第四十六話~第五十二話
第四十六話 見える
直後喋る影の体が揺れる…
影「…?」
影が足元を見ると右足が膝の下から切断されていた…
影「何だ…これは?」
影の前には何時の間にか居合の形で刀を構えるアリサがいた…
アリサ「見えます…見えますよ〜貴方の終わりが…」
影(あの女の武器…なんだあの歪で不吉な形は…)
アリサ「私の武器が気になりますか?この武器はそこの悪魔に依頼して作る予定の物です、模造とでも言いますかね?」
影「何故まだ無いはずのものが存在する!?」
イリス「俺が作った…1分しか形は持たないが充分だ」
影「ふざけ…っ」
影が声を出した瞬間…影は既に細切れになっていた…
アリサ「攻撃系のレリックを持てるのはノアだけじゃないのよ?」
直後影の残滓が光り輝き吹き飛ぶ…
アリサ「さぁ…残りの影を掃除しましょう…私達は掃除屋ですから」
アリサ「イリス、何でも良いわ剣を頂戴」
イリス「御意に」
直後宙に一本の剣が現れる
イリス(俺の今の力では剣や槍、盾などを一つ創り出すのが限界だ…それでも彼女は問題ない)
イリスがアリサと出会ったのはイリスの住む区域が大規模な悪魔の襲撃にあった時だった
イリス(あの時、彼女は悪魔達の血飛沫舞う中美しくそして冷徹に踊っていた…振る剣が光る時悪魔の絶叫が響き剣が折れればその手を悪魔の心の臓に突き立てた…そして今もまた美しい舞を踊っている…)
アリサはその襲撃時たった一人で全ての悪魔を殺し尽くした…
第四十七話 看破
イリス(彼女の特性は"看破"思考や物理的な情報を主に目で捉えられるものではある…だが彼女はその思考から相手の次の行動を読み取りそしてその命を確実に刈り取る…故に教会の死神アリサと呼ばれている…あぁ…美しい…)
アリサは暴力的に更に芸術的に影を斬る…
アリサ「イリス…余計なことを考え過ぎです、早く次の剣を…」
イリスは夢から覚めた様にハッとし剣を錬成する…
アリサ「貴方も戦ってみなさい」
アリサはいまイリスが錬成した剣をイリスに手渡す…
イリス「ですが貴女は…!?」
刹那アリサの背後に影が迫っていた
アリサは瞬間的に背後にいる影の頭を掴み地面が陥没するほど叩きつけた…
アリサ「殺せないだけで私は戦えますから」
イリスは頷くと剣を握り影と対峙した…
アリサは地面に沈む影の頭を持ち上げると上顎と下顎を掴み引き裂いた…
アリサ「不死って大変ですねぇ」
アリサ(影とはいえ集団で物事を考えているわけでは無い…完全に個としての意思がある…それ自体は問題ではない…そう…相手が上級悪魔クラスで無ければ…)
そう…相手が上級悪魔クラスでさえなければ…
アリサの前には明らかに上級悪魔クラスの影が立っていた…
更にその影は…喋った…
グール「み…見える…ぞ…お前の…終わりが」
アリサ「ふふっ…見誤ってますねぇ、それは私に写る貴方の終わりですよ」
アリサ(相手は影…更には上級悪魔クラス…そして…私にはレリックがない…少し…マズイわね)
第四十八話 進化
アリサの眼には相手のほぼ全てが映し出される…
今日もそう、目の前にいる上級悪魔クラスの影の"ほぼ"全てが見えていた…
直後充分な間合いを取るアリサの右脇腹に明らかに届くはずのない影の拳がヒットする…
アリサ「ガハッ!?」
アリサ(な…にッ!?)
アリサ「何故…当たる!?」
アリサの眼にはグールの情報が映し出されている…その中で…ただ一つ…モヤがかかった様なモノがあった…
アリサ「そうか…お前…」
直後グールの拳が遠間からアリサの顔面にヒットし血を撒き散らしながらアリサは壁にめり込む…
アリサ(…まさか…特性が…使えるとは…前の襲撃には無かった…進化しているのか…)
ヒューヒューと虫の息になっているアリサにグールは近づき髪を掴み立ち上がらせる…
グール「…死」
グールが死亡確定と言いかけたその刹那…グールは見る…いや魅せられた…
その闇を
アリサから溢れる闇と負のオーラは確かな殺気になりグールの肺を冷気で満たした…
まるでその漆黒に映る自身が貴様の死への餞だと言わんばかりの圧倒的上位の存在…
アリサの割れ血が流れる顔面が修復され眼は黒目と白目がまるで入れ替わっている様に色が変化していた…
グール「まさか、お前…悪…」
刹那グールの口をアリサの右手が掴みまるで顔面を握りつぶすかの様な力で抑える…
アリサ「悪い眼だ、見なくて良いモノを見る…だが安心して良い私が壊してやる」
直後アリサの左手はグールの目玉を潰した…
第四十九話 粉砕
影とは…
光(生身)に付随する物である…
破壊する方法は二つに一つ…
一つ…レリック(光から作られた武器)で致命傷を与える…
二つ…光(生身)を殺す…
だがこの二つのほかにもう一つ破壊する方法が存在する…
それは…
アリサ「このままお前の存在…魂を握り潰しぶち壊してやる…」
そう…更に濃い闇による干渉…
グールはアリサの手により頭を砕かれそうになっていた…
グールは見る…アリサという存在の影に隠れる強大な闇を…
直後グールと言う存在は砕け散った…
アリサ(やはりこの影から感じた物は…教会の地下にあるあの部屋と同じ色だ…そして…私も同じ色をしている…)
アリサの頬には涙が這っていた…
その頃、ノア達は…
ノア「これで全部か…」
ユキ「ハァ…ハァ…疲れた〜」
ノアとユキは辺り一面を埋め尽くしていた影を全て破壊していた
ノア(外の空間から感じる…アリサとか言う掃除屋あの力を少しだが使ったな…人の事は言えないが死んじまうぜ)
ユキ「早く外に出よ?」
ノア「いや、まだだ…今はまだだ」
ノアは椅子に腰掛けタバコに火をつける
ユキ「どうして?」
ユキはもう一つの椅子に腰掛け聞く
ノア「俺達の出る幕じゃない」
ユキ「つまり?」
ノア「アリサの弟子…アイツの決着がまだだ」
ユキ「じゃあ助けに行かなきゃ!」
ユキは椅子から勢い良く立ち上がる
直後、扉に手をかけるユキの背後から声が掛かる
第五十話 掃除
ノア「ユキ、助けに行くな…」
ユキ「どうして!?私は私の両親の様に殺される人をただ黙って見ていれば良いの!?」
ノア「違う…アイツは確かに弱いな、だが弱い奴が弱いままとは限らない…」
ノア(それにお前は疲労で死にそうだしな…)
その頃外では…
イリス「くそっ!!」
イリスを影の大群が取り囲んでいた…
イリス(自分の作った武器が憎い…刃は脆く曲がり易く折れやすい…更に重心がバラバラで振りにくい…まるで薄氷の剣に振り子がついているかの様な物!!こんな物で彼女は戦っていたのか!?)
イリス「集中さえすれば」
イリスが剣の設計を見直そうとするその瞬間イリスの体を影達が殴る
イリス「ぐふっ!!」
イリス(畜生…せっかく…弟子にもして貰ったのによぉ…こんな所で死んじまうのかよ…畜生……)
イリスはアリサの弟子になった時にあるルールを決められていた
弟子になった日の夜、教会の一室でアリサは窓を開けて夜空を見ていた…
そしてイリスはそんなアリサを見ていた…
アリサ「ねぇ、私達は一般人からしたら化け物って括りだよねぇ…だけどそんな私達でも悪魔に殺される日は来るんだろうねぇ…」
イリス「…そうかもしれません」
アリサ「もし…もし私が弱って戦えなくなったなら……」
アリサは唇を噛みそしてその重い思いを吐き出す…
アリサ「私の事…殺してくれないかい?」
イリス「何故です!?」
イリスは驚き椅子から立ち上がる
アリサ「掃除屋…だからかな?」
第五十一話 立つ 1/5
イリスはそのルールを思い出す…
もし戦えなくなったなら私を殺して欲しいと言うルール(想い)を…
イリス(まだ…まだだ…この世に蔓延る悪魔共を…汚れを!)
イリス「掃除せねば!!」
刹那、影達は戦慄と言う感情を知る…
それは飽くまでも悪魔でも感じる死そのものだった
イリスを中心として球体を作るかの様に空中に無数の刃が作り出される…
そしてそれは全てレリックだった…
直後それら全ては一斉に発射された…
刃の嵐が吹き荒れ影達は風に吹かれる塵のように霧散する…
イリス「死ね…彼女の生きる未来の為に…」
人は何の為に生きるのだろう…
人は何の為に息をする?
人は何の為に思考する?
人は何の為に立ち上がるのだろう…
人の目的に向かう推進力たるやその他全てを遥かに凌駕する…
イリスの特性は既に限界へと達していた…
しかしたった一つの想いの為に限界を打ち破ったのだ
しかし…
立ち上がるからには地に伏す事が必要である…
そして当人達には全く関係の無い所でその原因が作られたなら…
そんな気が付きもしない小石で転んだなら…
人は果たして立ち上がれるのだろうか…?
その頃…教会の地下で強力な魔力の波動が観測されていた…
教会の地下…全ての始まり…悪魔祓い達の発足地…原初の墓……
この地の混沌を握るのは世界を変える力を持つ少女か?一際濃い闇の中から出でし者か?悲しき運命を背負う掃除屋か?
それら全てを蹂躙する悪魔か?
さぁ狂って踊って確かめろ皮膚の裏に流れしモノは何色か
第五十二話 死地へ
イリスは全ての影を破壊するとスイッチが切れた様に意識を失った…
ちょうどその時別次元と繋がる扉が開きノアとユキが帰ってくる…
ノア「だいぶこっちも大変だったみたいだな…」
アリサ「えぇ…奴ら進化をしてるみたいです…」
アリサは椅子に深く腰掛け話す
ユキ「大変!血が沢山出て…」
アリサ「こんな物で済んだだけマシです…そんな事よりなるべく早く教会の地下に行くべきですね…」
ノア「あぁ…教会の地下に何があるか分からないが恐らくソレでゼノの影をこっちに呼ぶつもりだろう」
アリサ「そうなれば私達に未来は無い…」
ノア「恐らく教会は裏切ったんだろう、そもそもあっち側だった可能性もある…」
アリサ「今はイリスが意識を失っているから話しますが私は昔、教会の地下…原初の墓で体を作り変えられています…」
ノア「!?…詳しく話せ」
アリサ「記憶に有るのは緑の光と絶叫だけです」
エーリル「…」
ユキ「それって…」
ノア「あぁ…奴だ」
ノアは首に下がる銃弾のネックレスを握る…
アリサ「ハハッ…どうやらお互い因縁が有る相手の様ですね…」
ノア「少し休んだら行くぞ…まるで初めて貰うクリスマスプレゼントみたいに気分が昂ってしょうがねぇ」
数時間後…
エーリル「注文通りの物を用意したよ」
ノア「あぁ、間違いない…いくらだ?」
エーリル「金は要らない…ただ生きて帰ってきな!」
ノア「心配すんな、帰ってきたら金も払ってやるよ」
エーリル「ふっ…それからこれは御守りだ」
続く
悪魔殺しの男 一日一話 @ItiNitiITwa
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