第三十六話~第四十話

第三十六話 愛と死


ノア「嘘だ…お前は…あの…時…」

ニベルと名乗る悪魔は目が再生すると立ち尽くすノアの右脇腹を裏拳で殴り吹き飛ばす…

ニベル「…骨…折れた…ねぇ…」

ノア(あぁ…肋骨が逝ったよ…)

ニベル「ニィ…ニィ…ドコ…ニイル?」

土煙の中ノアは静かに物陰に隠れた…

ノア(くそっ…ニベル…俺は…お前を殺せない!!)

ニベルは無くなった他の部位をグジュグジュと音を立てて回復すると手当たり次第に物を破壊しノアを探し始めた…

ノアは吐血し息が荒くなっていた…

ノア(逃げるな…仕事を必ずこなせ…そして死ぬな…か…)

ニベルが土煙を上げ探していると背後で火がつく…

ノア「ニベル…俺はお前に謝らなきゃいけない事がある…」

ニベルは先程とは違いゆっくりと歩いてくる…

距離は20m程あった…

ノア「お前を守れなかった…ずっと助けてと叫んでいたのに……すまなかった!!」

ノア「俺はきっとお前の兄貴として此処に立っているならお前にただ殺されているだろう!」

距離は14m

ノア「だけど!俺は悪魔祓いとして!お前を殺す!!お前の苦しみを終わらせる!!!」

ニベルと言う悪魔は安心した様に微笑みノアに急激に迫った…

ノアはニベルに纏わりつく土煙に火を投げる…

知っているだろうか?

ホコリやパン粉、土煙などに密室で火を放つとどうなるか…?

それは粉塵爆発…

小さな粒子同士に急激に熱が伝導する事により爆破が起きる現象である…

直後、ニベルは爆発に巻き込まれる…

悪魔は当然爆発や火だけでは死なない…

しかし、ニベルは全方向から爆発をまともに受けて身体がボロボロになっていた…

しかし立ち上がりこちらを見てくる…

ニベル(泣かないでノアにぃ…いつかこんな日が来ると思ってたんだ…そしてずっと待ってたんだ…だから…)

ニベルは火から出てノアへと迫る

ニベル(だから…終わらせよう…ノアにぃならできる…僕を殺してくれる…)

ニベルは右の拳を振り上げノアに振り下ろす…

ノアは双剣をニベルの胸に刺し込み心臓と魔力炉を潰す…

ノア「これで回復は出来ない…」

ノアは双剣から手に伝わるニベルの血を感じていた…

ニベル「にぃ…ボクは…守って…もらったんだ…にぃに…」

その声に先程の様な狂気は無かった…

ノア「ニベル…」

ノアはニベルの顔を見る…

そこには悪魔でありながらあくまでノアの知るニベルの顔があった…

ニベル「…夢の中でも…守ってくれるって…いって…た…ボクは…この…悪夢の…中でも…にぃに…守ってもらった……だから……泣かないで………にぃ…………ありがとう…」

直後ニベルの体は地面に倒れる

ノア「馬鹿野郎…さようならぐらい言って逝けよ!!」

ノアの目からは涙が止まらなかった…

ノア「ちくしょう!強くなっても!こんな風に失うのか!!ちくしょう!!嘘だ!こんなっ!!こんなの!!ニベル!!すまねぇ!!!」


悪魔祓い見習いノアvs上級変異悪魔ニベル

勝者 悪魔祓い見習いノア…


第三十七話 真髄


リヴェル「へぇ…なかなかやるねぇ…君の連れてきた子…まさかニベルまでやられるとは…」

リリス「当たり前さあの子は殺しの天才、上級悪魔でも倒せる」

リヴェル「違うわよ…あの子は兄弟の様に慕いあってたの、そんな二人が殺し合い…笑いが止まらないわ!!」

不気味かつ不快な笑い声が響く…

リリス「貴様だけは必ず殺す…」

リリスは迫り来る触腕の2本を躱し3本を弾を使い避けながら間を詰める…

リリス(残り三発…そして残り3本…)

リヴェル(殺せる…)

リリスは迫る残りの触腕の2本を弾を使い避ける…

リリス(後一本!)

リヴェル(後一発!)

リリスと違い余裕が溢れる顔をするリヴェルは直後戦慄する…

リリスが投げたのは銀の輪が重なり合うブレスレットの様な物…

それは直後急速に回転し残りの一本を飲み込み触腕を砕く…

リヴェル「なっ!!」

リリス「さぁ!泣いてみな!!」

直後、リリスの持つ歪な形をしたリボルバーが光り火を吹く…

その弾はリヴェルの頭に吸い込まれる様に着弾しリヴェルの頭を吹き飛ばす…

直後触腕は動きをやめ地面に倒れる…

リリスは静かに紫煙を吐き出した…

リリス(案外大した事はなかったね…ただ、予想以上のクズだった…帰ったらノアにもっと歩み寄って悪魔祓いの師弟としてでなく親子として接してあげなきゃね…)

リリスは見る、自分の脇腹から鮮血が走っているのを…

リリス「バカな…」

リリスが振り返るとそこには頭が吹き飛びもはやした顎から上が無くなったリヴェルが立っていた…

リリスの脇腹は邪神の写身の触腕によって抉られていた…

リヴェル「あれぇ?致命傷…じゃ…無い?」

リリス(馬鹿野郎、十分過ぎるほど致命傷さ!!)

リヴェル「あぁ…目が見えないなぁ…」

リヴェルは吹き飛ばされた場所を確認する様に手で顔を触る…

リヴェル「ハハッ!顔がないじゃないぃ!」

リリス(化け物が!)

リヴェル「どーお、これがぁ…邪神様の力ぁ!!」

直後狂った様に触腕が暴れ始める…

リリスは吹き飛ばされ、地面を転がる…

リリス(まずいねぇ)

リヴェル「ハハハ!ぐちゃぐちゃになっちゃえ!!!」

リリスはヘルプリズンで自分の身を守る…

触腕が今にもヘルプリズンを壊せそうなほど打ち付けられる

リリス(見せてやろうかね、悪魔祓いの真髄ってやつを)

リリス「悪魔より劣る人間でありながら悪魔を殺す悪魔祓い…なぜ悪魔を殺せるか…?私たちはねぇ…悪魔より狂ってんだよ!!」

直後天井を突き破りノアが落ちてくる…

ノア(いくぜ!)

リリス(いくよ!)

直後リリスはヘルプリズンを止め、弾でリヴェルの足と肩を撃ち抜く…

リヴェル「グッ!!そこか!!」

リヴェルはリリスへと全ての触腕を向ける…

直後ノアによりリヴェルの体は八つ裂きになる…

触腕はリリスに届く前に動きをやめ地面に落ちる…

ノア「…姉さん、俺…」

ノアは下を向いていた…


第三十八話 母


リリスはノアを抱きしめると優しく話しかける…

リリス「母さんでいいよ、アンタは少しばかり多く失いすぎた…私が埋めてやるよ」

ノアは抱きしめ返していた…

それはもはや本能であった…

ノア「母さん…」

リリス「あぁ、ノア…」

リヴェルが死んだからだろうかリリスとノアは雨が降る外にいた…

リリス「これからは家を買ってそこに住もう…」

ノア「うん!」

直後、ノアは見る…

リリスの胸を突き破り現れる邪神の写身の触腕を…

リヴェル「私はぁ…死なないぃ!!」

リヴェルは家を壊して外へとででくる…

その姿は触腕と同化し、もはや人間ではなく変異悪魔の様な形をしていた…

ノア「嘘だ…母さん…?」

リリス「大丈夫さ…私は大丈夫だから…」

ノアが呆然とする中リヴェルは流石に魔力が底を尽きたのか何処かに姿を消した…

ノア「こんな事が……」

ノアの心を濁流が押し流す…

リリス「…ノア、よく聞きな…一度しか言わないからね…」

ノア「……こんな…」

リリス「しっかりしな!!アンタが生きるのに必要な事だ!」

ノアは我に帰りリリスの話に耳を傾ける…

リリス「まず、教会に行きな…そこで自分を鍛え上げるなりこの仕事を辞めるなりしな…それからエーリル、あそこは最高のテーラーだが気を付けなボッタクリだから…それから…私の持つ武器…全てアンタにやるよ…」

ノア「…」

リリス「それから…愛してるよ……」


第三十九話 悪魔殺し


リリスは息を引き取った…

ノアは見ていた、地面に広がる紅と自分を蝕む黒を…

暫くしてノアはリリスの体を持ち上げ自分の知る中で一番星に近い場所に行った…

ノア「なぁ、母さん…人は死んだら星になるらしい…母さんはきっと大きな星になるだろうね」

ノアは手で丘の上を掘りリリスを横たわらせた…

雨はもうやみ空には星が煌めいていたがノアにはまだ雨が降っていて地面が掘りやすかった…

ノアはリリスの体から全ての武器とライターとタバコ、それから自分が来た時に撮った写真を抜き埋めた…

落ちていた枝で十字を作り双剣で石を削り文字を掘って墓を作った…

その墓には…

"悪魔殺しの母 この世で一番優しい女性リリス此処に眠る"と書いてあった…

ノアはタバコを一本墓に立てて火をつけ、自分もタバコを咥え火をつけた…

初めてのタバコはとても目に染みてとても咽せた…

夜が明けてノアは教会と呼ばれる場所に向かった…

ノアは教会に着くとまず初めにリボルバーに残っていた最後の一発でネックレスを作り首にかけた

そしてエーリルのところに行き全てを伝えコートや服を作ってもらった

エーリルに双剣を返しノアは教会に戻った…

ノアは教会で問われた「汝は何を欲すのか」と…

ノアは答えた…

ノア「悪魔を殺したい」と…

そしてノアは"悪魔殺し"に成った…


エーリル(そんな悪魔を殺す事が全ての子が弟子か…本当に似てるねぇ…リリス)


第四十話 再会 


エーリル「ノア、こっちに来な」

ノアはエーリルの方へと向かう…

ノア「なんだ?」

エーリル「リリスからのプレゼントだ彼女が残した最後の武器だ、そしてこれはアンタに必要なものさ」

そこには見慣れた黒い箱があった…

ノア「これは…」

ノア「これは…受け取れない…」

エーリル「何故?」

ノア「俺が全てを守れなかった証だからだ…」

エーリル「違うね、アンタは全てを守った、だから此処にいる…そしてこれを継承する事がこれからに必要な事さ」

ノアは箱に手を置く…

箱から感じる魔力が呼びかける…

「手に取れ…昔の様に…我に血を…もっと…」

ノア「俺はこれからも悪魔を殺し続ける…その為に必要だから使う…だが全てが終わったら俺は全てのレリックを海に沈める…」

エーリル「いい覚悟だ」

ノア「ユキ、お前は正直言って凄く役に…」

ユキ「いやぁぁ褒めないでよ〜」

ノア「立たないんだ」

ユキ「え?」

ノア「だからお前が今日から使う武器はこれだ…」

ノアはユキに黒い革製の手袋を投げる…

ユキ「この手袋が武器?」

ノア「それを着けて構えてみろ…」

ユキは手袋を着けて構えてみる…

ノア「それは今はなんとも無いだろうが1トンを超える重量を持つ…つまりパンチを打てば1トンを超える衝撃が相手に伝わる…」

ユキ「怖!」

ノア「あぁ、ちなみにそれ重くなり続けるし魔力切れるとヤバいから」


続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る