立案会議其の一

 「お帰りなさい皆さん……で何よりです。」ホテルに到着した一向を、青がエントランスで出迎えた。「事情は既に知っています…皆さん、お疲れのところ申し訳ありませんが、早急に作戦を立てなければならない…瞳さん、水面とやらから読み取った情報、その共有を。」瞳はその言葉に頷くと、「真白さん、分情達を通じて、皆さんにこのホテルへ集まるよう呼び掛けてもらえますか。」とお願いし、真白は意識を内側に集中させた。




 「皆さん、食事を摂りながらで構いませんので聞いてください。」少し時間が経ち、ドッペルゲンガー、黄とその仲間達、プアール・ア・フリール、ブラウエ・トロメル、グリーン・バールの面々が、ホテルの人が厚意で貸してくれた大広間に集結していた。一般人でホテルに居た者は皆、青達のお陰でホテルが守られたことを知っているのだ。大広間にいる者達はプアール・ア・フリールが即席で作った朝食のサンドイッチを手に、各自椅子に座ったり壁にもたれ掛かったりしながら瞳に注目している。


 「エモートゥスと名乗るの組織の最終目標…それは…具情者軍隊を作ることです。」「軍隊…!?」晶が声を上げる。「えぇ…今回の色橋市での騒動は、いわばデモンストレーション…自分達の計画、その資金を集めるべく、研究成果をどこぞの組織にでもアピールしていたのでしょう…」瞳は苦々にがにがしげにそう告げた。


 「待って下さい…研究成果って…まさか!」真白が驚愕きょうがくの表情で瞳を見る。「えぇ…私の家族を襲った盗賊と、何か繋がりがあるかもしれない…」「え…瞳の家族って、どういうこと?」初耳の韋駄天がキョトンとした顔で尋ねる。


 「あ…そう、でしたね、真白さんには話したのですが……私の家族は、情力関連の組織…或いは窃盗団によって命を奪われています…すみません、中々言い出すタイミングが見つからず、ずっと黙っていました。」韋駄天と焔は衝撃を受けていたが、血染は薄々気付いていたらしく、切れ長の目を細めるだけだった。


 「…その件については追々おいおい話します…ともかく昨夜、彼女達のあの態度、PRは成功したと考えて間違いないでしょう…これ程の暴情者せいぶつへいきを生み出す技術、そして情力使いの軍隊…エモートゥスという組織は、その筋の者なら喉から手が出る程に魅力的なモノでしょうからね…彼女達のバックグラウンドにはそれなりの規模、財力、権力を有する組織がつくと考えるのが妥当です…この戦い、私達はあまりに強大な敵を相手にすることになる…かもしれない…」


 想像以上に壮大で厄介な敵の存在に彼女達は気付かされてしまい、その場に嫌な沈黙が生まれる…




 「…ま、やるしかないっしょ、時間もないみたいだし?」最初に口を開いたのは黄の友達、雷だ。「こんだけ具情者がいたらなんとかなるんじゃない?ねぇ風音?」「どうでもいいけど…そいつらのせいで黄が怪我をした、その時点でわたしの中ではそいつらを全員ブチ殺す以外の選択肢はないわ…!」怒りに燃える赤い目を揺らめかせながら、風音が荒々しく息巻く。


 「風情のある色橋を滅茶苦茶にしたのは許せんな…この戦い、受けて立とう。」透那は静かに宣言する。「えぇ。私あんまり怒らない方だけど、今回は流石に堪忍袋の緒が切れたみたい…エモートゥスとやら、ぶっ潰しちゃいましょう!」怖い笑みを浮かべ、花も同調する。


 「バックについてる組織とやらはあたしと糸、あと韋駄天で探ってみるよ…多分がいれば、大抵の組織と張り合えるだろうからねぇ……糸には後で連絡するとして、韋駄天、協力してもらうよ?」血染が問い掛けると「オッケー!そうそう、こんなときこそジーニアス韋駄天ちゃんを頼りんさーい!」ドヤる韋駄天。ひとまずの対処は彼女達に任せられた。


 「…貴女達はどうしますか、グリーンバールの皆さん…」瞳は鋭い視線を彼女達に送る。である彼女達に、瞳はあまり良い印象を抱いていないのだ。


 「はっ、分かりきったこと聞いてんじゃねーよ。大暴れ出来る絶好の機会だ、当然参戦するぜ!」好戦的に笑い、そうが窃盗団の皆を代弁する。


 「…分かりました、では今から情報の…!?」急に瞳は、その視線を上へと向ける。

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