作中人物一覧表

○ドッペルゲンガー

 真白の記憶と感情を取り戻す、という目的のもと結成された具情者集団。


傘音かさね真白ましろ


 本作の主人公。とある事情により記憶と感情を失い、更にその感情が「分情」という独立した存在として行動していたが、紆余曲折を経て無事に自分へと戻る。ミディアムボブの白い髪に白い瞳をもつ儚げな少女。一人称は「わたし」。

 敬語で話す大人しい性格だが意外に頑固。情力名は「半死半生」、超速再生能力であり、傷を負ってもすぐに治る。警棒を武器とし、情力を駆使した突攻という戦闘法を多用するが、当然仲間からはその戦法を良く思われていない。感情が戻った後は多種多様な情力を駆使し、多彩な攻撃を繰り出す。

 本名は双代ふたしろ彩愛あやめで、双代ふたしろはく双代ふたしろ黒奈くろなを両親にもつ。両親を目の前で失ったことにより分情し、具情者へと覚醒した。

 後に「恐怖」の具情者であることも判明する。


黄喜きき韋駄天いだてん


 やや小柄で茶髪の女の子、一人称は「ワタシ」。よく笑う可愛い子だが、作中で様々なものを開発している天才児でもあり、特許収入等で若くして既に一財産築いている。「喜び」の具情者で情力名は「韋駄天いだてん」、脚力が強化され高速での移動が可能となる。また強化された蹴りによる真空の刃、鎌鼬かまいたちを放つことも可能。

 加えて「楽しみ」の情力も併せ持ち、その情力名は「鉄中てっちゅう錚錚そうそう」、鉄を自在に操る力を得る。球状の液体金属を持ち歩いており、戦闘時はそれを脚にまとわせて鉄甲とし、カポエイラをベースとした戦闘スタイルを取る。状況に応じて鉄製の警棒も使う。体力が少なく長期戦は苦手。

 後に二つの情力を同時に発現させる「混情」を使えるようになる。実はドッペルゲンガーの誰よりも仲間思い。

 更には「怒り」の情力「空即くうそく是色ぜしき」も獲得、対象に「性質」を付与する力を得た。


赤怒せきどほむら


 黒髪をポニーテールにした子で関西弁、一人称は「うち」。正義感が強く情に厚い性分だが、少々頭に血が上りやすい。「怒り」の具情者で情力名は「勇火いさみび」、火の操作が可能になる…

 …と思われていたが、実際の情力の本質は「熱操作」である。情力を応用することで体温を上げ、一時的に身体能力を爆発的に上げる「陽炎かげろう」を使用可能。

 激情者であり、情力名は「三凍さんとう四燃しねん」、熱を「上げる」操作だけでなく「下げる」操作が可能になることで、凍結をも操れるようになる。刀程の大きさの、ファイアスターターという着火棒に似たものを武器とする。

 過去に「陽炎」を暴発させ、時折思考力が極端に鈍ってしまう、という脳の後遺症を抱えている。


青哀しょうあいひとみ


 切長の目に白い髪をもつ、陶磁人形のように美しい少女。一人称は「私」、敬語で話す。ドッペルゲンガーの参謀的役割でしっかりとしている反面、生命観が少し歪んでいて「死ななければ問題ない」と本気で考えている危うい面もある。

 医学面においてそれなりの知識をもつ切れ者。「哀しみ」の具情者で、情力名は「青瞳せいどう過視かし」、眼球一つにつき、一日一回目を合わせた人間の、任意の時点の過去を視ることが出来る。

 薬屋として有名な一族出身で、過去に自分以外の家族全員を盗賊団によって殺されており、盗賊に対し深い怨嗟と嫌悪を抱いている。二刀一対の刀を常備しており、平常時は短刀一本で戦う。精神的には案外打たれ弱い。

 実は戦いの達人で、情力抜きの戦いでは、わざと負けた戦闘以外では敗北したことがない。「ムジンリュウ」の使い手でジンドリは「人」、剣術を使うにつれ人というよりは獣に近い動きになってゆき、相手を殺すことに特化した予測不可能の攻撃を展開する。


緑楽りょくらく血染ちぞめ


 日本人形を思わせる長身痩躯の美人、一人称は「あたし」。少し昔っぽい話し方で、快楽主義的な面をしばし覗かせる。一方で血も涙もない悪人という訳ではなく、案外ノリが良く、面倒見もいい。

 「楽しみ」の具情者で情力は「鉄血てっけつ」、血液を操作する。武器として血液を硬質化させた大鎌を用いて、予測不能で出鱈目な攻撃を仕掛ける。

 激情者で、情力名は碧血へきけつ丹心たんしん、血を摂取した具情者の情力を使うことが出来る。彼女の力を分かりやすくいえば、鉄血は「物質」としての血液を操れ、碧血丹心は「象徴」としての血を操作出来る。

 「ムジンリュウ」の使い手でジンドリは「迅」、舞を想起させる、緩慢だが流麗な剣術により敵を翻弄し、対峙者はまるで、自らその刃へ身を差し出しているかのような錯覚に陥る。

 経緯は不明だが、真白達の遥か昔から既に存在している。




○黄色好き同好会

 黄を中心とした遊び仲間。特に結成理由はなく、純粋に気の合う者同士が集まった、いわゆる「いつメン」。みんな黄色が好きということからSNSのグループ名が決まった。


こう


 真白の「喜び」の分情。一人称は「あたし」で「…ッス」という運動部系口調で話す。マイペースな性格で人当たりも良いが、意外と喧嘩っ早く攻撃的。膂力(りょりょく)が強化される情力「黄粱こうりょう一炊いっすい」を使い、警棒やロッドなど棒術に長けている。意外に全分情の中でも無慈悲な方。

 激情「黄塵こうじん万丈ばんじょう」は「黄粱こうりょう一炊いっすい」の完全上位互換で、速すぎる動きは常に残像を生み、無尽蔵のスタミナにより疲れることがなくなる。


深紅ふかべに風音かざね


 セミロングで少しパーマのかかった黒髪の女の子。一人称は「わたし」で、黄が絡まなければ極めて常識的な思考回路の持ち主。黄に対して依存とも呼べる愛情を向けており、黄に危害を及ぼす者には容赦しない。「怒り」の具情者で情力名は「陣風じんふう」。風を操作し、真空の刃や暴風による攻撃を用いる。折り畳み式の旗を武器として使用し、それで風向きなどを読み、戦闘に利用する。

 激情者であり、情力名は「風神」、「陣風」の何十倍もの質量、強度の風を操り、応用で真空すら生み出す。発現時は風で出来た不可視の羽衣を纏う。実は人一倍繊細な心の持ち主。紆余曲折あり、その身にらいの魂を宿すことになる。


紺碧こんぺきあきら


 長めの茶髪に小柄な体格の女の子。人とのコミュニケーションが苦手で、初対面の人に対してはぼそぼそと喋る。「哀しみ」の具情者で情力名は「遠近えんきん無用むよう」、視力を自在に調整する情力で、最大で1km先の針の穴が見える程に視力が上昇し、逆に視力をゼロにすることも可能、それにより視覚に作用する技を無効化出来る。

 実は家が代々暗殺を生業としていて、既に一族は自分一人となってはいるものの、自らの許されざる所業を悔いている。一方で「デザイナーになりたい」という夢をもつが故、そのジレンマに苦しみを感じている。

 情力に加え、洗練された暗殺術を用いる高い戦闘力を誇るが、前述の苦い記憶故、能動的に戦おうとはしない。暗器や小型の拳銃、小型スナイパーをよく使う。

 戦う相手が著しく強い場合、暗殺者としての本能が前面に出てしまい、その際は相手が「消えた」と思うほどに気配を断つのが上手くなり、暗殺術の精度も格段に増す。


翡翠ひすいらい


 暗めの桃色の髪をもち、今時JKの口調で話す少女。一人称は「あーし」で、いい加減な性格に思えるが実は仲間思いの優しい子。「楽しみ」の具情者で情力名は「迅雷じんらい」、電気を操作する情力で、電波を感知したり磁力を操作したりと非常に応用の効く情力者。キャトル・ブロッドというスタンガンの一種の道具を使う。

 激情者であり、情力名は「雷神」、「迅雷」の何十倍もの質量と強度の電気を操作でき、発現時は背後にかみなり連鼓れんつづみが現れ、その鼓に応じた技を繰り出す。紆余曲折あり肉体は滅びてしまうが、感情、魂だけの存在となり、風音を依代よりしろとし彼女の身体に宿ることで存在を保ち続けている。




○Poêle à frire (プアール・ア・フリール)

 真白の分情、赤を中心とした集団で、移動式のレストラン"Poêle à frire"(プアール・ア・フリール)を営んでおり、主にフランスの様々な場所をキッチンワゴンで移動している。"Poêle à frire"はフランス語で「フライパン」を意味する。


あか


 真白の「怒り」の分情。一人称は「おれ」で荒っぽい男口調、フランスでは"Rouge"(ルージュ)と呼ばれていた。口調に違わず頭に血が昇りやすく、一度暴れ出すと手がつけられなくなる。一方で暴れるまで怒ることは滅多に無く、暴言を吐くことはあれど以外にも周りを冷静に見て行動に移す。

 水を操作する情力「水天すいてん髣髴ほうふつ」の使い手で、常備する鉄棒の外枠に水を循環させ、チェーンソーのように対象を切り裂く。得意技には水を目の前で圧縮して放つ「水鉄砲」、頭上に水の膜を張り次の攻撃に繋げる「水天幕すいてんまく」、針のように鋭い水を大量に降らせる「針水はりみず飛沫しぶき」等がある。キッチンでは調理担当。

 激情態「残山ざんざん剰水じょうすい」になると操れる水量が爆発的に増加し、陸海空、森羅万象の水を集め、そして敵に叩きつける。

 


檸檬れもんかいな


 明るい茶色の長髪で「〜だもん」というような、まるで幼い子供の話し方をする少女、一人称は「ワタシ」。大食漢で、お腹が空き過ぎると癇癪かんしゃくを起こし、それが極限になると目に映る生き物全てが食べ物に見えるようになる。「喜び」の具情者で、情力名は「剛力ごうりき無双むそう」。腕力及び握力が大幅に強化され、周りのものを凄い勢いで投擲とうてきしたり、握力で相手を握り潰したりする。身の丈程の大斧を扱い、見境なしに大暴れする。

 キッチンでの調理準備(じゃがいもの皮剥きなど)担当、買い出しは糸と彼女が行う。激情者であり情力名は「悪食あくじき」、「剛力無双」の数十倍の腕力を獲得する。エモートゥスの一員との戦いで感情を使い果たして廃人となり、命を落とす。


浅葱あさぎ透那とうな


 「きれいな高学年のお姉さん」という表現がぴったりの黒髪少女、一人称は「此方こなた」。強迫観念にしばし囚われ「外に出る前にその場で足踏みする」「食後に二度手拍子する」といった、はたからみれば理解し難い奇妙な行動をとる。プライドが高く、自身を侮辱したり前述の行動を馬鹿にしたりする者に対し激しい敵意を表す。

 「哀しみ」の具情者で情力名は「透析とうせき青眼せいがん」、文字通り遮蔽物を透視する。任意で力のオンオフが可能。小型の拳銃やスナイパーを使い、更には状況に応じて様々な飛び道具(苦無など)を扱う。キッチンではソース作り担当。

 具情者である自分が生きやすい世の中を作るため、ノーティツィア・ラティオニスに寝返った。


織部おりべいと


 一人称は「アタシ」、きりっとしたつり目にはっきりとした目鼻立ちで、すれ違えば大半の人が振り返るであろう絶世の和風美人。しかしその他を寄せ付けぬ容姿に反して非常に気さくな性格の持ち主で、よく言えば懐が広い、悪く言えば少々お節介焼きの姉御肌。

 「楽しみ」の具情者で情力名は「織姫おりひめ」。あらゆる物質の繊維を、物理法則を無視して自在に操ることができ、筋繊維を操作して傷を治したり、建物を一度繊維に分解し、再構築したり出来る。防御技は身に纏う外套を繊維に戻し、大きな布にして障壁を形成する「端切はぎれのへき」や、それを大きな傘のように頭上に展開する「天笠」があり、攻撃技は繊維を針状にして飛ばす「糸車」や、鋏状にして敵を断ち切る「糸鋏いとばさみ」、そして遺体に繊維を巻きつけ、傀儡のように強制的に動かす「遺徒いとつむぎ」という禁忌の技をもつ。

 接客担当、買い出しはかいなと彼女が行う。激情者でもあり、情力名は「天衣てんい無縫むほう」、「織姫」との大きな違いとしては、情力の作用範囲が爆発的に拡大することが挙げられる。基本的に着ている衣服の繊維を操作し、自動迎撃的に攻撃する。国レベルの組織と交渉出来る程の実力、過去の経歴をもつ。

 実は血染の話し方は彼女のものが真似されており、その正体は「血濡れ衣」と呼ばれる、常軌を逸した強さを誇る雇われ傭兵。血で血を洗う生活に嫌気がさし組織から離脱、旅を経て今の仲間達に出会った。

 「ムジンリュウ」の使い手でジンドリは「侭」、彼女の常人離れした身体操作センスにより、彼女のイメージする動きをそのまま現実にトレース出来る。その様は正に天衣無縫、思うがままに暴れ回り、敵を蹂躙する。



○Blaue Trommel(ブラウエ・トロメル)

 青を中心としたインディーズのジャズバンド。コンサートは勿論、覆面状態(仮面をつけて)だが動画サイトに演奏動画を投稿しているので、音楽好きの間ではそこそこ有名。主にドイツで活動している。"Blaue Trommel"はドイツ語で「青いドラム」を意味する。


あお


 真白の「哀しみ」の分情。一人称は「わたくし」で上品な口調。ドイツでは"Blau"(ブラウ)と呼ばれていて、バンドではキーボードやピアノを担当している。性質上いつも憂いを帯びた表情を浮かべており、落ち着いた雰囲気だが意外と皮肉屋。数秒間眼力と思考力を飛躍的に高める情力「夜目よめ遠目とおめ」を使い、戦闘での情報量において完全に相手の優位に立つことが出来る。

 一方で力の使用に制限があり、使用後は次の使用まで一定の時間をおかなければならない。扱う武器としては小型の弓矢と少し長めの棒を常備している。情力を駆使して相手の戦略を完全に封じる戦い方をし、また情力を使わずとも回転の速い頭脳を用いて、あらゆる環境を自分に有位に用いる。

 激情態時の情力名は「神ノ目」、文字通り「視たいものを視ることの出来る」情力。反動は大きく、使用後は長時間の休息が必要となる。


菜種なたねやわら


 小柄な少女で銀色に近い長い白髪をもつ。方言が色濃く出ている話し方で、自己鍛錬、つまりは筋トレが趣味。バンドではドラム担当。実は忍の末裔まつえいで、生命観が非常にシビア、かつ少々好戦的な一面をもつ。

 「喜び」の具情者で情力名は「柔靭じゅうじん自在じざい」、身体の柔軟性を強め、ありえない方向への彎曲わんきょくや、能動的にノーリスクで関節を外したり内臓の位置を変えたりすることが可能。忍の末裔ということで暗器(手裏剣、短剣など)の扱いに長けており、ヒット&ランのトリッキーな戦法を用いる。


そほ砂羅さら


 中肉中背、セミロングの黒髪の少女。一人称は「わたし」で、普段表情があまり変わらないため感情に乏しいと思われがちだが、実際は沸点が低く、特に騒音に対しては異常な程敏感に反応しすぐキレる。いつも首にヘッドフォンを引っ掛けており、音楽に対しては非常に真摯な姿勢をとる、バンドではベースやチェロを担当。

 「怒り」の具情者で情力名は「地操ちそう磨石ませき」、土砂岩石を自在に操る。戦闘時は岩や石を削って即席の武器を作り、相手の足場を崩し不意を突くという戦術をよく用いる。得意技は瓦礫を五線譜上の音符のように配置し、一斉に敵へぶつける「砂塵の調べ」。焔によって焼き尽くされ命を落とす。


若草わかくさはな


 長身で明るめの茶髪を腰の少し上くらいまで伸ばし、眼鏡をかけた女性。バンドではギターやバイオリン担当、一人称は「私」。薬学に精通しているが多少マッドサイエンティスト的な一面があり、調合した薬をすぐに他人で治験したがる。一方で倫理、道徳はきちんと理解しており、前述の治験も根本的には人々の幸せの為。

 「楽しみ」の具情者で情力名は「木花もっか草々そうそう」、植物の成長を操作できる。これによりつるつたなどを異常成長させて相手を捕らえたり、睡眠作用のある植物の花粉を即席で発生させ相手の意識を奪うことも可能。

 武器の代わりに多種多様な植物の種子や小さな苗を持ち歩いており、その場で様々な植物を成長させそれを武器として用いる。

 激情者であり、情力名は「樹華じゅか葬送そうそう」、普通の情力と比較して、情力が影響する規模、植物の成長速度が飛躍的に増大する。エモートゥスとの戦いで、その命を犠牲に暴情現象の沈静化に成功する。




○Green bar (グリーン・バール)

 緑を中心とした盗賊集団。絵画、骨董品、貴金属など窃盗対象は様々で成功率は九割を超えている。今まで一度も奪命行為手を染めていないことや、恵まれない者に盗んだものを現金化し、上空からばらまくといった義賊的なこともしているため、一部の者からは強く支持されている。団体名の意味は「緑のバール」、結成時にたまたま近くにあった工具、そして盗賊道具でもあるバールが緑だったことから名付けられた。


りょく


 真白の「楽しみ」の分情。一人称は「あたい」で、どこか色気のある口調。イギリスでは"Green"(グリーン)と呼ばれていた。快楽主義で自身の楽しみを最優先とし、他者の状況をあまり考慮しない。そのせいか精神的にはほとんどぶれない芯の強さをもち、要するに「蜜の味の前では他者など二の次」という考え方の持ち主。

 窒素を操作する情力の使い手で、物理法則を無視して窒素を変温、変態させることが出来る。よって窒素を液体窒素にしてモノを凍らせることが出来、本人もよく情力をそのように使う。

 情力を使い装備である刺叉、そのU字形の空間に氷を発生させ、長槍のように扱う。また情力を応用させ、相手を一時的に酸欠状態にさせることも可能。

 激情態「窒素ちっそ循環じゅんかん」は、能力の主体を凍結から窒素操作へ移行したもので、窒素を操作した真空空間の生成や窒素を固めた不可視の防御壁、空中での足場を作るなど応用性が爆発的に上昇する。


山吹やまぶきそう


 目鼻立ちのくっきりとした可憐な容姿に反してその実はいわゆる「戦闘狂」。一人称は「オレ」で、血湧き肉躍る戦いを望んでいる。「喜び」の具情者で情力名は「雪泥せつでい鴻爪こうそう」、爪の硬度、強度を高める。強化された爪による引っ掻きは真空の刃となり、まるで鎌鼬かまいたちのように飛来し、遠方の相手を切り裂く。情力発現時は常人よりも爪が生えるスピードが早い。

 激情者であり情力名は「爪牙そうが之士のし」、ただの引っ掻きが岩山一つ削り取るほどに強化され、また爪の生えるスピードも段違いに早くなる。仲間に対しては意外と優しい。

 韋駄天に興味を抱いており、再戦の為敵組織に協力する。


臙脂えんじ灯火とうか


 芸術家で「燃ゆるもの」に美学を感じる青みがかった銀髪の少女。一人称は「当方」。常人の道徳通念から大いに乖離かいりしており、こと芸術においては理性の抑制が効かなくなる危険人物。

 「怒り」の具情者で情力名は「烽火ほうか連天れんてん」、焔以上の質量の火炎を操作する。使う術として「浄火」(負の性質、例えば毒や呪いといったものだけを燃やす浄化の炎)「灯火」(通常の炎)「豪火」(大規模な炎)、劫火こうか(灯火が「燃え尽きろ」と思ったものだけを燃やし尽くす最強の炎)がある。火鋏ひばさみを武器として使う。焔によって氷漬けにされ命を奪われる。


次縹つぎはなだ観錯みさき


 文学少女、という言葉がぴったりの大人しそうな女の子。「不平等な世界に対し哀しみを抱いている」と公言しているが、その本性は他者をかえりみないエゴイスト。

 「自分だけ嫌な思いをするのは嫌、周りがもっと嫌な思いをしていれば相対的に自分は幸福を感じ、その分周りに優しくなれる」というとんでもなく身勝手な思考回路をもつ、爪や灯火とは別ベクトルで危険人物。

 「哀しみ」の具情者で情力名は「鵜目うのめ鷹目たかのめ」、目を合わせた者の視覚に干渉し見えないものを見せたり、逆に見えているものを見せなくする、要は幻術使い。後に隻眼となる。

 相対的に自身の価値を上げる為、敵側の組織に属し真白達に牙を剥く。



○真白の精神世界


くろ


 真白の「憎しみ」の分情。髪と目が黒色で、暗く沈んだ雰囲気をいつも醸し出している。一人称は「ぼく」、一見赤以上に激しい気性、他社に対し過剰に攻撃的であるかの様に見えるが、それは彼女が「真白の防衛機能」的役割を果たす、つまり自己保存を最優先とする存在だからである。

 「慈しみ」の真白と対をなす存在である一方、対の関係にあるが故に彼女と共通の要素も他の分情より多く見られる、故に方向性は違えど本質的には愛情深い性格。

 情力名は「影芝居かげしばい」、影を操作出来るようになり、更に影に「質」を付与する性質を獲得する。あくまで「質」であり実体はなく、例えば影に「鋭利」という性質を付与する事によって、その影で「切り裂いた」、布の性質を付与すればその影で「掴んだ」「包んだ」「防いだ」という影響だけを外界に残すことが出来る。

 技として、思いのままに影を操作する「衣香いこう襟影きんえい」、制限時間はあるが影を体の一部や武器に纏わせ、その部分の実体をなくす「形影けいえい相同そうどう」、激情態時のみ使用可能で、形影相同を身体全体に纏わせることで潜影を可能とし、影と影の間を移動する実質的な瞬間移動「夢幻むげん泡影ほうえい」、「切断」という性質のみを黒刀に無量大数的に付与し、数質転化により防御を無効化する最強の攻撃「無影むえい無踪むそう」がある。

 後に条件付き且つ限定的だが、敵の情力を封じる「幕間、廻り燈籠」を会得する。

 また激情態時のみ使用可能で、会ったことのある具情者の影を実体化させて戦わす奥義「影のわずらい」がある。技を使用する際の口上は「有象の明来、無象の暗往、相身互いに袖振り合いて」

 武器としては漆黒の日本刀を使用し、普段は自身の影に格納している。

 「ムジンリュウ」の使い手でジンドリは「心」。目紛めまぐるしく変わる戦闘パターン、そして重心を捉えることの出来ぬ蛇の如き流動的な動きにより、敵はまさに「放心状態」となる。黒き眼に写るのは唯一つ、冷たくなった遺骸のみ。



○Emotus (エモートゥス)

 表向きには「様々な事業を手掛け、世界規模で注目されている新進気鋭のコングロマリット」と名高い企業だが、その実情力開発の為の非人道的な研究、実験を行なっている闇の組織。裏界隈では有名で、様々な組織、国家と黒い繋がり、取引があると噂されている。真白達の活躍により組織の暗部は解体され、表向きの性質だけが残った。


□幹部


補色ほじきひかり


 エモートゥスのリーダー。一人称は「僕」で、無邪気な子供の様な言動や立ち振る舞いをしているが、根本的に思考体系が歪みきっており、感情の露呈をその性質に関わらず全て「元気が良い」とみなし、他者の苦しみや痛みを推し量る共感性が完全に機能していない。

 情力名は「輝劇」、光を操作する力。技として、収束させた光をリング状にして飛ばし、接地面から発火し対象を焼き切る「光輪こうりん回し」、格子状の光を出現させ対象を閉じ込めたり、逆に自分の身を守る壁にする「光状網こうじょうもう」、光を刃の形に留めレーザーカッターのように扱う「光剣」等がある。

 実は「怒り」の具情者でもあり、火炎を操作するものだが本人にその自覚はなく、過去の悲劇から生じた強すぎる怒りを楽しみで偽ることで無意識的に心の均衡を保っている。本来「怒り」の具情者にしか出来ない「身体の抽象化」が可能なのはこの為。怒りの感情が高まると「楽しみ」の具情の印である緑色の虹彩がやや赤みを増す。

 他の具情者で激情態に相当する技として「輝劇きげき開幕」があり、「始幕しまく虚光きょこう照射」で情力作用範囲を拡大し、「次幕、虚光投影」で、今まで光が戦った経験のある者の実体ある残像「残光」と呼ばれるものを呼び出し「数の戦力」を展開する。最終奥義は「輝劇終幕、虚ろの光」、黒の「無影無綜」同様「焼却」という性質を無限回に光剣へと付与する技。

 かつては人身売買を行う犯罪集団に囚われており、その時の壮絶な経験から現在の歪んだ人格が形成された。


柘榴ざくろ水面みなも


 エモートゥスの副リーダー。奔放な光に代わり、実質的に組織を動かしている。一人称は「私」。冷酷非道という表現が相応しい美女で、何らかの目的を果たすため暗躍している。情力名は「傾盆けいぼん大雨たいう」、大量の水を自在に操作することができ、逆に対象の水分を操作し内側から爆発させるという繊細なコントロールも可能の、正に剛柔極まる具情者。水で形成した刀を武器とする。

 激情者であり情力名は「雨露うろ霜雪そうせい」、水に始まり、天候さえも自在に変えることの出来る情力。風、雷、氷、水を自在に操作し敵を圧倒する。過去の経験から「力」に執着している。「雨」に関連した技を使う。エモートゥスの元となった劇団の古参メンバーで、劇団の座長を敬愛していた。


青藍あおあい椎奈しいな


 光、水面と行動を共にしている謎の具情者。視認した者の情力を見抜く情力を有している。



□Emotus直属部隊"Arousers" (アラウザーズ)

 エモートゥス幹部の直属部隊。幹部の手足の様に彼女達の意図を反映した仕事を遂行してきたことで彼女達からの信頼はそれなりに高い。


・烏丸 《からすま》八重やえ


 荒々しいがどこか品性を感じさせる雰囲気の黒髪少女、一人称は「私」。情力名は「黒鎖こくさ地縛じばく」、重力を操作する「憎しみ」の具情者。応用性が非常に高く、宙に浮いたり小型のブラックホールを発生させることが出来る。技として重力を強め相手を地に這いつくばらせる「怨鎖えんさ踏潰とうかい」がある。過去に最愛の妹を不幸な事件により亡くしており、人間に恨みを抱いている。激情者であり、情力名は「悪引あくいん圧禍あっか」操作出来る重力の強度が格段に上がる。大型のハンマーを武器とする。

 本来は他人を思いやる心優しい少女で、真白達と和解してからは彼女達に協力的な姿勢を見せる。


刈安かりやすこころ


 一人称は「私」、「喜び」の具情者で情力名は「五臓六腑」、内蔵の強度と機能を高める力である。肺活量等が高まるので身体機能、持久力を飛躍的に向上させる。彼女はいわゆる「格闘技マニア」であり、複数の格闘術を習得し、また新たな戦法に出くわすと一気にテンションが上がる。前述の性格故戦闘能力は非常に高い。情力を応用し、高められた肺機能による空気弾を吐き出すことが出来る。


朱華はねず泥濘でいねい


 ゴシックロリータの黒い衣装に身を包んだ小さな女の子。人見知りで人形遊びが好き。自身の「怒り」の情力「土壌どじょう傀儡かいらい」により生み出す岩石の塊を「私の人形」と呼び、「ゴーレム」と呼ぶ者に敵意をあらわにする。基本的に自分は戦わず、ゴーレムに依存した戦闘スタイル。


呉須ごす肌触きふれ


 金髪碧眼の華やかな少女で、女子限定の好事家。「哀しみ」の具情者で情力名は「第六感」、触覚の強化により肌感覚を高め、いわゆる「直感」を鋭敏にする。性格は良く、仲間思いの姉御肌。


鴨之羽かものは樹脂じゅし


 ベレー帽を被り、小学生の様な見た目の少女。環境活動家で、自然を破壊する人間に悪感情を抱いており、そんな悪い人間を駆逐することに快感を抱いている。「楽しみ」の具情者で情力名は「合成樹脂」。樹脂、つまりプラスチックを自在に操る。



□エモートゥス戦闘部隊

枯野かれの美櫛みぐし

 ナルシスト。いつも髪の毛をいじいじしている。一人称は「私」。「喜び」の具情者で情力名は「一毛打尽」、自身の毛髪を操作する力。髪の柔軟性、硬質性を自在に変化させることができる。またタンパク質を摂取することで常人の何倍もの早さで髪の毛を生やすことも可能。自分から切り離した髪を衣服の形状とすることも可能だが、その場合力の及ぶ範囲は半径5m以内。激情態と化したかいなにより葬られる。


槿花きんからん

 陽気、というよりはノリで行動している軽い性格、一人称は「私」。「怒り」の具情者で情力名は「憑虚ひょうきょ御風ぎょふう」、風を操作し、特に竜巻を起こすのが得意。戦闘時は風で槍を形成する。


薄花うすはな分目わくめ

 狡猾で底意地が悪い性格、一人称は「私」。中性的な容姿の少女で、目つきが悪い。「哀しみ」の具情者で情力名は「岡目おかめ八目はちもく」、視界の分割を可能とし、複数の視野を同時に所有することが可能。念じることで青白い光が現れ、それを通じて外界を視認する。ハンドガンとサバイバルナイフを常備し、戦闘時はそれを使って戦う。観錯との戦いで隻眼となる。


裏葉うらは金子きんし

 プライドの高い金髪の少女。「金のように不滅のものこそが至高」という考えをもち、他者にそれを見出した場合賞賛することもあるが、自分の優位性を誇示すべくその者を排除しにかかろうとする自分勝手な性格。「楽しみ」の具情者で情力名は「不壊ふえ金剛こんごう」、あらゆる金属を操作出来る、いわば韋駄天の「鉄中錚錚」の上位互換。戦闘時は情力でレイピアを生成し戦う。



□エモートゥス諜報部隊

黄朽葉きくちば血乃ちの

 血液愛好家でサディスト、他者を甚振りながら相手の血液を飲む。「喜び」の具情者で情力名は「嘔心おうしん瀝血れきけつ」、血液を操作するという「楽しみ」の情力のような能力。他人の血液を操作するには一度体内に取り込む必要があるが、その操作性は血染の「鉄血」を凌駕する。常日頃から血液の入った小瓶を数本持ち歩いている。やわらとの戦いで葬られる。



薄桜はくおう垂水たるみ

 水墨画家、芸術を愛する物静かな少女。「怒り」の具情者で情力名は「一水いっすい四見しけん」、水の操作及び水の三態(気体、液体、固体のこと)を操作出来る力。エモートゥスの古参メンバーで、現在の組織を憂いている。穏やかな心根の人物だが、その分周りの破天荒さを処理する担当にならざるを得ない苦労人ポジション。


千種ちくさ訊来乃きくの

 ゴシップ好き、おしゃべり好きな赤毛の現代っ子。「哀しみ」の具情者で情力名は「如是にょぜ我聞がもん」、聴力強化が為され「複数の音を聞き分ける」「遠くの音を拾う」という二方面の聴力が飛躍的に高まる。「眼球に一定量の光が差し込んでいること」が情力の発動条件の為、普段はサングラスをかけている。今のエモートゥスを快く思わず、組織の抜本的改革を望んでいる。


青柳あおなぎ美波みなみ

 音楽家、特にクラシックを好む。「楽しみ」の具情者で情力名は「波流はりゅう弟靡たいび」、「波」を操作する力。非常に応用性が高く、周波数を操作して特定の対象のみに音を送受信したり、ソニックブームを起こして対象を破壊したり出来る。若干天然の気質あり。



□エモートゥス開発部

女郎花おみなえし仁流舞にるぶ

 脳科学を専攻する小柄な女子大生。筋金入りの潔癖症でかなり神経質な性格。「喜び」の具情者で情力名は「神経しんけい溌剌はつらつ」、神経伝達速度が強化されることによって五感が極限まで研ぎ澄まされる「哀しみ」の具情者寄りの情力。欠点として長時間の使用が出来ないこと、「痛覚」まで鋭敏化されることが挙げられる。


梅重うめしげもえ

 お菓子作りが趣味、パティシエを目指している。基本的にはめんどくさがり屋だがお菓子への態度は真摯そのもの。自分の求めるレベルに自身のお菓子作り技術が達していないことへの「怒り」で情力を発現させる。情力名は「燎原りょうげん之火のひ」、米菓子になぞらえた技を繰り出し、今まで登場した火炎使いの中でもトップクラスの火力を誇る。


鴨頭草つきくさ数珠じゅず

 数学を専攻する女子大生、一言で表すなら「数学マニア」。「哀しみ」の具情者で情力名は「権謀けんぼう術数じゅっすう」、あらゆるものを数値化し、それを認識出来る。「学術の求道者」でありつつ「破壊の体現者」でもある人間に対しアンビバレントな感情を抱いている。


左伊多津万さいたづま量子りょうこ

 オカルト好きな女子、灰色の髪で片目が隠れている。非常に特徴的な話し方で、一人称は「己」。情力名は「量子りょうし最連さいれん」、量子を操作出来る力で、物質の分子構造を組み替えることでパイロキネシスを引き起こしたり、モノを生成したり出来る。




○その他

かがみ黒曜こくよう

 真白の後見人で、その名とは対照的に白く美しい長髪の麗人。都内に喫茶店を構える女店主で、彼女の淹れる珈琲は絶品。情力や具情者に詳しかったり、遠くの光景を正確に把握する千里眼のような能力を有していたりと謎の多い人物。

 かつてはくや黒奈と共にノーティツィア・ラティオニスと戦った人物で、情力名は「虚堂きょどう懸鏡けんきょう」、鏡の性質を司る情力。鏡の中に入ったり、敵の攻撃を反射させたり出来る。


双代ふたしろはく

 真白の父親、故人。黒曜によれば穏やかで優しい性格だった。「慈しみ」の具情者で情力名は「矛不知ほこしらず」、攻撃の意志が宿る行為を全て無効化出来る力。文字通り何でも防ぐ情力だが、攻撃の意志が宿らないもの、例えば銃弾が当たり砕けた石片等は防げない。「矛不知」は彼の通り名でもある。


双代ふたしろ黒奈くろな

 真白の母親、故人。黒曜曰く「穏やかではない」性格。「憎しみ」の具情者で情力名は「盾不知たてしらず」、防御の意志が宿る行為を全て無効化出来る力。盾で防いでもその盾は壊れ、情力で防御しても無効化されるので、彼女の攻撃は避けるしかない。「盾不知」は彼女の通り名でもあり、その攻撃は変幻自在で全く先が読めない型である。一応の特徴として「武器を手にしている時間が極端に短い」というものがあり、武器を投げて攻撃したり、順手逆手を瞬時に切り換えて間合いを変えたりする。




〇ノーティツィア・ラティオニス

 国内のみならず世界規模で、情報に関すること、例えば情報統制、情報操作、隠蔽などなんでも請け負う機関。表舞台ではほとんど知られていないが、裏世界を少しでも知っている者なら必ずどこかでその組織名を耳にしている程。


涅色くりいろ骨牌かるた

 ノーティツィア・ラティオニスの長。難しい言葉を多用し、物腰こそ丁寧なものの、底知れない不気味さを醸し出す人物。一人称は「下名」。

 情力名は「情縄じょうじょう責霊しゃくりょう」、路情を操り、その力を行使する力を有する。


ひたりしろ

 ノーティツィア・ラティオニスのNo.2に位置する者。表情がほとんど変わらないが、よく喋る。情力を複数有する具情者で、「怒り」は「色即是空」端的に言えば「有」状態のものを「無」状態にする力だが、その正体はよく分かっていない。「哀しみ」は「網目もうもく不失ふしつ」視認した者を、その者が情力を発現させているときに限り分析を可能とする力、「楽しみ」は「氷姿ひょうし雪魄せっぱく」氷を操作する力、「憎しみ」は 「慈しみ」は「有情うじょう無情むじょう」限定範囲内で、任意の者の情力を使用不能にする力。

 何らかの思想に基づいて行動しているようだが…?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る