第四十一話~第四十五話

第四十一話 体術 


ユキ「何が!?何がヤバイの!?」

ノア「重量がそのまま伝わるから腕が落ちる」

ユキ「こんわ!!こんな物使わない方が良いでしょ!」

ノア「それ以外お前が使えるものが無い、しかもそれ魔力結晶でも最高硬度のオリハルコンが織り交ぜられてるから弾も通さないぞ」

ユキ「でも、私…体術とか出来ないし…」

ノア「やるんだよ、今すぐに」

ノアは双剣を取り出す…

それは久しぶりにしてはしっくりきた…

ノア「行くぞ」

ユキ「…お願いします!」

ユキは全く軸を意識せず出鱈目に手を振るう…

直後その拳は弾き飛ばされる…

ノア「おい…お前は悪魔にもそんな戦いをするのか?」

ユキ「…だって殴り方が分からないんだもん!」

ノア「いいか?今から俺はお前を殺すつもりで攻撃する、生き延びろ」

ノアは腰を落とし、右手を顔の前辺りに左手をその少し前に置く…

ノアから発せられる殺気が目に見えるほどその形は洗礼され、それが如何にノアに大切なものか分かった…

直後ノアが視界から消える…

ユキは山勘で右腕を上げガードする…

直後右腕に伝わる確かな衝撃

ノアの右の手が握る剣がユキの右腕の手袋を捉える…

その威力は華奢な少女を吹き飛ばすには十分だった…

ユキは吹き飛び壁に激突する…

背中からぶつかったとはいえ意識は揺らぎ肺は呼吸を忘れる…

ユキ(苦しい!痛い!!)

ノアは音なき喘ぎを発するユキに追撃を加える


第四十二話 知る 


この世界のこの大陸では悪魔と天使、天界と魔界…神と魔神が存在した…

この大陸で最強は誰だろうか?

エレメントの特性を持つシヴァ?

違う…

では増幅を持つゼノ?

ある側面ではそうだろう…

この大陸のルール…

"単純な"特性の方が強い

ユキは見る、ノアが自分の腹に打ち込もうとした拳が体のすぐ横の壁にヒットし壁に大きなクレーターの様なものを作るのを…

ノアは感じた、確かに打ち込まれるはずの拳が形容し難い力により横にズレるのを…

そして思い出すあの影のようなものが言っていた事を…

???「やはりか…そいつが…その女が…世界を……"変えた"」

ノア(まさか!?)


ユキ 特性 改変


ユキは自分の未来を変える事が出来る、ただし無意識にそして代償が必要である…


この場合…

ユキの脇腹にノアの双剣が少しだが斬り込まれ血が出ていた…

そもユキはただの少女、つまり特性など発現はしない…

だがその血にやどる潜在能力までは否定できない…

特性とは?

悪魔や天使が持つオリジナルの力…

では何故人が使えないのか?

魔力が無いから?

違う、それでは魔術師が使えてしまう…

では考えて欲しい、魔術とは?

それは本人に宿る血に依存する力、その力に魔力を流し発現させる…

だからゼノはセナに体に走る全ての血管を把握する様なものだと説いた…

では特性と魔術は何が違うのだろう?

同じ物が存在するか否か?

そもそも同じ物なのだろうか?

第六魔術学院教官 凛は紫色の電撃を放つ…

しかし過去そこまで到達した人は居ないと言う…

これはあくまでも同じ道筋で…同じプロセスで同じ魔法を使ったらと言うことである…

煤の蒼炎とアリスの炎魔法、何が違うのだろう…

同じ炎だと言うのに色が違うから?

違う…

能力が違う…

得意とする形も違う…

つまりはそもそも100%同じ魔法を使う人など居ないのだ…

それは特性と言うに値する理(ルール)

つまり人は特性を使えないのでは無い…

特性と呼ぶに忍びない力を魔術と呼んだに過ぎない…

つまり…もし…魔力があったなら…

この大陸に居る誰しもが特性や魔術を使える…

そしてユキの特性は改変…

もしまだ目覚めていない特性が…

運命に干渉したら…

つまり…

特性は有るのだ…

電気を付けていない照明でも照明はあるように…

卵が先か鶏が先か?

それは重要だろうか?

そこに鶏も卵も"有る"と言うのに…

つまり逆説的に言えば目覚めていない特性から魔力が生まれることもあるのだ…

そしてそれを可能にするのが…

"改変"

ノアと出会った夜、ユキは自分が死ぬと言う未来を"変えた"のだ世界ごと

世界の均衡は保たれ続ける、多ければ減らし少なければ増やす…

その為の調停者でありそれら全てを統括し使役するのが"この世全ての神"

しかしそんな神が予期しない小さな…小さな物で均衡を崩されたとしたら?

そんな小さな小さな原因はユキだった…


第四十三話 破滅


ノア(俺がこのままユキに攻撃を続けたら…?)

その未来はどう変わる?

その未来の未来は?

変わるという未来自体は?

無くなることのない負債は何処に身を潜めている?

見誤れば自滅するかもしれない…

そんな地雷のような特性…

ノアは双剣を鞘に戻す

ノア「終わりだ、手当てをしよう」

ユキは膝をつき酸素を肺へと供給する…

ノア(この特性…他の特性とは違う物が一つある…それは世界に影響を与える点だ…ゼノの増幅も最近名を馳せているリヴァイアサンの水の王も世界には影響を与えられない…)

ノア(最強だが、最大の爆弾を抱える特性、しかしエクソシストってのは生まれつき特性が使える超人がなるもんだ…その点では適性があるだろうな…)

ノアは包帯を手に取る…

ノア「ユキ、この中は時間の流れが外の世界の10分の一だ、だからこの中の一時間は外の6分だ」

ノア「お前はここでひたすら体術を習得しろ、恐らく俺はお前の特性で破滅や消滅はしない…それは俺の特性が俺を生かし続けるからだ…」

ユキ「私の特性…って?」

ノア「今まで見た事がない特性だから仮称"改変"と呼ぶことにしよう、世界にすら影響を与える特性だ」

ノア「お前の特性は光を捻じ曲げるような屈折や分岐ではない、全てをぶち壊し瞬間的に自分の活を得るパズルを作り上げる様な物だ、多用すれば世界は壊れる」

ユキ「そんな物をもっていたのにお父さんとお母さんは…」

ノア「その時は無かったのか或いはそれが最善だったんだ」


第四十四話 前へ


ユキ「それでも」

ノア「俺は…自分の手で弟同然だった子の胸に剣を突き立てた、そして俺を助け母親にまでなると言ってくれた女性は俺の目の前で殺された…だが…それが…それが最善だったんだ……いや…最善だったと証明しなきゃならない…それが託された者の務めだ」

ユキ「…私…絶対に悪魔を殺します」

ノア「奇遇だな、俺もだ」

そしてノアとユキの修行は始まった、唯ひたすらに体を鍛え体術を磨いたノアが決めた期間はエーリルのいる空間の24時間、この空間では240時間、ユキは吐いたり泣いたりしながらノアになんとかついて来ていた

ユキ「ねぇ…私はそのレリックってやつ持てないの?」

ノア「あぁ持てない、今のお前じゃ死ぬだけだ」

ユキ「じゃあどうしてノアは最初から持てたの?」

ノア「呪いのせいだろ」

ノアとユキは推手をしながら話す…

ノア「やっぱり喋ると練度が落ちるな」

ノアはユキの胸の中心に掌底を叩き込む…

ユキ「ぐふっ!」

ユキは尻餅をついてしまう…

ノア「もう120時間経つ、だが一度も俺は攻撃を受けていないぞ?」

ユキ「だってノアが強過ぎるんだよ!どうしてそんなに強いの?」

ノア「俺も同じ事を言った事がある」

ノア(なんでそんなに強いんだよ!ババア!!)

リリス(お姉さんだ!!わたしゃずっと殺し合ってきたんだから強いのが当たり前だろ!!)

ノアはユキを見て何処か寂しそうに言う…

ノア「身を置く場所…そして年月だ…」


第四十五話 強襲


ノアとユキは感じ取る…この空間に現れたその存在に…

ノア「ユキ、次は本番だ」

ユキ「私の攻撃じゃ死なないでしょ?」

ノア「どうかな?」

直後ノアとユキは互いに交差しお互いの背後にいた影に攻撃を打ち込む

ユキはレリックを持てない…だが…

ユキの掌底は影を撃ち抜いた

掌底は"改変"される…

光へと…

絶叫を上げ影が消え去る…

ユキとノアは背を合わせ辺りを見回す…

ノア「凄い数だな…」

ユキ「ノアは双剣以外にレリックは?」

ノア「ない」

ユキ「それでも?」

ノア「あぁ、充分だ」

直後互いの背を支点に弾かれたように前に出る

ユキ(正直体が限界…120時間のトレーニングをしてから動くなんて無茶よ…)

ユキは迫り来る影の拳を自らの拳の回転で受け流し拳を影に打ち込む…

ユキ「それでも努力が私を離さない…」

ユキは神経を研ぎ澄ませ風を切る音や地面を踏みしめる振動から拳の軌道を読む

死角からの攻撃を読み躱す…

そして拳を…掌底を…裏拳を…叩きつける…

ノア(ユキの成長が段違いだ…やはり実践が1番だな…)

ユキ(心臓の鼓動が早い…体が熱くて息が苦しい…それでも…体が動く!)

ただ打ち込まれるその全ては"改変"を経て光へと、レリックへと成る

一方別の空間では…

エーリル「ちくしょう!何なんだいコイツらは!!」

エーリル(特性が制限なしに使えればこんな奴ら!!)

エーリルを取り囲む形で影達が湧き上がって来ていた…

影「教会の犬も此処までだな…」

その中には喋る影も混ざっていた…


続く

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