膠着(こうちゃく)状態
「やれやれ、随分ギャラリーから離れてしもうたなぁ…」
焔と灯火もまた街から少し離れた石造りの建物の廃墟、そしてその残骸が散らばる草原に来ていた。
「
「さて、貴様には私の作品になってもらう。」
「…は、作品?」
唐突に訳の分からないことを言われ、
「先に教えておいてやろう。当方の情力は「
「炎とは不可思議なものだ…始原の
焔の眉間にどんどん皺が刻まれてゆく。(こいつ…さっきから何を言うとんのや?)
勿論分かってなかった。
「その義務とは…」
「なっ!?」間一髪、焔はその炎弾を避け、慌てて再度武器に情力を発現させる。「情力発現、
「燃焼こそが永遠、美しく燃ゆる炎よ…さぁ「怒り」の具情者、
「話聞けや!あぁもう上等や!なんやよう分からんけどお前の炎とうちの火、似たもの同士対決したらぁ!!」焔が手にする鉄棒、その火が勢いを増した。
一方の真白と緑。
「まだついてこれるか…やるもんだねぇあたいの本体殿も。」彼女達の追走劇はかれこれ二十分程続いている…緑が仕掛ける様々な氷の罠を真白は「怒り」の情力を用いて打破し、距離が開けば「喜び」の情力に切り替えてすぐそれを詰める…そんな一進一退の攻防が繰り広げられ、今も真白は緑の少し後ろにつけていた。
「…!負けを認めたのですか?」
急に逃げるのをやめて立ち止まった緑に驚き、真白が言う。気が付くと真白達は、街から少し離れた荒野まで来ていた。
「…気付いてると思うけど…あたいはあんたを誘い出してたんだ…
「…何はともあれわたしはあなたに追いつきました、これで条件は満たした
「あぁ、それなんだけどね…」緑は意地の悪い笑みを浮かべてこう言い放つ。「悪いけど気が変わっちまった。」そういうや否や、真白めがけて冷気を差し向ける。
「な、約束を破る気ですか!?」横に飛び退いてそれを
「……仕方ない…自分を
怒気を強め、色の変化した赤い目を細める真白…その足元から水が上に向かって噴出される…その様子を、緑は心から楽しそうに眺めていた。「いいねぇ…第二ラウンド、スタートだよ!!」
緑は背中に背負っていた
「へぇ、面白い力の使い方だ!」そう言った緑は真白に突進し、槍を突き出す。氷と水流が触れ、ジィっと音を立ててそれを受け止めた真白…彼女の攻撃を押し返し、逆に追撃を繰り出す。
「水鉄砲!!」
真白は赤が使っていた技を拝借し、緑目掛けて早い勢いの水弾を放った、しかし…
「甘い甘い!」緑は情力でその水弾を凍てつかせ無力化する。「そうら、お返しだ!」氷の槍を振り払うと、その凍り付かせた水弾からいくつかの小さな氷塊が生成され、真白へと射出される。真白は地面に警棒の先を押し当てた、すると彼女の周りを囲むように水の壁が出現し、氷塊を削り散らす。その後も両者の攻防がしばらく続いたが、どちらとも決定打を与えることは出来ていない。
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