妖怪詩

マサイ嵐

昼からぬっぺふほふ

肉塊が歩いている

肉塊が歩いている

短い手足を懸命に動かして

肉塊が歩いている


肉塊が歩いている

色白な女の太ももで全身ができているような

肉と脂肪の塊が歩いている

甘い腐肉臭を漂わせ

肉塊が歩いている


人々は歩いている

人々は肉塊に気付かない

時折臭いに周囲を見回したり

鼻をつまんだりしながら

人々は歩いている


肉塊が歩いている

赤羽の町を歩いている

昼間から歩いている

慣れない商店街に戸惑いながら

肉塊が歩いている


肉塊の左腕が震える

Apple Watchが通知する

肉塊は急ぎ足になる

肉が波打つ

肉塊は走る走る歩く走る


コンビニのある三叉路を左に

八百屋の前を

鰻屋の脇へ

中華屋の角で曲がり


肉塊が歩みを止める

せんべろしようと肉塊を誘った

まくらがえしと朱の盆が店先で飲んでいる

肉塊はビールケースに座布団を乗せただけの席に着く


肉塊は店員を呼び止める

糖質を制限しているから

白州ハイボールを頼む

ミントが添られた冷えた炭酸を流し込み予想外の強炭酸に震え

肉塊は笑う

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