怒れる分情

 ”Rouge,tu va bien?”(赤、大丈夫?)


 「真白さん、無事ですか?」二人の周りに人が集まってきた、真白、そして”Rouge”(赤)と呼ばれた分情の仲間達だ。


 「日本語でいい、こいつら全員日本語話者らしいからな…それとてめえら、急で悪りぃが頼みがある。おれとあのおれそっくりのやつを二人きりにさせてくれねえか、どうやら因縁にケリつけねぇといけねぇみてぇだ。」


 「え、赤が…二人…!?」仲間の一人が驚いて声を上げる。「おい、もう少し詳細な情報をよこせ。貴様はいつも説明をはぶきすぎだ。」別の仲間で落ち着いた印象を与える黒髪の少女が、真白の分情、赤に苦言を呈する。


 「事が済んだらちゃんと説明してやるよ…あと、今あんまりぐだぐだ話し掛けんな、気が立ってんだ。」鋭い視線を仲間に送る赤。


 「…ちっ…後でしっかり説明しろよ。」溜息をついたその子が、次はドッペルゲンガーの面々に言った。「そういう訳だ、そこの赤そっくりのやつ以外は此方こなたに付いてこい。」


 「瞳…どないする?」焔が尋ねたが、それとほぼ同時に瞳は手を上げて焔に制止の合図を送った、そして…


 「情力発現「青瞳せいどう過視かし」」


 彼女の目が青く光り、そして今話している黒髪の子と目を合わせる。


 「!貴様…その目…!?」


 対する彼女も情力を発現させ、目の色を変えた。彼女の目の色は青、「哀しみ」の具情者のようだ。


 「……よし。」少しの時間黒髪の子と見つめ合った瞳は、小さくそう言うと情力を止めた。


 「私と晶さんは黒髪の彼女を、韋駄天さんと焔さんは茶髪の彼女をお願いします。晶さん、すみませんが力を貸してもらっても?」


 頷いた晶を見た瞳は赤達のいる方とは逆の方へ駆け出し、晶もそれに続いて走り出した。


 「透那とうな、任せたぞ。」真白を睨み付ける赤は、先の黒髪の子に声を掛ける。


 「やれやれ…奴らの誘いに乗るのはしゃくだが、こうなっては致し方ないか…かいな、残りの連中は貴様に預ける。」透那と呼ばれた少女はそう言い残すと、風のような速さで瞳達を追いかけて行った。


 「んじゃ、アナタがワタシ達の相手してくれるのね、よろしく!ワタシは韋駄天、こっちは…」


 韋駄天が言い終わらない内に、大きな瓦礫がれきが韋駄天の所に飛んできた。「うわ危な!!」間一髪でそれを避ける彼女。


 「何でもいいけど早くして、おなかいてきちゃった。」どうやらその瓦礫はかいなと呼ばれていた子が投げたものらしい…その証拠に肩を回しながら言った彼女の虹彩は、焦げ茶色から黄色へと変色していた。


 「え、何あの子ヤッバ。お腹減ったからって躊躇ちゅうちょなく人に向かって瓦礫投げてきたよ。」


 「風音といいあいつといい…うちはまともなやつと戦えへん運命なんか…」


 二人は情力を発現させて移動し始める。「ほな真白、気ぃ付けや…多分やけど黄の時より厄介やで、あの赤髪。」そう言われた真白だったが…


 「…そうですね、具情者として目覚めといてホントよかった!」黄色い目になった真白が、悪戯いたずらっぽく微笑んで応答した。それを見た焔は安心したように少し口角を上げると、韋駄天と共に腕を追いかけていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る