護衛艦の国

艦長と副長と村長(フワ転)

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うっかり女神の転生ミス……って、護衛艦ごと異世界転移? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

https://kakuyomu.jp/works/16816927862346660239

「第9話 対海賊戦」の直後辺りの会話です。

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高津艦長「ヴィルミアーシェさん、こんにちは」


ヴィルミアーシェ「こんにちは、タカツさま、ヒラノさま」


平野副長「お忙しい時にお邪魔して申し訳ありません」


ヴィルミアーシェ「いえいえ。この度は村を海賊から救って頂き本当にありがとうございました。村を代表してあらためてお礼を申し述べさせていただきます」


高津艦長「まぁ、実際は不破寺さんが一人で海賊退治したようなものですけどね。彼女がいなかったら魔法使いに眠らされて、私たちも殺されていたかもしれません」


ヴィルミアーシェ「あの鬼人族の方にはいくらお礼を言っても足りないくらいです。それでも村の復興のご助力まで頂けるなんて、フワデラの皆様には全村民が感謝していることは知っておいてくださいね」


高津艦長「わかりました。それでは打ち合わせを始めましょうか」


ヴィルミアーシェ「はい」


平野副長「それでは最初の議題ですが、簡易風呂の女湯に男性が紛れ込んでいる件について」


高津艦長「!?」


ヴィルミアーシェ「ええっ!? まさかそんな!?」


平野副長「ジィィィィィ」


高津艦長「ま、まぁ……その件についてはあれだ、つい流れに乗ってしまったというか、ほら、私は幼女だし?」


ヴィルミアーシェ「もし、女性の湯浴みを覗くような不届きものがこの村の男だったら、遠慮なく厳しい処断を下してください。いえ、白狼族の矜持を示す為にも海賊たちと並べて吊ってください」


平野副長「……だそうですが、艦長。私たちも同じように吊るした方がよろしいでしょうか?」


高津艦長「ま、まぁまぁ、ヴィルミアーシェさん。落ち着いてください。今回は警告で、警告で済ませましょう。我が国には仏の顔も三度までと言う言葉があります」


平野副長「二度あることは三度あるというのもありますね」


ヴィルミアーシェ「そうですね。白狼族のことわざにも『最初にハラワタを引き摺り出したら二度はない』というのがあります。いきなり吊るしてしまっては反省する機会さえなくなってしまいますよね。では今回は斧去勢で……」


高津艦長「お、斧?」


平野副長「おしかったですね艦長。今が幼女じゃなかったら宦官になれるところでしたのに」


ヴィルミアーシェ「?」


高津艦長「と、とにかく! そ、そうだな。今後、不埒ものが現れないように女湯の前には武装した水陸機動隊員を配置する。そ、それでいいんじゃないかな?」


ヴィルミアーシェ「タカツさまがおっしゃるのであれば、それで良いのではないでしょうか」


平野副長「私もそれで構わないと思います。それで? 艦長は今日もまたヴィルミアーシェさんと一緒に入浴されるのですか?」


ヴィルミアーシェ「ふふふ。タカツさまとお風呂で洗いっこするのはとても楽しいです。今日も一緒に入りましょうね」


高津艦長「あっ、あーっ、今日は簡易シャワーでいいかなー」


ヴィルミアーシェ「そ、そうですか……(しょんぼり)」


高津艦長「あっ、いや、決してヴィルミアーシェさんと一緒のお風呂に入りたくないということではなく、あの、その今日はい、忙しいので……」


平野副長「ジィィィィィィ」


高津艦長「ちょっ、平野、お前のその冷たい目線で言いたいことは伝わってくるが、それでも考えてみてくれ、私や南を始めとする水陸機動隊は、いま全員が幼女になってしまっているんだぞ。それで男湯に入るのもどうかと思わんか? 思うだろ?」


平野副長「言いたいことは分かります」


ヴィルミアーシェ「?」


高津艦長「そ、それにお前なんて風呂に私が入ってきても全然平気じゃないか!」


平野副長「お互い子供の頃には一緒のお風呂に何度も入ってましたし、私の裸なんてこれまで艦長に何度も見られてますからね。まぁ、介護みたいな感覚です」


高津艦長「だろ? 幼女介護! 介護だからセーフなんだよ!」


平野副長「セーフですか……。まぁ小さい頃からの腐れ縁である、私に関してはそうかもしれません。ではとりあえず奥様にはヴィルミアーシェさんや女性クルーの件だけ報告するようにします」


高津艦長「ごめんなちゃい(土下座)」


ヴィルミアーシェ「タ、タカツさま!? いきなり土下座をされてどうしたのですか? 大丈夫ですか?」


高津艦長「だ、大丈夫だ問題ない。と、とにかく風呂の件は以上! 次の議題に移ろう」


平野副長「はい。では次、女性隊員の更衣室に男性が紛れ込む事案が複数発生してる件」


ヴィルミアーシェ「ええぇぇ!? まさかそんな浅ましいことをするものがこの村にいるなんて! もう全員とっつかまえて吊るしましょう!」


高津艦長「男性じゃない! 幼女だ!さっきの件もそうだが男性じゃなく幼女だろ!」


平野副長「……ええ……まぁ、そうですね」


ヴィルミアーシェ「なんだ男性ではなく女の子だったのですか。ほっとしました」


平野副長「ジィィィィィィ」


高津艦長「いや、その冷たい視線で言いたいことは分かる。分かるよ? でも私たちは幼女なんだよ。そこは分かってくれ。分かってください。くださいませ」


平野副長「やましい心は一切ないと……。現在、自分が幼女になっている立場を利用してセクハラしようなんて考えはないと言うことですね」


高津艦長「……あ、当たり前だろう!」


平野副長「一瞬、間がありましたが? まぁ良いでしょう。とりあえず問題になりそうなことについては都度対策するということにしましょう。断罪は私ではなく奥様がされることですから」


高津艦長「帝国に戻ろうという私のモチベーションを削るのはやめてくれ」


平野副長「それでは次の議題です。簡易食堂で提供されている帝国海軍カレーについて」


ヴィルミアーシェ「あぁ、あの素晴らしい料理のことですね。あのように美味しいものは王都に行ったときも見たことがありませんでした」


高津艦長「ヴィルミアーシェさんと同じように村の皆さんにも喜んでもらえてるようで、何よりです」


平野副長「今は備蓄を使っていますが、この村の食材を使って帝国海軍カレーの味を再現するよう鋭意努力中です。またこの村独自のオリジナルカレーについて村の方と協力して開発を進めているようですね」


ヴィルミアーシェ「それは完成がとても楽しみです」


平野副長「余談ですが、カレーと一緒に提供されるラッシーを白狼族の女性から絞った乳で作ったという持ちネタを吹聴していた料理長は坂上大尉によって鉄拳制裁されました」


ヴィルミアーシェ「?」


高津艦長「あぁ、あれな。私の他にも、そのネタでラッシーを盛大に噴き出してたのが何人もいたようだからな」


平野副長「私もそうですが、坂上大尉は食材の浪費には厳しいですからね。鉄拳で済ましたのはまだ温情がある対応でしょう」


高津艦長「平野だったらどうするかというのは敢えて聞かんからな。それで? 帝国海軍カレーの件については以上なのか?」


平野副長「いえ。本題はこれからです。そのカレーを食べる際に、いちいち女性の隊員や村民、不破寺さん等に『あーん』して食べさせてもらっている幼女について、山形砲雷科長からクレームが入っています」


高津艦長「……」


平野副長「山形曰く『幼女という立場を利用してクッソうらやましい』とのこと。他にも同じような案件で複数の男性乗組員からクレームが届いています」


平野副長「『不破寺さんに抱っこしてもらいながら、あのたわわな胸をモミモミしているのは幼女に見えるけど艦長だよね? 本来の絵面で考えたら犯罪だよな』とか『村長代理に抱っこされたその首元でクンカクンカしてるの艦長じゃねーか! 本来の絵面で考えたら犯罪だよな』とか……」


ヴィルミアーシェ「本来の絵面?」


高津艦長「ちょっと待て! さっきから議題で問題となっているのが特定の幼女に限定されているような気がするのだが?」


平野副長「そうかもしれませんね」


高津艦長「なんだよそれ! まるで特定の幼女だけが問題を起こしていて、それ以外は万事うまくいっている風になってるじゃないか!」


平野副長「まさにその通りですが? 何か問題が?」


高津艦長「えっ? そうなの?」


平野副長「はい。報告ということであれば『今のところ全て順調です』で終了ですね。現在発生している問題に注目すると特定の幼女に起因することしかありません」


ヴィルミアーシェ「特定の幼女というのがよくわかりませんが、私から見てもフワデラの皆さんと村民との協調はとても良くて、素晴らしい連携が取れていると思います」


平野副長「万事順調だからこそ、特定の幼女の際立った行動に注目が集まるのかもしれませんね」


高津艦長「そ、そうか。お、恐らくその特定の幼女は自らの行いを反省していると思う。だからこれ以上、特定の幼女に注目するのはよそうじゃないか。よしましょう。やめてください。お願いします」


ヴィルミアーシェ「それにしても特定の幼女というのはどなたのことなんでしょうか。たくさんいらっしゃいますのでよく分かりません」


高津艦長「よ、幼女と言えば竜子、竜子はどうしてるんだ?」


平野副長「露骨に話題を逸らしてきましたね。艦長の指示通り、竜子はフワーデと不破寺さんに面倒を見て貰っている状況です。二人のおかげで言葉も少しずつ覚えているようですね」


ヴィルミアーシェ「竜子……あぁ、あのワイバーンの少女ですか。巨大で恐ろしいワイバーンがあのような子供に変わってしまうなんて」


高津艦長「それについては私たちも同感です。人間や動物を変化させる魔法についてヴィルミアーシェさんは何かご存じですか?」


ヴィルミアーシェ「いいえ。おとぎ話の中でしか聞いたことがありません」


平野副長「おとぎ話ではそういう魔法があるということですね」


ヴィルミアーシェ「ええ。大きな力を持ったドラゴンや魔物が人間に化けたり、強い魔力を持った魔法使いが人間を動物に変えるといったお話があるにはあります」


平野副長「そうしたお話の中に50人近くの人間を幼女に変えてしまうものはありますか?」


ヴィルミアーシェ「私は聞いたことがありません。お年寄りや冒険者ならそうした話を知っているかもしれませんので聞いておきますね」


平野副長「お願いします」


ヴィルミアーシェ「それにしても、ワイバーンの少女はこれからもずっと子供のままなのでしょうか? 突然、元の姿に戻って暴れたりすることはないのでしょうか」


高津艦長「まぁ、突然、幼女になったわけですから、突然、元の状態に戻ることもあるやもしれませんな」


平野副長「もしそうなっても大丈夫です。竜子が私たちに敵対することはありません」


ヴィルミアーシェ「あっ、その、ごめんなさい。竜子さんのことを悪く言いたかったわけではないのです」


平野副長「竜子は竜子ですから」


高津艦長「お前のそのセリフってカッコいいな! 私に譲ってくれ!」


平野副長「ここは譲れません」


高津艦長「竜子はともかく、少なくとも私と水陸機動隊の50名については早急に元の状態に戻る方法を探す必要があるな」


平野副長「魔法が存在するようなこの異世界で、艦長はともかく陸戦のプロフェッショナル49名が幼女になってしまったのは痛いですからね」


高津艦長「私はともかくって何だよ!とは言いたいが、確かに戦力が大きく削がれているのは間違いないからな」


ヴィルミアーシェ「私たちも魔法について調べるお手伝いをさせていただきます。もし協力できることがあればぜひおっしゃってくださいね」


高津艦長「ええ、ぜひよろしくお願いします」


平野副長「それでは以上で打ち合わせは終了となります」


高津艦長「そうなの? 落ちとかないの?」


ヴィルミアーシェ「オチ?」


平野副長「艦長が何を言ってるのかわかりませんが、打ち合わせに落ちとかないです。それではみなさんまた来週!」


高津艦長「誰に言ってるんだ!?」


ヴィルミアーシェ「さようなら!」

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