最も暗い夜明け
「…さっき言った条件、覚えてるわよね…?」不意に八重が口を開く。
「私のことは煮るなり焼くなり好きにしてくれて構わないわ、覚悟は出来てる……ただ、罰するのは私一人だけにして。」「八重……」悲しそうな表情を浮かべる肌触だったが、彼女の方を見ずに八重は続ける。「電波塔を浮かして破壊したのは私、この子達は私の指示に従っただけ、罪はないわ…だから…お願い。」静かにそう告げる黒髪の少女。
「瞳さん…彼女に、償いの機会をあげてはもらえませんか…?」「え…真白さん…!?」真白の急な嘆願に虚を突かれ、瞳は
「彼女は…八重さんは、根っこの部分はわたしや瞳さんと同じなんです…だから気持ちが痛いほど分かる…」真白の目は今や両目ともが深い青に変わっており、八重の過去を視た瞳も哀しげにその蒼眼を伏せる。
「大切な人を…それも目の前で
「理性では彼女の罪を理解している…でも感情が…わたしの一番深いわたしが、彼女を救いたいと訴えてくるんです…!」肌触、心、そして樹脂は黙って真白の話に耳を傾けている。
「…みんな、ここにいるのが誰か忘れてるんじゃないかしら?」突如、その重苦しい沈黙を破ったのは、糸だ。「ドッペルゲンガーの子達は覚えてるわよね?アタシが半日程でフランスの街を元通りにしたの。」
一同にどよめきが広がる。「まさか…このレベルの崩壊も…!?」「えぇ。幸い命は一つも失われていないようだから、この
その場にいた者の全員が、呆気に取られてものが言えなかった。それもその筈、具情者といえどこれほどの被害をなかったことにするのは明らかに異常だ。
「…まぁその分、それなりに感情を消費することになるから、これからの戦いには多分参加出来なくなると思うわ。おそらく次の戦いでも被害が出るでしょうから、それも直さなきゃいけないし。」当の本人は何でもないことのように肩を
「…だからさ、もう自分を責めないであげて!きっと妹さんも…あなたが辛そうにしてる姿、見たくないでしょうし。」目を丸くして糸の話を聞いていた八重だったが、やがてその目からは涙が溢れ出した。
「……ごめんなさい……ごめんなさい……」その場に崩れ落ち、顔を覆う八重。そんな彼女の肩を肌触が優しくトン、と叩く。
苦々しい敗北感を味わった一同…だが丁寧に回顧する時間はない。電波塔の修復をする糸、そしてその間無防備になる彼女を護衛する役として残った八重、心、肌触、樹脂、泥濘らエモートゥスの直属部隊「アラウザーズ」以外は、休息と作戦立案を兼ね、ホテルへと重い足取りを進め始めるのだった。
「真白…大丈夫か…?」真白は歩く体力が残っておらず、焔におぶってもらっていた。「えぇ、わたしは大丈夫ですが、黒さんは先程からわたしの中で眠ったままです…とても…辛そうな顔をしている…」真白は悲しげに目を伏せる。「当然ですよね……両親の
皆は何も言えなかった。差し込み始めた日の光を浴びながら、一歩一歩を瓦礫の上へと踏み出していく…
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