雷同

 「が…ごぼぁ…!」水の浮遊体に閉じ込められ、雷は苦しげに顔を歪ませる。「くそっ!」その様子を見た風音は宙へ飛び、雷の救出に向かう。しかし…


 「通させると思うか?」水面は水を操作して障壁を生み出し、風音の行く手を阻んだ。


 「…ぐ……!!」水の中雷がジタバタと手足を動かす、すると電気が彼女の身体から発せられ、白い煙を立てて彼女の周りの水だけが蒸発した。その隙間を掻い潜り、なんとか雷は水から脱出することが出来た。


 「雷、無事?」一足先に地上に戻っていた風音は雷を心配する。「はぁ…はぁ…だ…だいじょうびだいじょうび!ちっと油断しちゃっただけ♪」気丈に振る舞う雷、しかし今の一連で大幅に彼女の体力が削られてしまったのは明確だった。


 「……!」鋭い視線を水面へ送る雷、そんな彼女のほっぺたを、今度は風音がつねる。「痛った!なにすんの急に!!」「さっきの仕返し。あと…」風音はそっぽを向きながら言う。「あんたは「楽しみ」の具情者でしょ?そうやって難しく考えるのは「怒り」の具情者である私の役割。あんたはいつもみたいに、バカ丸出しでへらへら笑ってりゃいいのよ…」彼女にしては珍しく、小さな声でぼそぼそと意趣返しをした。


 「…もしかして風音…あーしのこと励ましてる?」そう尋ねられた風音は顔を真っ赤にする。「べ…べつにそんなんじゃないわよ!!私はただ合理的な判断を下したまでで…」「なんだよ〜可愛いとこあんじゃ〜ん!前は黄にしか懐かなかったあーたが成長したねぇ〜、かみなりママは嬉しいでちゅよ〜!」「だからそういうんじゃ…雷ママってなによ!!」


 ムキになって言い返す風音に、雷は優しく微笑む。「…ありがとね、風音。」「えっ…?」「あーしは知ってたよ、風音がホントは…ホントはとっても優しい子だってこと!」「…いきなりなによ、変なの…。」言葉とは裏腹に、ばつが悪そうな表情を浮かべる風音。「…風音……もーちょい頼っても……いい?」雷のお願いに、風音は少し笑って頷いた。


 「…それなりの具情者ではあるようだな、人選も悪くない…どうやら誰を相手にしているかは、きちんと理解しているらしい…」地上に降りてきた水面が風音と雷に言い放ち、露骨に下に見られた二人は険しい顔をする。(ムカつくけど、アイツには大口を叩くだけの実力がある…二人がかりでもここまで抑え込まれるなんて…!)風音は奥歯を噛み締める、雷も似たような気持ちだった。


 「風音…少しだけ時間ちょーだい…感情を整える…」「!…分かった、任せなさい!でも長くはもたないわ、五分が限界。」「充分!!」雷は風音から離れ、そして風音は旗をひるがえさせながら水面へと走り出す。


 「今度は陽動か?無駄なことを…」水面は水を刀に形状変化させ、風音の一撃を受け止めた。攻撃を弾かれた風音は、それでもめげずに何度も旗を振り回し、雷から気を逸らさせることに専念した…すると今度はその雷が、遠くから水面目掛けて雷撃を放った。だが水面はその後方援撃すら、目もくれずに水を操作して防御する。


 「遠距離がダメなら!!」雷は高速移動で水面に近づき、キャトル・ブロッドで彼女の頭を殴打しようとする、だがその不意打ちでも水面は動じず、頭部周囲に小さな水流を発生させて打撃を弾き無効化する。攻撃を防がれた雷はすぐさま離れて距離をとり、風音の援護射撃に戻る…そんなやりとりを何度か繰り返した頃だろうか…

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