集まり始める具情者達

 黒曜に電話をしたところ「色橋市か…大丈夫なのね?」と彼女からも真白を気遣う声が出た。真白が応じると「ん!真白がいいなら何も言うことはないわ!色橋は良い所よ〜素敵な喫茶店がいっぱいあるし!あ、お土産忘れないでよね〜!」といつも通りの軽い調子で真白の道草を承諾した。


 「…あ、そうそう、あなたが出国する前に渡した手鏡、ちゃんと持ってるわね?」「えぇ、常に携帯していますよ。身だしなみは女性の義務、でしたっけ?」「、よ!色橋はみやびな所だから、目一杯めいっぱいオシャレしていきなさい!」


 電話を切った後、真白達は身支度や用事を全て終わらせ、ホテルのチェックアウトを済ました。いくつか列車を乗り継ぎ、そして数時間後には空港に到着していた。イギリスに来た前回とは違い今居るのはドッペルゲンガーの面々、そして晶と糸だけだ…どうやらブラウエ・トロメルの面々は先に出国したらしい。


 「あぁ〜、一週間くらいしか離れてないけど、もう赤達が恋しいわぁ〜!…そういえば、晶ちゃんの友達ってどんな子達?」離陸を済ませた飛行機の中、糸が尋ねる。


 「いい子達ですよ。まぁ少しクセの強い子もいますけど…それでもみんな、私にはもったいないくらいの優しい人達です……時々眩しくなっちゃうくらいに…」少し切ない顔を覗かせる晶に、糸はふっと笑みをこぼす。「…そっか。会うのが楽しみね!アタシんとこも変なやつが何人かいるのよね~!期待は裏切らないと思うから、楽しみにしてて!」「…はい!」晶もそんな糸に向けて、柔和な笑みを返すのだった。




 「っはぁ〜!帰ってきた、日本!!ただいまぁぁ!!」日本、関西国際空港に着陸し、空港内に足をつけた韋駄天は背伸びをしながら叫ぶ。「ちょ、韋駄天さん他の方々に迷惑ですよ!いくら朝だとはいえ、もう少し周りに気を遣ってください!」瞳があたふたしながら韋駄天をたしなめる。


 ちなみに今回の費用も全て韋駄天もちで、黄、赤、青及び、その仲間に掛かるお金も全て、ネットワークを通じて予め彼女が負担してくれている。彼女はこう見えて天才で、開発した様々な発明品やその特許料で、十七歳という若さにして既に一生、いや遊んで暮らせるだけのお金を稼いでいるのだ。


 「まぁ韋駄天がテンション上がんのもしゃーないやろ、久し振りの日本やねんし!」関西ということで、焔の関西弁もいつも以上に場に合っている。


 「さて、と…このぐらいの時間に待ち合わせているのですが…あ!皆さん、こちらです!!」晶が手を振る先には黄達がいた。「お久しぶりっすね晶さん、それにドッペルゲンガーの皆さんも。」そう言ったのは真白の「喜び」の分情であるこうだ。


 「相変わらずうざったいヤツらね、朝っぱらからあんな大声出して…」ジト目で口を尖らせているのは深紅ふかべに風音かざね、風を操る具情者だ。


 「うっわいきなり口悪っ!んなこと言って「あいつらどうしてるのかしら」って二日おきに言ってたヤツはどこの誰だしw」「ちょっ、うっさいわねらい!」雷に茶化された風音は顔を赤くして彼女を小突く。雷はその名の通り、雷を操る具情者だ。


 「んで、そちらさんが瞳の言ってた糸さん?よろー。」へらへらとだらしない笑みを浮かべながら、雷は糸に手を差し出す。(…、か…晶ちゃんが晶ちゃんだからこそ、この子達が引き合わされたんでしょうね…)しみじみとそんなことを思いながら、糸は差し出された手を握り返した。「よろしくね、風音ちゃん、雷ちゃん!」

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