輝劇、第一幕(中編)

 「……ちぇっ、分かったよ。この勝負、あんたに預けてやる。」とうとう緑が折れ、そっぽを向きながら黒にそう告げる。


「済まない…」黒がそんな彼女に素直に感謝の言葉を述べたので、緑はさらにばつの悪そうな顔をした。


 「わたしはこの戦いが始まった時より、皆さんに全てを委ねています。だからあなた達の選択を尊重する。あなた達はどうですか?黄さん、青さん。」真白は二人に問い掛ける。


 「ワタシも総意に従いますよ。あいつがくたばるのなら何も文句はないっすからね…で、あんたはどうなんすか、青さん?」


 黄と違い、青は少し考え込む様子をみせたが…「……分かりました、あなたの意志を汲みましょう。さっきも言った様に、彼女を倒せる可能性が最も高いのは黒さん、貴方ですからね…但し、があります。」「条件?」首を傾げる一同…青はやがてその条件を話し始める。


 「わたくしの力を使ってを視ます。そして…彼女の身の上を知って尚、彼女に復讐したいという気持ちが変わらないのであれば…わたくしは最早、貴方の決意に異論を申し立てません……この条件、呑んでいただけますか?」


 青の言葉に、黒は眉を潜める。「きみ…なんでそこまで、あいつをおもんぱかるんだ…?」その問い掛けに、青は憂いの表情を浮かべる。「…彼女のしていることを赦すつもりは毛頭ありません。でも、鉄塔で見た彼女の目…その奥には「哀しさ」があった……それが理由です。」黒は神妙な面持ちでしばらく沈黙したが、やがて静かに答える。


 「その条件…承諾するよ。」




 壮大にそびえ立つ山々のふもと、エモートゥス最後の一人、捕色ほじきひかりは、真白あかへ絶え間なく攻撃を仕掛けている。だがその攻撃も「怒り」の情力、その本質を理解した彼女には段々通用しなくなってきていた。


 おのが肉体を水へと変換出来るようになった真白あかは、移動速度と回避率がこれまでの比ではなくなっていた。時に水流に、時に水滴になって執拗に光へ攻撃を仕掛けては、彼女の攻撃から上手く逃れていた。


 「うざったいなぁもう!」れた光は追いかけるのをやめ、遠くの真白あかを両手で握り潰すかのような仕草をした。すると真白あかの周囲に光の球が多数現れ、それらが一斉に彼女を襲う。「水膜!!」しかし真白あかは水の壁を瞬時に作り出し、その光球がジュウ、と音を立てて消える。


「光は燃焼により生まれるとてめぇは言ったが…墓穴を掘りやがったな!てめぇの言う通りなら、最早おれにダメージは与えらんねえ!」獰猛な笑みを浮かべ、真白あかは水流を光に差し向けるが…


 「さぁて、それはどうかなぁ!?」防御に転じたことで動きが止まった真白あかへ、今度は光が彼女目掛けて「光陰ノ矢」を射る。

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