妖怪詩

ふんわり餓者髑髏

「続いてのニュースです

トンネル内での大規模な水没事故により

推定死者数5,000名超とされた先日の報道について

捜査当局の発表では死者は6名

死者は6名と発表されました」

某国で起きた悲惨な事故

都合の悪い数字は車ごと土に埋められた

土の中に3台の大型バス

女子チアリーディング部の全国高校選手権大会に向かう途中だったそのバスに乗っていたのは

選手、スタッフ、応援団あわせて117名の一団であった

戦死者や野垂れ死になど供養や埋葬がされなかった骨や怨念が形成する

大妖怪がしゃどくろ

この妖怪は生者への怨みからガシャガシャと音を立てて彷徨い

人間を見つけたら握り潰してしまう

今ここに大量の材料が揃っている

チアリーディング部のバス近辺から身の丈20m超の

がしゃどくろが生まれた

彼（彼女？）は彷徨い始める

生者への怨みか？ー否

家族に一目会いにいくのか？ー否

チアリーディングの大会にその姿で赴こうというのか？ー断じて否

「どれだけ可愛くあれるか」それが材料となった生前の彼女たちの執念である

日々可愛いものと撮った可愛い自分の写真を投稿することこそ生き甲斐

夢はアイドルデビューして、いずれテレビ、雑誌に引っ張りだこ！

その思いでがしゃどくろはガシャガシャと音を立てて首都へ鳴動

可愛くありたい、可愛くありたい、可愛くありたい

しかし

新発売のドーナツはその中心の円より大きな自分の空虚な身体をすり抜けていく

何よりサイズのバランスが悪い

これでは小顔に見えない

遊園地

自分に釣り合うのは観覧車

しかし

どう映っても襲っているようにしか見えない

街に私を可愛く見せてくれるものは無い！

悲嘆するがしゃどくろ

月夜に照らされ帰った山で気付く

自然派なら十分に映える！

山は雄大で自分の巨躯も気にならない

腕にツタをまき、足は川につける

川のヌシと呼ばれた魚も飛び跳ねラッセンの絵画の様に彩る

頭は花畑の近くに

気になる箇所は大木を切り倒して隠し

満足して眠りにつく

月夜の晩にボタニカルがしゃどくろが一つ

山の谷間に落ちていた

ー600年後

山間部で巨大な人骨が発見される

巨人の証拠と各局がこぞって取り上げ

がしゃどくろの夢は叶ったのである。