調査開始

 「なんか思い出した?」


 「所持品を色々見ているのですが…特に何も思い出せません」昼休み、真白達はご飯を食べながら教室で話していた。


 「そっかぁ…あ、ところで知ってる?最近この辺りで不思議な事件が起きてるって話。」韋駄天はスマホをいじりながら話を続ける。


 「雨も降ってないのに、まるでバケツの水ひっくり返したみたいにビショビショになってる場所が最近よくSNSでアップされててプチバズってるんだけどさぁ…まぁ実際ひっくり返したんじゃないか、っていう人もいるんだけど、それにしては水量が多すぎるとかなんとか…お、この動画チョーおもろい、チャンネル登録しとこ。」


 「水ですか」


 「ん?あぁそうそう。あとそれとは別に興味深い投稿を見つけてね、えーっと…あ、これこれ。」韋駄天が真白にスマホの画面を見せる。


 「この投稿者さん曰く、自分が感情を抑えられなくなった時に周りで不可解なことが起こるんだってさ〜。」「…不可解なこと」無表情でそう尋ねる真白に相槌を打つ韋駄天。「うん。なんでも「怒り」の感情が抑えられなくなったときに、気が付いたら何故か周りがになってるんだって。なーんか怪しいと思わない?」


 「………」


 「ワタシはどうも何か繋がりがあるように思えてね。しかも真白とは逆で、この子はいわば、が原因で悩みを抱えてるって感じじゃん?だから話を聞いてみたら、真白の抱えてる問題について何か手掛かりになることが分かるんじゃないかな〜!…って思ったんだ。どうする?会ってみない?」


 「会えるのですか」


 「会えると思うよ、ワタシそういうの得意だから!」


 軽い言い方とは裏腹に、彼女はその投稿者をまたたく間に特定してあっさりと連絡を取り、更には週末に会う約束まで取りつけてしまった。投稿者はどうやら真白達が通う高校の同級生で、女子バスケ部に所属しているらしい。DMを送ると「是非相談に乗ってほしい」との返信がすぐに来た、どうやら不可思議な現象に辟易へきえきとしているようだ。そんな訳で真白達は放課後、その子の練習が終わってから会う事となった。


 「さてと、はどこでしようか…」何故かノリノリの韋駄天は、スマホで例の投稿者と会う場所を検索していた。「あ、こことかいいんじゃない?学校からも近いし、それに見てよほら!今期間限定で「ストロベリー・フェア」が開催中なんだって!ワタシこの「いちご一会いちえスペシャル」っての飲んでみたい!ここにしようよ真白!!」にわかにはしゃぐ韋駄天に対し、相変わらず真白の表情はとぼしかった。


 そして週末の夕暮れ時、彼女達は高校の近くにあるチェーン店のカフェにいた。

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