Gute Nacht!

 「着いたー!」真白達一行は何度かの乗り継ぎを経て、レーゲンスブルク中央駅に到着した。日は既に落ち、辺りは暗くなっている。「へー、ストラスブールとはまた違った雰囲気の街だね。」韋駄天が周囲を見回し印象を述べる。


 「さて、もう夜も遅いです。行動開始は明日からということで、今日は列車の中で予約したホテルまで行きましょうか。」瞳がスマートフォンをチェックしながら皆に呼び掛ける…国境を越える長旅だった為か皆疲労しきっていて、ホテルまでバスで行きチェックインを済ませるとすぐに休息をとった。




 翌日。


 「皆さん、疲れはとれましたか?」一同はホテルの食堂でビュッフェスタイルの朝食を摂っていた。「あかん、全っっ然寝れへんかった!枕変わっただけであんな寝れへんもん!?うちってこんな繊細やったん!?」充血した目をこすりながら赤がうめく。「さてとですね…今回はもう、前のように作戦は立てません。何だか行き当たりばったりの方が、私達には合っているように思ったからです。」


 「…瞳ちょっとやけくそになってない?」韋駄天が半目でツッコミを入れる。「…まぁそういう気持ちが全くない訳ではありませんが…今回はドッペルゲンガーのメンバーに加え晶さん、そして糸さんがいます。変に作戦を立てて動きが膠着こうちゃくするくらいなら、各々おのおのの判断で行動した方が逆に上手くいくかと思いまして。」「成程。」納得した様子の韋駄天は、目の前のソーセージへとフォークを伸ばす。


 「とは言うものの大体どんな感じで動くか、大まかな戦略はあらかじめ説明しておこうと思います…食べながらで構いませんので聞いてください。」瞳はここでコーヒーを一口飲み、そのまま話を続けた。


 「今夜真白さんの分情が属するバンド"Blaue Trommel"(ブラウエ・トロメル)のコンサートがあります。私達はそのコンサート会場へ行き、コンサートが終わって彼らが専用の出口から出る時を狙い、接触を図る。今までの傾向から、恐らく向こうは攻撃的な態度を取ってくるでしょう。そこで今回は、真白さん一人で彼女達に近づいてみてください。」


 真白は驚いて声を上げる。「そんな…私一人で大丈夫でしょうか…?」不安そうな顔をする彼女に瞳が微笑む。「安心してください、あくまで直接対面するのが真白さん一人なだけで、私達も近くに待機しています。そして向こうに攻撃の姿勢が見えた場合、遠距離から即座に真白さんを援護する…いわゆる「奇襲」で相手のきょを突く戦略です…まぁこんな感じで動こうかと思っているのですが、皆さん如何いかがでしょう?」瞳は皆の反応を待つ。


 (奇襲…ね…この人相変わらず、真顔で物騒なことさらりと言うなぁ…まぁ私も人のこと言えないけど。)末席に座っている晶は透那戦での瞳を思い出し、人知れず苦笑を浮かべていた。

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