後編 ソシエ・マリア・ムッチャマッチョ・パーデンネン
側近さんの話によると、魔女王様の名はソシエ・マリア・ムッチャマッチョ・パーデンネン。
二人のマリアは同じ日、同じ母から生まれた。
ソアラが先で、ソシエが後だったそうな。
戦乱の世にうまれた王女二人はグングーン山に住む大賢者さまの元で武者修行……もとい貴婦人として礼節を学んだ。
そしてソアラは女王として。
ソシエは魔女王として。
まさに表裏一体となり力をあわせて国を一つにしたんだって。
『国を一つにした』っていうのは、あの、わかるよね?
したがわない者は全員ブッ○されたって事。
まあ結果的にそれで平和になったんだよ……。
これでハッピーエンドかと思いきや、魔女王ソシエ様が最後の敵となって女王ソアラ様の前に立ちはだかった!
その理由は!
『お腹の中にいた時間は同じなのに、どうして出てきた順番で上下の差別をされるわけ!?
私はいっつも後、お姉ちゃんがなんでも先!
お姉ちゃんばっかりズルい!』
……だそうな。
バカなの!? ねえバカなの!?
それが国家の命運をかけたラストバトルの理由でいいわけ!?
バカバカしいかぎりだが、二人の姉妹関係をかけた一騎打ちは
二人の魔力が激突し天が裂け。
二人の武力が激突し地が割れた。
妹はイヤ、お姉ちゃんがイイ!
それだけの理由で。
このままでは再建中の王都が
そこで二人をこんなにした
『もう面倒くさいからジャンケンで決めれば?』
と。
賢者様アッタマいい~。
それ以来毎年毎年、女王と魔女王の二人は
超絶バカバカしいけど、これをやらないと最悪国が滅びるっていうんだから恐ろしい。
二人は闘気を高まらせながら向かい合っている。
一騎当千、万夫不当の
女王ソアラが高貴なオーラをみなぎらせながら妹に冷たく言う。
「フッ、去年負けた時に見せた涙、まだ
魔女王ソシエは
「そのさらに前、『ソシエなんてもう知らないっ』とか言いながら部屋に閉じこもったのはいったい誰だったかな?」
ドゴオオオオオオオオ!!!
二人の巨体からすさまじい力の波動がはなたれた。
女王のオーラがオラオラとみなぎる!
魔女王のムードがムドムドとたぎる!
オラオラオラオラオラオラオーラァ!
ムドムドムドムドムドムドムードォ!
二人のオーラとムードはまったくの互角。
もはや物質的な力をもって両者の
バチバチバチバチィッ!!
『もはや言葉は無用!』
オーラとムードが激突し火花散る中、二人はまったく同じセリフをまったく同じタイミングで言いはなった。
そして
「ジャン!」
「ケン!」
『ポオォォォォン!!』
ドガアアアアアン!!
両者の拳が激突する。
瞬間、パーティ会場はまぶしい閃光につつまれた。
なんで光ったのかって? 別にいいんじゃねもう、そういう空間なんだってことで。
閃光がおさまった時、女王の手のひらが魔女王の拳を受け止めていた。
つまり女王はパー!
魔女王はグー!
女王の勝利だ!
「ば、馬鹿な……」
「フッ、パーデンネン王国の女王として、グーには負けられぬのだ」
よく分かんないけど妙にカッコよく聞こえるセリフをはく女王。
魔女王はヨロヨロと数歩うしろに下がった。
女王は速攻で非常な一言をはなつ。
「さあ呼ぶのだ。
私のことを『ソアラお姉ちゃん』と」
「ソ、ソアラお姉ちゃ……。
ウエエエエエエン!」
魔女王は泣きながら敵に背をみせて逃げ出した。
ドスドスと重い地響きを立てながら風のような速さで去っていく彼女。
ちゃんと脱ぎすてたローブを拾っていったので、わりと冷静だ。
きっとすぐ立ち直るだろう。
「さあ
またパーティをお楽しみください!」
喜色満面でそう宣言する女王ソアラに会場全体から
チョーうれしそうです。
そこから先は何事もなく終わったんだけど、その帰り道。
なーんとなくだけど、あのジャンケンまた見たいなあって、僕は馬車の中で思いました。
おしまい。
これだけは譲れない! お姉ちゃん一本勝負! 卯月 @hirouzu3889
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