後片付け

 「おやお帰り、かたは付いたのかい?」キッチンワゴンが停めてある場所に真白達が戻ってきたのを見て、血染が声を掛けた。「いえ、まだ全部が解決した訳ではないのですが…まずは街の復旧が先ということになりまして…」真白が答える。


 「その様子だと…かいな、暴れたわね。」糸に尋ねられた赤は「あぁ」とぶっきらぼうに答えると、肩にかついでいた腕を近くの椅子に座らせ、自分もまた椅子に腰掛けた後に情力で宙に水を溜め、それを飲み始めた。


 「談笑中の所申し訳ないが糸、この脚を治してくれないか。そこにいる黒長髪の娘に狙撃されたものでな。」透那に睨まれた、彼女に肩を貸していた晶はバツが悪そうに目を逸らす。「貴女を撃つよう言ったのは私です、彼女は言われた通りにしただけ。恨むのなら私を恨んで下さいな。」作り笑いで指摘する瞳に、透那は苦々しく舌打ちをした。


 「よし、じゃあ夕飯までに片付けちゃいましょうか!あなた達もご飯、食べてくでしょ?」「え、あ…え?」糸に言われた真白、そんなことを聞かれるとは思っておらず返答に詰まる。「是非食べてってよ、そんで感想聞かせて!あたし達の料理が日本の食文化に慣れ親しんでる人達の舌に合うかどうか、聞いてみたいのよね~!さぁ、そうと決まれば善は急げ!あなた達も街の修復、手伝ってくれるわよね?」なかば糸の勢いに押され、真白達は路情の後始末に取り掛かるのだった。




 「いや~お疲れお疲れ!さあ、遠慮せずたんとお食べ!」日もすっかり沈んだ時間帯、真白達は街外れのとある場所、キッチンワゴンの側で食卓を囲んでいた。


 「いいの?ご馳走になっちゃって?ていうか街の修復ほとんど糸さんがやってたけど…」韋駄天が気遣うが、「いいのいいのー!ご飯は大勢で食べた方が美味しいんだから!」糸はほがらかに笑いながら、器によそった料理を手渡した。


 糸の情力「織姫おりひめ」は繊維を操作するもので、またたく間に瓦礫がれきの繊維を繋ぎ合わせ、破壊された建物や地面を元通りに直していった。その復元度たるや、数時間前に街が崩壊状態にあったと言われても信じられない程のレベルのもので、昔からの知り合いである血染曰く、彼女の力は文字通り、シロモノらしい。


 「っていうか…よく食べるねぇ…」韋駄天は糸にも驚いていたが、同じくらい腕の大食漢っぷりにも唖然あぜんとしていた。「あのちっさい身体のどこに入るんや?あんだけの量…うぅ、あかん…あれ見てたら食欲失せるわ…」青ざめた顔の焔は、腕から慌てて目線を逸らした。


 「にしても、感情が意思と実体をもって独立し行動する、かぁ…にわかには信じがたい話ね…」糸は韋駄天達から真白、そして赤の事を聞き、素直に驚いていた。「で、どうするの赤?」彼女に聞かれた赤は、何も言わずにじっと真白を見ていて……

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