登下校をしなくなり、一宮さんと言うようにした。
彼女は不満顔だったが、僕の部屋で二人っきりでワケを話すと言ったら、急に元気になった。
第5話 汝の敵を愛せよ!
「お母様、お邪魔します!」
「あらあら、まあまあ、ごゆっくり、れいなちゃん!おほほほほほ・・・・」
「お構いなく、うふふふふふ・・・・」
母さんは、なぜか上機嫌だった。
僕の部屋にて。
「はふ~~ん・・すーーーはー!!」
「何で、深呼吸してるの?」
「だって、男の子の部屋って、入るの初めてだから!」
「ふ~~~ん、そうなんだ」
「意外と、綺麗に片付いてるね!」
「なんで、ベッドの下とか覗いてるの?」
「うん?えっと、それは・・ほらっ、よくその辺はゴミがあったりして、折角綺麗なんだから、そういうチェックをして、私の女子力を見せようと思ったの」
「ふ~~~ん、そうなんだ」
「で、何で、言いなりになったの?」
「それは、僕、良い事を思いついたからだよ」
「えっ?なになに、その良い事って?」
「それはね~~」
「はいはいはい!二人とも、出来たわよ~、ホットケーキ!それとミルクココア、飲むでしょ、れいなちゃん?」
「あっ、はい!大好物です~~~!うふふふふふ・・・・」
「そう、良かったわ!おほほほほほ・・・・」
母さんが階下へ行ってから、僕達はホットケーキを食べながら話し合った。
「一緒に登校とかできなくなったけど、いつも一緒に下校してるれいなちゃんの友達と、今度は登校も一緒にした方が、もっと仲良くなれるでしょ?それに、れいなちゃんは、こっちに来てから、まだあまり経ってないから、もっと友達を作った方が良いし、もっと女子同士、仲良くなった方が良いから。今、そういう関係を作らないと、みんなそれぞれグループ作っちゃうからね、女子は」
「そう、そんなことまで考えてくれてたの?私の為に?」
「言ったでしょ、僕は君を愛してるからね!」
「でも、許せないわ!病気、うつしても・・・・」
ザ・バイブ!
『汝の敵を愛せよ!』
「いいんだ、僕、アイツ等も愛してるから!」
「へっ?・・そ、そうなんだ!みんな仲良くしないとね!」
(スゴイ!みんな仲良くっていつも言うけど、なかなかできないのに、ステキ!)
「それに学校では、一宮さんって言って、節度のある行動をしないとね」
「そうね!それの方が燃える!」
(お母さんが最近ハマッてる『危険な火遊び』って番組を思い出しちゃった!一人だと火遊びって危ないから、たっちゃんとなら!それに、はいとくの味って言ってたっけ?ちょっと隠れて楽しいことするの。それよ!私もお母さんと同じで、危険な火遊びにハマりそう!)
了
ザ・バイブ!(KAC2022:④お笑い/コメディ) 風鈴 @taru_n
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