ライブラリー
賢者の石
~ 秘蹟 ~
かつて7つの国を贄として聖樹の秘蹟を為した賢者アーロンは、女神による祝福を得て巨大な魔力をその身に帯びた。その後、凝縮した魔力によってその身を翡翠と化した賢者は、英雄の剣によって粉々に打ち砕かれる。
巨大な魔力を帯びた破片は女神の奇跡を呼び込み、小指の先ほどであっても所有者に不死を宿し、あらゆる願いを叶えると信じられている。破片はいつしか賢者の石と呼ばれるようになり、あらゆる時代の権力者や魔導師たちは血眼になってそれを求め続けた。
~ 奴隷の右目 ~
かつて奴隷の右目に賢者の石が埋め込まれたという記録がラーナリア大陸史に記載されている。妖異が世界を覆い尽くした暗黒年、奴隷は悪魔によって一度その命を奪われたが、賢者の石によって蘇ったと言う。
復活という奇跡を起こしても賢者の石はその輝きをいささかも損なうことはなかった。石の所持者たる奴隷は、女神によって神々の園に招かれ永遠の祝福を授かったと伝えられる。
[ref]
https://kakuyomu.jp/works/16816927860409109640/episodes/16816927862062986826
~ 失踪した錬金術師宅に残されていた手記 ~
賢者の石は伝説の存在として語り継がれてきた。この石は、不老不死の秘密を宿すと言われており、多くの魔法使いたちがその力を求めて、長い旅を続けてきた。私もそのひとりだ。
賢者の石を手に入れることは決して容易ではなかった。なんとなれば、それを一見してもただの翡翠の欠片としか見えず、魔法の力でしか見つけることができなかったからだ。魔力を持たない私が賢者の石を探すためには、魔力を感知する何らかの方法が必要だった。
かつて、ある魔法使いが賢者の石を手に入れ不老不死の秘密を探求する過程で、多くの魔法を開発した。彼の残した魔導書の中に、魔力によらず石を見分ける方法が記述されているらしい。
ただ、その魔法使いの名も魔導書の名も、人々の口から語られることはない。単に知られていないという理由ではなく、その魔法使いが行なった恐ろしい所業のために、歴史刑によって存在そのものが秘匿されているためだ。
私はその魔導書に辿り着くために、これより奇跡の大図書館があると伝え聞くトゥカラーク大陸に向かう。星辰の神々の智慧さえ収められているという大図書館が本当に存在するのか分からない。
だがそれ以外に賢者の石に辿り着く方法が見つからない。
~ 導師の警告文 ~
エラスムス導師へ
大司教は勇者が賢者の石に執着していることに危惧を抱いております。星の神々を呼び込むために必要とされるのは勇者様そのものであり、あくまで賢者の石はその身体を守るための手段のひとつに過ぎません。
より高位なる神を召喚するため、勇者様により多くの血を流して頂けるよう我々が務めてきたことに間違いはありませんでした。しかし、勇者様の身に宿る星々の眷属たちの力が損なわれたとなれば話は変わってくるのです。
賢者の石が手に入れば、損なわれた力を呼び戻すことも可能でしょう。しかし、勇者様は賢者の石に手を伸ばす度にその身を損なわれます。
今、勇者様は敵の魔術を受けてその身を幼子に変化させられており、本来の力のほとんどを封じられています。
もし、このまま命を落とされるようなことがあれば、神々の秘蹟は全て崩壊してしまうことは間違いありません。これ以上、星々の眷属を失ってはなりません。勇者様を損なってはなりません。
星辰の時は近く、最後の秘蹟を実現するために今もっとも確実な手立てを採るべきです。これ以上、勇者様が傷つくことのないように無名の祭壇に勇者様をお招きすべきです。来るべき時にその扉を開くべきです。
星々の智慧があらんことを
[ref]
https://kakuyomu.jp/works/16816927862346660239/episodes/16817330653071003094
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます